失われたもの(その2)
夕闇の 都会の雑踏の中で
私だけが ひとり 方向を失った
車にも 人にも 方向があった
---焦点がぼけると
それは 大河の流れとなって
悪臭を放つごみが いたる所に浮いていた
その中を横切ろうと
小さな虫が もがいていた
おーい 無限の草原(クサハラ)の
風が起こすウエーブよー
私は 心の中で叫んだ
---と、そのとき
長い長い 灰色のコンクリートの 塀の中で
苔むした 釣瓶が
カラーン コローンと 不協和音を残して
暗い 井戸の中へ
深々と 落ちていった
失われたもの(その2)
夕闇の 都会の雑踏の中で
私だけが ひとり 方向を失った
車にも 人にも 方向があった
---焦点がぼけると
それは 大河の流れとなって
悪臭を放つごみが いたる所に浮いていた
その中を横切ろうと
小さな虫が もがいていた
おーい 無限の草原(クサハラ)の
風が起こすウエーブよー
私は 心の中で叫んだ
---と、そのとき
長い長い 灰色のコンクリートの 塀の中で
苔むした 釣瓶が
カラーン コローンと 不協和音を残して
暗い 井戸の中へ
深々と 落ちていった