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【縄文】正面と背面で異なる奇妙な造形~顔面付釣手形土器@伊那市創造館(長野県伊那市荒井)

2023-01-05 | 縄文・古墳・遺跡・史跡
釣手形土器は、縄文中期の八ヶ岳周辺地域の遺跡で出土されますが、他地域では殆ど見られず中部・関東地方独特の土器形式です。
その中でも異彩を放つこの「顔面付釣手形土器」見たさに昨年暮れに、わざわざ伊那市まで出かけて参りました。

伊那市創造館 常設展示コーナーに異彩を放ち展示されています。

1996年(昭和41年)長野県伊那市富県御殿場遺跡より出土されました。
正面から見れば、穏やかな顔立ちですが…。(トップ写真)

異様なのはその背面の造形です。頭部の渦巻きの文様と中央にうねる立体的な文様。左右に開いた穴は、仮面の様にも見えます。
同様な仮面と言えば、井戸尻遺跡の似たような釣手型土器を思いだいました。
側面より 果たして何を表現しているのでしょうか。
中央に空いた穴の周辺には、煤痕が付着していた事から香炉として使われていたと考えられているようですが、それにしてはわずかで常用していたとは考えられないそうです。
「縄文のメドゥーサ/田中基著(現代書館2006)」によれば、ぽっかり中央の空いた穴は女性器を意味しそこから火の生誕する様は、新しく蘇る食物の萌える春の表象であり背面の恐怖を誘う蛇体は植物の死の季節、冬を表象しているのだそうですが…。
正直ちょっとこじ付けっぽい部分は縄文の遺構すべてに言えるので何ともいえないところではあります。

頭部(背面)から首にかけてのアップ 渦巻文様は縄文では定番となっています。
アカデミックな見解は、以下の通り
人面付香炉形土器の記述(御殿場遺跡緊急発掘調査慨報)より
1.顔面ははるかかなたから幸あれと呼び掛けていて、勝坂式最末期の特徴
2.正面は煤煙で黒色化、背面は黒色化なし。火焔崇拝という呪術性とかかわる造形。釣手土器の照明用とは異なり、外部一面から焔をかけられた。
3.正面窓を支える掌(同時に紐を通す実用的用途)
4.背後には蛇身装飾
5.内部はわずかに煤煙付着  
6.正面は平板柔和で神聖感満る。背面は立体的、粗剛怪奇で呪術感満る。正面中心の崇拝
7.勝坂終末期につくられ、加曽利E初頭期に伝世された可能性
8.呪術的要素のない竪穴住居から出土している。
9.同じ場所から出土した木炭のC14年代測定結果は4160年±100年
 

なお、この土器の名称は正式には「人面付香炉形土器」と言うんだそうです。どうやら「 釣手」と言う部分に違和感があるようです。

確かに釣手土器は柄としての特徴がありますので香炉とは区分したい部分なのでしょう。
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