働き方改革関連法ノート

労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)や厚生労働省労働基準局などが開催する検討会の資料・議事録に関する雑記帳

労働組合(ユニオン)団体交渉とは

2016年12月26日 | 労働相談ノート
団体交渉(団交)とは、労働組合が労働条件の基準や労使関係事項(団体交渉のルール、就業時間中の組合活動のあり方等、使用者と労働組合の関係に関する事項)などについての取り決めをするために労使が話し合うことです

こうした労働組合が団体交渉を行う権利は、憲法が保障し、労働組合法は、これを受けて労働組合の代表者、あるいは委任を受けた者が使用者と団体交渉をする権利があると定めています。

労働組合が結成されますと、労働組合は使用者(事業者)に対して団体交渉の申し入れをしますが、経営者(使用者)は正当な理由なく団体交渉を拒否することはできません。

また、経営者は誠実に団体交渉に応諾する義務がありますから、正当な理由なく労働組合からの団体交渉を拒否すると、労働組合法が禁止する不当労働行為(不当に労働組合に敵対する行為)にあたることになります。

団体交渉拒否理由の正当性
経営者(使用者)が団体交渉(団交)に応じない理由として次のようなケースをあげる場合がありますが、これらはいずれも団体交渉を拒否する正当な理由にはあたらないとされています。

1 多忙である(ただ多忙というだけでは理由になりません。)
2 組合の要求が過大すぎる(要求が過大かどうかと団体交渉に応じるかどうかは別問題です。)
3 社員や職員以外の者(上部団体の役員)が出席している(交渉委員を誰にするかは労働組合が決めること、社員や職員以外の者でも労働組合の委任を受ければ団体交渉に出席できます。)
4 要求の中に使用者の経営権に属する事項が含まれている(経営権や人事権は使用者の専属事項とされていますが、労働組合員の労働条件に影響を与える経営規模縮小に伴う配置転換やリストラ等の場合には、その範囲において交渉事項となります。)

団体交渉応諾義務とは
経営者が団体交渉に必ずしも出席しなければならばいということではありませんが、労働組合からの質問に答えたり、資料などを用いて労働組合に対して十分に説明できる人が団体交渉の経営側交渉員になるべきです。

経営側交渉員は、ただ黙ったままで、全ての要求に対して即座に回答しないで「会社に持ち帰って相談します」「社長に聞かないと分かりません」と答えているだけで、これを繰り返していると団体交渉拒否とみなされ、労働組合法が禁止している不当労働行為にあたる恐れもあります。

団体交渉は、労使が対等の立場に立って話し合って交渉することであり、一方が他方の話をただただ聞けばよいとういうものではないので、経営者側の団体交渉応諾義務はただ団体交渉に出席すれば事足りるということでなく、労働組合と誠実に交渉する義務をも含んでいると理解され、これは「誠実交渉義務」と呼ばれています。

団体交渉の誠実交渉応諾義務とは
労働組合との団体交渉では、組合側から繰り返し「誠実交渉義務」が経営側にあると強硬に主張され、組合側の団体交渉要求事項を全面的に受け入れるよう追及される場面が多々あります。もちろん団体交渉拒否は不当労働行為にあたる恐れがありますが、しかし、「誠実交渉義務」は団体交渉において組合側の要求を経営側が全面的に受け入れなければならないという義務でもありません。

裁判例によれば、誠実交渉義務とは「労働組合の主張に対し誠実に対応することを通じて、合意達成の可能性を模索する義務」(倉田学園事件、高松地判、昭和62年8月27日)ともされています。

また、別の判例では、「使用者は、自己の主張を相手側が理解し、納得することを目指して、誠意をもって団体交渉に当たらなければならず、労働組合の要求や主張に対する回答や自己の主張の根拠を具体的に説明したり、必要な資料を提示するなどし、また、結局において労働組合の要求に対し譲歩することができないとしても、その論拠を示して反論するなどの努力をする義務がある」(カール・ツァイス事件、東京地判、平成元年9月22日)ともされています。

労働組合側から質問されたら、具体的に回答し、必要な資料を出して説明していかなければなりません。その場での回答を避け、「すべて持ち帰る」といったような姿勢は、誠実交渉義務に反することになります。


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