働き方改革関連法ノート

労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)や厚生労働省労働基準局などが開催する検討会の資料・議事録に関する雑記帳

スーパーシティ法成立 スーパーシティ法とは

2020年05月28日 | スーパーシティ法案
スーパーシティ法案(国家戦略特区法改正案)成立
ツイッター(Twitter)では「#スーパーシティ法案に反対します」「#スーパーシティ法案に抗議します」「#超監視超管理社会を拒否します」などといったタグつきツイートで「反対」「抗議」の声が多数あったスーパーシティ法案(国家戦略特区法改正案、正式名称「国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案」)は2020年5月22日、参議院・地方創生・消費者問題特別委員会で可決。そして、昨日(5月27日)、参議院本会議でスーパーシティ法案(国家戦略特区法改正案)採決され可決。スーパーシティ法(改正国家戦略特区法)が成立した。

スーパーシティ法成立がNEWS23で報じられた
内田聖子氏は「複雑な思い」とツイート


昨夜(5月27日)、TBSのNEWS23が「成立した改正国家戦略特区法、いわゆる『スーパーシティ法』。最先端技術を生かした都市作りを可能にするという法律ですが、『便利さ』の一方で、『超監視社会』につながるとの懸念も」と報じた。また内田聖子・NPO法人アジア太平洋資料センター共同代表もNEWS23でコメント。なお、TBSが「監視社会への懸念も “スーパーシティ法”成立」のニュース映像(5分28秒)YouTubeにアップ。

TBS NEWS23 監視社会への懸念も “スーパーシティ法”成立(YouTube

しかし、内田聖子・NPO法人共同代表は、NEWS23の番組後、「本日のnews23にて、可決されたスーパーシティ法案についてコメントしました。スクショなど記録と発信ありがとうございます。担当の方には成立した後でなく、審議の前から、あるいはせめて審議中に報道をしていただきたかった、と強く申し上げました。扱われないよりはよいとは言え複雑な思いです」とツイート。

内田聖子・NPO法人共同代表は、5月22日のスーパーシティ法案参議院委員会採決後も「たった今、スーパーシティ法案が参議院の地方創生・消費者問題特別委員会で可決。今後は本会議での採決へと動く。短時間で議論も深まらないままの委員会可決に抗議します。かろうじて、与野党の付帯決議も併せて可決されたが、15項目の多岐にわたる分野。まったく議論不十分であることの証ではないか」とツイートしていた。

また、内田聖子・NPO法人共同代表は、朝日新聞デジタル(2020年5月21日配信)「与党急ぐスーパーシティ法案 規制緩和だけではない問題」にもコメントしているが、詳しくスーパーシティ法案(国家戦略特区法改正案)の問題点を指摘していた。

「これまでの国家戦略特区は規制緩和や税制優遇などでビジネスを呼び込むものだった。しかし、スーパーシティ構想は、国や自治体がもっている個人情報や、民間企業が持つ行動履歴などの個人データを一元化して、様々な住民サービスに利用し、便利で快適な暮らしを実現しようというものだ。単に、規制緩和で農家レストランや民泊ができるという話ではない。暮らしに直結するサービスに活用するため、地域の多くの住民の生活に大なり小なり影響を与えるものだ。」

「例えば、配車アプリを介して、市民の自家用車を利用する『通院タクシー』を導入しようとする場合、国や自治体は、情報を一元管理する都市OSを管理する事業者から高齢者の住む場所、健康状態、要介護度の情報などの提供を求められる可能性がある。政府は『個人情報保護法令に従い、必要な場合は本人の同意が必要』と説明しているが、行政機関個人情報保護法には、公益に資するなど特別な理由がある場合、本人同意なしで提供できるとも定められている。どちらが優先されるのか。政府は国会で、自治体や事業者や国でつくる区域会議が『判断する』と答弁したが、あいまいだ。」

「個人が特定されないマスデータとして処理されるとしても、生体認証やプロファイリングなどに対する市民の懸念が高まるなか、人権という観点から法案が精査されたとは思えない。米国のサンフランシスコ市では、行政が町に監視カメラを導入することを禁止する条例も可決されている。」(朝日新聞デジタル、2020年5月21日配信、「与党急ぐスーパーシティ法案 規制緩和だけではない問題」抜粋)


スーパーシティ法は成立したが
海渡雄一氏「あきらめるのはまだ早い」

内田聖子・NPO法人アジア太平洋資料センター共同代表は前述のツイート後も「昨日、TV朝日は3分弱の扱いで流していましたが、何せ短すぎて、内容の本質をしっかり指摘できておらず残念でした」とツイート。

また、「大阪府・大阪市は、日本で最もスーパーシティを進めたい(なりたい)自治体の一つです。法案審議の前である今年3月に、大阪市は議会で『スーパーシティ構想実現のための早期法改正に関する意見書』を採択し、国に提出しています」、「このように法案可決のかなり前(1年以上)から様々なレベルでスーパーシティになりたい自治体と政府・企業は交流・協働をしています。すでに自治体間で差がついているわけです。コロナ以前から名乗りを挙げて準備してきた自治体と、コロナ後に対応に忙殺される自治体との間の公平性が担保できるのか」とツイート。

内田聖子NPO法人共同代表が指摘するように大阪府・大阪市のような法案審議前から動いた自治体もある。しかし、海渡雄一弁護士はスーパーシティ法(国家戦略特区法改正案)成立直後「あきらめるのはまだ早い。IR法と同じように、どの自治体も手を上げなければこの計画は破産させられる。立候補自治体がでないよう、住民に制度の潜在的なプライバシー侵害の危険性、自治の仕組みが壊され企業主権になりかねないことを訴えていく」とツイートしたが、「あきらめるのはまだ早い」との海渡雄一弁護士の言葉が印象に残った。

スーパーシティ法とは(スーパーシティ法の問題点)

福島瑞穂(みずほ)議員が、ご自身の公式ブログに記事(「2020年05月22日、スーパーシティ法案で特に事業者が個人情報を取り扱いをする際の問題点について質問」)を投稿。このブログ記事には、参議院・地方創生及び消費者問題に関する特別委員会における福島みずほ議員と村上敬亮・政府参考人との「やり取り」が詳細に記録されている。これを読むとスーパーシティ法の問題点が明らかになる。

-前略-
・福島みずほ議員 これ、区域データ、地理データや空間データ、区域、座標軸データ、これ、何のために使うんですか。

・村上敬亮・政府参考人 座標軸データは特にリクエストが多いところでございますけれども、例えば、移動サービスを提供するでございますとか、そこに例えば複数の移動手段の掛け合わせをするということでございますと、それぞれの事業者がそれぞれの場所を特定するときに指し示す座標軸のようなものというのはできれば共通化したいといったような要望がございます。そのときにパブリックの方で得られた座標軸データがあれば、それぞれのサービスを組み立てるときの基本的な物差しとして共有することを区域計画の中で推奨できると、データ連携基盤の側も、その座標軸を共通化された中でそれぞれのサービス連携を実現できると。
こういったような、テクニカルな説明で恐縮でございますが、まさにデータ連携、共有のために共通に必要になる部分について匿名化する必要のない形で活用すると。御指摘をいただいたような例、例えばで申し上げれば、そういったような活用が考えられるところでございます。

・福島みずほ議員 これ、やっぱりインフラとかそういうもののためですよね。町づくりのインフラのため。
これ、区域会議の中に、区域会議、どこを対象の町にする、区域会議が開かれる、特区担当大臣と首長と事業者が入る。これ、事業者が初めから入っているんですよ。そこで、このところが、ある町で、もしかしたら可能性が高いわけですが、事業連携データの事業者になっていく。
つまり、誰が主人公なのかということなんですよ。住民が主人公で、そこから選ばれた議会がその町をどういうふうにするのか住民と一緒に決めていくというまさに民主主義のところから、このスーパーシティ構想は、内閣府で決め、その区域会議の中で事業者と首長と特区大臣、内閣府がその町をどうするかグランドデザインつくっていくんですよ。
いろんなデータを取ってインフラを造っていく、どうしたらいいのか。企業はビジネスのために生きているから、どうやってみんなから情報を集め、どうやってそこでインフラ整備し、どうするかということにエネルギー使うの当たり前じゃないですか。慈善事業でビジネスなんてやっていません。
つまり何か。住民が主人公の町、住民自治、民主主義の当たり前の憲法上の町から、憲法が保障する民主主義の町から、まさに城下町、企業城下町、企業がデザインしていく、首長は入っているかもしれないけれども、まさにその事業者がビジネスをやっていく、企業が主権者になっていく、そんな町になっていくんですよ。それでいいんですかという話ですよ。
東京二十三区内でも、これだけお金があるのに、町づくりやいろんなインフラにお金を使って、福祉、医療、介護、そういうことにお金がなかなか回らない。自治体でもそうですよ。何にお金を使うのか。そういうところに、医療、福祉、介護にお金を使わずに、町づくり、インフラにお金を使っていく。だから、お金がないんですよ。このシステム自身がみんなのためにならないと思います。
一言、同意の点で一つ。顔認証システムは個人の同意がありません。私は嫌だであっても、例えば特区の中の加古川の条例を見ますと、もうこれ顔認証システムがある監視カメラがあるんですよ。これ、同意がないのに、いいんですか。

・村上敬亮・政府参考人 お答え申し上げます。
個人情報保護法においては、特定の個人が識別できるカメラ画像は個人情報に該当するため、取得時に特定した利用目的を本人に通知又は公表して、その範囲内で取り扱わなければならないと定められていると承知してございます。したがいまして、個人情報取扱事業者に該当する者が、スーパーシティの場合であっても、カメラ画像を取得する場合には個人情報保護法上の利用目的が通知、公表されていることが必要であり、かつ、その限りにおいては必ずしも本人の同意を得ることは求められていないというふうに承知をしてございますが、こうした個人情報保護法の規定にしっかりと、遵守をしながらスーパーシティにつきましても運用をするようしっかりと見守ってまいりたいと考えてございます。

・福島みずほ議員 問題の答弁ですよ。
顔認証、仕組みは、まず撮る段階で個人のプライバシーを侵しているんじゃないか、そのデータをどう使うか、二段階問題があります。しかし、撮る段階でもプライバシーの問題、あるじゃないですか。嫌だという人の権利を保障できないというのは、根本的な欠陥だと思います。この問題は、情報という面と、それから民主主義という面と、二つの点、お金の問題もあります。誰が主人公になっていくのかという点から極めて問題であると申し上げ、質問を終わります。


2020年05月22日、スーパーシティ法案で特に事業者が個人情報を取り扱いをする際の問題点について質問(福島みずほ公式ブログ)

参考「スーパーシティ構想法案成立 個人情報保護の付帯決議も」(朝日新聞デジタル)
人工知能(AI)などを活用して最先端都市づくりをめざす「スーパーシティ構想」を盛り込んだ改正国家戦略特区法が27日の参院本会議で自民、公明などの賛成多数で可決され、成立した。政府は今秋にも同構想への提案を自治体から募り、選定する見通し。日本維新の会は賛成したが、多くの野党が個人情報保護などであいまいさがあるなどとして反対した。

改正法は特区制度を活用して、車の自動走行やキャッシュレス決済、ドローン配送、遠隔医療など、都市生活のための新たな仕組みを推進するのが狙い。複数の分野や省庁にまたがる規制改革をまとめて実現できるよう、自治体の提案に基づき、首相が担当大臣に検討を要請できる。

ただ、個人情報を集める時の本人同意や、自治体が対象地域を選ぶ際にどう住民合意を得るのかなど具体的な手続きが明記されておらず、野党側が懸念を示していた。参院本会議でも国民民主党の森ゆうこ氏が「最先端技術を活用して快適な生活を送ることに誰も異論はないが、代わりに自由とプライバシーを差し出すことはできない」などとする反対討論を行った。

付帯決議には、個人情報保護の徹底などが盛り込まれた。(菅原普)(朝日新聞デジタル、2020年5月27日18時48分配信)


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