副業・兼業がしやすい労働時間法制の実現(経団連方針)
経団連が今年(2023年)5月31日に公表した2023年度事業方針(成長と分配の好循環を実現する)には「わが国全体の生産性向上に不可欠な成長産業・分野等への円滑な労働移動の実現に向けて、雇用のマッチング機能強化と『労働移動推進型』セーフティーネットへの移行、副業・兼業がしやすい労働時間法制の実現を政府に働きかけるとともに、働き手の主体的なキャリア形成や能力開発・スキルアップを支援するための諸施策の導入・拡充を促す」と記載されており、副業・兼業に関連する労働時間法制の見直しを政府に求めている。
また、経団連が今年(2023年)9月12日に公表した2023年度規制改革要望(日本経済にダイナミズムを取り戻す)には副業・兼業の推進に向けた割増賃金規制の見直しが要望の一項目となっている。
「現行法では、本業と副業・兼業の労働時間が通算される。そのため、例えば本業の所定労働時間が1日8時間、週40時間の場合、副業先における就労のすべての時間に割増賃金が発生する等の事象が多く発生する。これは、副業・兼業先にとって重い負担となり、国全体として副業・兼業を推進するうえでの大きなハードルとなっている。また、副業に従事している社員からも、割増賃金が適用されることで副業先の他の社員に気を遣ってしまうなどの声がある。
割増賃金規制は、法定労働時間制または週休制の原則を確保するとともに、長時間労働に対して労働者に補償する趣旨であるが、本人が自発的に行う副業・兼業について適用することはそもそもなじまない。
そこで、真に自発的な本人同意があり、かつ管理モデル等を用いた時間外労働の上限規制内の労働時間の設定や一定の労働時間を超えた場合の面接指導、その他健康確保措置等を適切に行っている場合においては、副業・兼業を行う労働者の割増賃金を計算するにあたって、本業と副業・兼業それぞれの事業場での労働時間を通算しないこととすべきである。
これにより、副業・兼業が促進され、働き手の主体的なキャリア形成や企業の多様な人材の確保などにつながることが期待される」(経団連『2023年度規制改革要望』より)。
第3回 働き方・人への投資ワーキング・グループ(規制改革推進会議)
規制改革推進会議(内閣総理大臣諮問機関)の第3回「 働き方・人への投資ワーキング・グループ」が(2023年)12月5日に開催されたが、議題は「副業・兼業の円滑化」となっていた。
その第3回「 働き方・人への投資ワーキング・グループ」の資料5(大津章敬社会保険労務士が作成した)『副業・兼業の事例と促進における課題』には、「労働時間通算にかかる労働基準法38条の解釈を同一事業主内別事業場と位置づけ、別事業主の複数事業場で労働した結果生ずる時間外労働に対する割増賃金の支払いは要しないこととすべきである」などと、労働基準法38条の解釈を変更することにより経営者側の要望にそうような提言がされている。
『副業・兼業の事例と促進における課題』大津章敬社会保険労務士(PDF)
労働時間通算にかかる労働基準法38条の解釈変更(私は国会審議を避ける労働基準法38条の解釈変更に反対)、または労働時間通算にかかる労働基準法38条の改正には労働者側は強く反対するものと予想されるが、今後の労働法制の重要課題となっている。厚生労働省の検討会や労働政策審議会での議論を注視すべきであろう
第3回 働き方・人への投資ワーキング・グループ 議事次第(内閣府公式サイト)
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また、経団連が今年(2023年)9月12日に公表した2023年度規制改革要望(日本経済にダイナミズムを取り戻す)には副業・兼業の推進に向けた割増賃金規制の見直しが要望の一項目となっている。
「現行法では、本業と副業・兼業の労働時間が通算される。そのため、例えば本業の所定労働時間が1日8時間、週40時間の場合、副業先における就労のすべての時間に割増賃金が発生する等の事象が多く発生する。これは、副業・兼業先にとって重い負担となり、国全体として副業・兼業を推進するうえでの大きなハードルとなっている。また、副業に従事している社員からも、割増賃金が適用されることで副業先の他の社員に気を遣ってしまうなどの声がある。
割増賃金規制は、法定労働時間制または週休制の原則を確保するとともに、長時間労働に対して労働者に補償する趣旨であるが、本人が自発的に行う副業・兼業について適用することはそもそもなじまない。
そこで、真に自発的な本人同意があり、かつ管理モデル等を用いた時間外労働の上限規制内の労働時間の設定や一定の労働時間を超えた場合の面接指導、その他健康確保措置等を適切に行っている場合においては、副業・兼業を行う労働者の割増賃金を計算するにあたって、本業と副業・兼業それぞれの事業場での労働時間を通算しないこととすべきである。
これにより、副業・兼業が促進され、働き手の主体的なキャリア形成や企業の多様な人材の確保などにつながることが期待される」(経団連『2023年度規制改革要望』より)。
第3回 働き方・人への投資ワーキング・グループ(規制改革推進会議)
規制改革推進会議(内閣総理大臣諮問機関)の第3回「 働き方・人への投資ワーキング・グループ」が(2023年)12月5日に開催されたが、議題は「副業・兼業の円滑化」となっていた。
その第3回「 働き方・人への投資ワーキング・グループ」の資料5(大津章敬社会保険労務士が作成した)『副業・兼業の事例と促進における課題』には、「労働時間通算にかかる労働基準法38条の解釈を同一事業主内別事業場と位置づけ、別事業主の複数事業場で労働した結果生ずる時間外労働に対する割増賃金の支払いは要しないこととすべきである」などと、労働基準法38条の解釈を変更することにより経営者側の要望にそうような提言がされている。
『副業・兼業の事例と促進における課題』大津章敬社会保険労務士(PDF)
労働時間通算にかかる労働基準法38条の解釈変更(私は国会審議を避ける労働基準法38条の解釈変更に反対)、または労働時間通算にかかる労働基準法38条の改正には労働者側は強く反対するものと予想されるが、今後の労働法制の重要課題となっている。厚生労働省の検討会や労働政策審議会での議論を注視すべきであろう
第3回 働き方・人への投資ワーキング・グループ 議事次第(内閣府公式サイト)
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