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観たい映画だけしか観てません。今忙しいんでいろいろ放置

『百円の恋』 (2014) / 日本

2014-12-29 | 邦画(は行・ま行)


監督: 武正晴
出演: 安藤サクラ 、新井浩文
鑑賞劇場: テアトル新宿

映画『百円の恋』 公式サイトはこちら。

実家でひきこもり生活を送る32歳の一子は、離婚して出戻ってきた妹とケンカしてしまい、やけになって一人暮らしを始める。100円ショップで深夜勤務の職にありついた一子は、その帰り道に通るボクシングジムで寡黙に練習を続ける中年ボクサーの狩野と出会い、恋をする。しかし幸せも長くは続かず、そんな日々の中で一子は自らもボクシングを始める。(映画.comより)


なかなか忙しくて観たい映画に行けてない!!!
仕事終わりが遅くて、終わると疲れちゃいます。でもこの日はやとこさ仕事納めだったので、
見たいのいっぱいあったけどこれをチョイス。駆け込み鑑賞の本作、2014年my映画ランキング第6位に選びました。

安藤サクラかっけーわ、大したもんです。女優魂ここにあり。
私の中ではほんとに、何があってもスルーしたくない女優の一人で。いつもいつもその役作りに魅入られてしまう。そして今回もそう。
ここまでの役作りをしてくる女優って、日本じゃ彼女しかいないんじゃなかろうか。
最初に出てきた、妹の子と一緒にTVゲームしてるシーンで一瞬映った、スウェットをたくし上げてウエストをぼりぼり掻く後姿。腹回りに肉がたっぷりと乗ったその後ろ姿、スタントかとも思ったけどもしかしたらあれはご本人なんでしょうか。とにかくたるんだ自堕落生活の女から、ボクサーへと大変身を遂げる過程で、増量→減量をしたらしいそのプロ根性にまず脱帽。

最初は何となく、好きな男がいるからとか、なんかハグしたりカッコいいくらいの理由で始めたボクシング。ファイティングポーズもどこかいい加減だった一子が本格的に変化してからの姿は凄かった。目つきからしてまず本気。そして体型が変わる様も、一子の本気度を示す尺度となって行った。
前半と後半でスイッチが変わるのがわかると思うんですよ。そこは明らかに狩野との関係の変化。
文字通りの、“Hungry Angry”なんだよね。
何かを劇的に変えたいと思う原動力は、実は怒りだったり憤りだったりする。人が本気で腹の底からムカついた時、そのエネルギーが呼び起こす結果って相当なものがある。そこから人生変わっていくことだってあるし。

何もかもうまくいかないけど、そこから這い上がる術さえ知らない。時代がそうなってきている以上、その境遇にある人間を描く作品が増えてきているけど、そこにドラマ性があるのが映画なんですよね。
本作、一子のどん底からの転換が凄まじい。自分を変えるには、習慣や性格を正すには、血が出るくらいの努力をしないと無理で、大抵の人はそれができずに現状に甘んじ、不満の中で人生を終える。それが心底嫌だと思った時に人は動く。なまくらに生きていた一子は自分を変えて、少し疲れが見える女豹のようなボクサーになった。人が人に「ちょっと雰囲気とか、変わったんじゃない?」って言うことはあると思うけど、言われた方は実は相当の変化があったはず。そこまでしないと人なんて変わりっこない。切れのいいシャドーボクシング、あれを習得するのに安藤サクラが一体どのくらいの練習をしたのだろうと考えると、ひたすら尊敬の文字しか浮かばない。

人だってレールから外れれば一気に108円程度の価値しかなくなってしまう時代。そこに安住したければそれもできる。しかし自分の中で火がついた時、その原動力が生み出す底無しパワーが、人間が人間たる所以。抜け出したければ、変わりたければやってみろ!っていう挑戦状みたいなものを突き付けられたような気もする。文句言う前にやってみろってことでしょう。とことんやりぬいたら悔いはない。

『フランシス・ハ』のように、「極限まで頑張っても上手くはいかない自分」を映画として観ることは、たぶんだけど観客側に何かしらの共感を呼び起こす効果がある。本作は前半部分が、ゆるい役を過剰気味に演じているだけに、一歩間違えればやり過ぎ感で終わりがちな所を、安藤サクラの本気の役作りが大いに救っている。そして新井くんですね。ダメな男演じさせたら世界一じゃない(笑)一子は確かに変わった。しかし狩野との関係ってどうなんだろう?彼らはこれからも試行錯誤ややり直しを繰り返すんだろうけど、それでも今までとは違う世界を見た一子だから、狩野がまたやらかしたとしても新しい自分を生み出していけるのではないか。
人は心底からの変化を経験したら本当に強くなる。他人からは108円くらいにしか見えなかったとしても、経験が生んだ価値が下がることはない。


★★★★☆ 4.5/5点







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8 Comments

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Unknown (Caine)
2015-01-04 01:01:24
凄いよねぇ。安藤サクラ。こんな役やらせたら日本で彼女の右に出る人いないと思う。
いわゆるデ・ニーロ・アプローチは海外の俳優ならある程度は当然だけど、日本では数少ないよね。しかも脱ぐ必然性があれば当然のように脱ぐ。演じることはその役になること、こんな当たり前のことが全く出来てない日本人俳優が多い中で、彼女は本当に数少ない本物の役者だと思います。

まあさ、可愛くて美人でそれだけで芝居が下手でも華がある女優は確かに必要なんだけどさ、吉永小百合みたいにね。でもこういう役者の入魂の芝居はやっぱ観てて納得。なんだろう、お腹にどっしり満足感というか。
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Caineさん (rose_chocolat)
2015-01-04 06:05:28
今の日本の女優の中だと、安藤サクラしかこんなことできないでしょうねー。
こんなに根性ある人、他にいない。俳優・女優ならやって当然のことだけど、みんなそれしないんだよ。

>役者の入魂の芝居
だよねえ。去年12月30日鑑賞なんだけど、
他の作品をブッ飛ばすくらいの良さでしたよ。
2014年myランキング第6位に入れちゃいました。
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こんばんは (ノラネコ)
2015-01-04 22:52:13
役の作りこみも凄いんだけど、何より驚いたのはあのブクブク状態から、クライマックスのプロボクサーの体をたった二週間で作り上げたってこと。
いや~尊敬するけど、これ繰り返してると病気になるからサクラの姐さんにはキツイ映画は本数搾ってほしいです。ほんとに。
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ノラネコさん (rose_chocolat)
2015-01-05 09:14:01
あの身体の絞り方は凄かったよね。

>これ繰り返してると病気になるから
確かにキツいと思う。
でもよくやったと思うよ。
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女優ですね。 (えい)
2015-01-12 15:27:05
こんにちは。
久しぶりに、演技が映画をけん引する作品と出会いました。
正直、この映画の評判を聞いたいても、
監督の全作が、あの『イン・ザ・ヒーロー』だったこともあり、
あまり期待はしていませんでした。
観てみて、高評価の理由が分かりました。
安藤サクラ、改めてすごい女優です。
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えいさん (rose_chocolat)
2015-01-19 00:49:57
私も『イン・ザ・ヒーロー』は正直今一つでして、
どうかなーと思ってたんですが、これはよかった。
安藤サクラがこの作品の成功をほぼ握っていたとはいえ、
監督の構成もこちらのほうがよかったと思いました。
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安藤サクラ (真紅)
2015-01-22 21:44:02
rose_chocolatさん、こんばんは。
安藤サクラ、凄かったです。新井くんもいいですね~。
私は、タイトルだけが不満でした。
じゃあどんなタイトルがいいんだ?って言われても困るんですが。。。
一子の動機って恋じゃないですもんね。
まぁ、恋もちょっとは入ってるけど。
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真紅さん (rose_chocolat)
2015-02-04 23:23:18
タイトル、そうねえ、あんまり気にならなかったかな。
たった百円くらいかもしれないけど、
それでも自分にとっては死ぬ想いの動機、みたいな感じ?
恋だけじゃなくて、その他いろんな感情も混ざってたけどね。
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