原題:Of Gods and Men / DES HOMMES ET DES DIEUX
監督:グザヴィエ・ボーヴォワ
出演:ランベール・ウィルソン マイケル・ロンズデール オリヴィエ・ラブルダン フィリップ・ロダンバック ジャック・エルラン ロイック・ピション グザヴィエ・マリー ジャン=マリー・フラン アブデルハフィド・メタルシ サブリナ・ウアザニ
第23回東京国際映画祭『神々と男たち』ページはこちら。
<概要>
北アフリカ山間の僧院。
フランス人修道士が現地のイスラム教徒と調和を保って暮らしている。
やがて、原理主義者による暴力が地域を覆い、修道士たちは選択を迫られる。
使命と尊厳の意味を問う、カンヌ映画祭グランプリ受賞作品。
(TIFF公式サイトより)
<感想>
2010年カンヌグランプリに輝いた作品。
来春3月にはシネスイッチにて日本公開も決定、上映後にチラシが配られていました。
1996年にアルジェリアのチベリーヌにて、厳律シトー会の僧院に属する7人のフランス人修道士が、イスラム武装グループに誘拐された実話をもとにした作品です。
なので話自体はわかってしまうのですが、敢えてこの作品は事実を検索しないでご覧になるほうがよいように思います。
宣伝チラシとか、カンヌグランプリ記事にいろいろ書いてありそうなのは読み飛ばしたり。
その事実自体をうんぬん・・・ ということはこの映画の主題ではなく、
あくまでも、ここに存在する修道士たちの心の行方を描くことによって、本作はその重みを出しています。
自分たちの生きる道であるところの僧院の存在や、
また自分たちが尽くしている、大切な村の人々や、友人にまでイスラム武装勢力の危害が及ぶようになってくると、果たしてここにこのままとどまることがいいことなのかどうか、迷うのが当然だろう。
生きてこそ伝えられる信仰、しかしそのためにはこの地を離れないといけない。
彼らがここを離れがたい理由。 それは、彼らよりも何代も前から先人達がこの地に留まり、彼らは最早地域の拠り所となっていることである。 それも単に施設としての拠り所だけではなく、彼らの生命を守る役割すらしている。
ここに僧院が存在している理由も、恐らくはアルジェリアへのフランスの植民地政策の名残かもしれず、そう考えるとむざむざと現地の人々を置いて行く訳にもいかないようにも思う。
劇中の一文、
「良い羊飼いは、狼が来ても決して群れを逃げ出さない。 最後まで群れを見捨てない」。
何度も何度も話し合い、そしてそれぞれの心が決まり、意見が1つになっていく瞬間の空気が清々しくすら感じる。
そして時折挟まれている、讃美歌や祭祀の儀式の映像がとても印象的で、彼らの魂の崇高さを現すようにも感じる。
志を1つにすると決めた人間の美しさ、それが一層結末を引き立てる役割をしている。
静謐で質素な映像の中、彼らの在り方は胸を打つものがありました。
今日の評価 : ★★★★★ 5/5点
こういう事実を映画化できるあたりがフランスらしいと思いました。
これできちんとした映画ができるフランスの懐の深さを知りました。
素晴らしい作品でしたね。
修道士たちの心を丁寧に描かれていて観終わったあとにもしばらく余韻が残りました。
ここまで究極の選択をしなければいけなかった彼らに敬意を払いたいです。