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【フランス映画祭2014】『グレート デイズ! -夢に挑んだ父と子-』 (2014) / フランス

2014-06-27 | 洋画(か行)


原題: De toutes nos forces
監督: ニルス・タヴェルニエ
出演: ジャック・ガンブラン、アレクサンドラ・ラミー、ファビアン・エロ

フランス映画祭2014「フィニッシャーズ(仮)」(邦題「グレート デイズ! -夢に挑んだ父と子-」)ページはこちら。

『グレート デイズ! -夢に挑んだ父と子-』公式サイトはこちら。(2014年8月29日公開)





早いもので今年もフランス映画祭の季節となりました。今年は上映12作品中、7本チケットを取得。
本当は28日も行きたかったんですけどねえ・・・ やっぱり皆勤はなかなか難しいかなー
上映前にオープニング・セレモニーもありました。毎年華やかです。今年は監督さん方がメインで来日されてましたね。団長のトニー・ガトリフ監督も元気元気。




車いす生活を送る17歳の少年、ジュリアン。失業中の父親ポールは、息子を愛してはいるが、正面から向き合うことができないでいた。そんな父の態度に不満を募らせる反抗期のジュリアンは、ある日、とんでもないことを思いつく―。それは、かつて父親が完走を果たせなかったトライアスロンの最高峰"アイアンマンレース"に一緒に出場するという計画だった!(フランス映画祭公式サイトより)

この作品がいち早く一般公開のようですね。
ニルス・タヴェルニエ監督は身体障碍者をテーマに過去にドキュメンタリーを作っていたことがあり、今回の主役に関しても「役者ではなく、実際の身障者を起用したい」という強い希望を持っていたことを上映後のQ&Aで語っていました。彼らの感性を大事にしたい、直接伝えたいというご希望のようです。
今年は身障者を主役にした『チョコレートドーナツ』が日本でも大ヒットしていて、そして本作も大胆にも車いすの青年がトライアスロンを目指すという設定なので注目を集めそうな予感です。

本作は恐らくはフィクションだと思うんですが、手近な対象として『チョコレートドーナツ』と比較してみると、「設定として身障者を映画の主役に起用すること」に関し、クリアすべき様々な点を持ち合わせているように思う。
『チョコレートドーナツ』はあくまでも実在の話をモデルにして、「ダウン症の子を同性愛者カップルが養子にすることの困難さ」という、マイノリティの許容に関して徹底した掘り下げを行っている。そこには当然養親側である同性愛者カップルの主張や、養子側の希望なども色濃く盛り込まれ、深みのある内容となった。

対する本作。「父親と共にトライアスロンに挑戦する」ことが通しで描かれているが、出場に至るまでの周辺人物の様子などは細かく描かれてはいるものの、肝心のジュリアン本人の思考について描かれているシーンが少なめで、大体の線はわかるが深い所までがなかなか伝わらない。
ジュリアンの「トライアスロンに出たい!」という希望はわかるが、その実現のために奔走するのはあくまでも周囲の人たちであってジュリアン本人ではない。トライアスロンの練習中でも、本番でも、人一倍努力せねばならなかったのは彼の父・ポールであり、途中からはポールの苦悩のような雰囲気になってしまっている。
実際にこのような事例があるのだとは思うが、それにしても1人でトライアスロンを完走するだけだって大変なことなのに、いくら体重は49㎏で軽いとは言え、人一人をくくりつけて泳ぎ、自転車に同乗させ、車椅子を押しながら走らねばならない。これこそまさに「超人」としか言いようがなく、やり遂げると決心してからポールが個人的に努力する様子や、それに対してのジュリアンの心情などがもっと描写としてあってもよかったと思うのだけど、ここはファビアン・エロー氏がどこまでの演技が可能かにもかかってくる話なので、そことの折り合いをつけていかねばならないのがよくわかる。

まず前提として「ポールの、ジュリアンとのコミュニケーションの不在」があり、それに対して「母・クレールのジュリアンへの過干渉」が存在する。その部分をトライアスロンを通じて乗り越えていくことがテーマの1つなのだけど、身障者をドキュメンタリーではなくフィクションに起用するに当たっては、本人がどのくらいの稼働域で演技ができるか、どこまでの心情表現が可能なのかを勘案しなければならず、さらにストーリーとしてまとめないといけないので、本作はできうる限りの最大限の調整を行った結果が完成した映画と言えよう。そのために幾分描写にもう一つ踏み込みがほしいと感じても、それはそれで最大限の心遣いの結果なのかとも思えてくる。描きすぎるよりも、描かないことで尺もすっきりとまとまっているし、観終わった後の観客の感覚に寄りそう部分も含めて、この映画なのかもしれない。
それを実現可能にしたのはひとえにファビアン・エロー氏が役者としての強いプロとしての意識と、高いスキルを持っていたからに他ならない。監督は「彼は時間には正確だし、演技もいいので今後もぜひ起用してほしい」と訴えていたことからもわかる。


★★★ 3/5点






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2 Comments

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Unknown (バラサ☆バラサ)
2014-09-21 23:47:15
心象を描くには、尺が短すぎましたね。
障害者の友達(特に、孤独だった少女)とのエピソードをも掘り下げたほうがいいかも。彼が出場するのが僕たちの希望でもあるんだ。というのは、感動的なシーンでしかるべきなのですが、その過程が不十分だったのでないかと思います。

後、オヤジにばかり過酷な訓練させて、何も悩まないのかなぁ。
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バラサ☆バラサさん (rose_chocolat)
2014-09-23 10:20:59
>エピソードをも掘り下げたほうが
推測ですけど、こういう関連って俳優側の事情にもあるような気がします。
ファビアン・エローくんがどこまでの演技ができるのか、彼を起用するからにはそこも考えないといけない訳ですからね。
お父さんのシーンが多くなってしまいましたけど、そんな事情も考えて、これだけの尺でうまくまとめられたのは逆によかったのかもしれません。
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