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『恋するリベラーチェ』 (2013) / アメリカ

2013-11-06 | 洋画(か行)


原題: Behind the Candelabra
監督: スティーブン・ソダーバーグ
出演: マイケル・ダグラス 、マット・デイモン 、ダン・エイクロイド 、スコット・バクラ 、ロブ・ロウ
観賞劇場: チネチッタ

映画『恋するリベラーチェ』公式サイトはこちら。


1950~70年代アメリカで派手な衣装やパフォーマンスで一世を風靡し、同性愛者でもあった実在の天才ピアニスト、リベラーチェの晩年を、マイケル・ダグラス&マット・デイモン主演、スティーブン・ソダーバーグ監督で映画化した。1977年夏、ラスベガスで出会ったリベラーチェと青年スコット・ソーソンは、年齢や住む世界を超えて互いにひかれ合う。スコットは運転手兼愛人としてリベラーチェを支え、リベラーチェはスコットの親代わりにもなり、2人の秘められた関係は順調に続くかと思われた。(映画.comより)


引退宣言をしているスティーブン・ソダーバーグ監督の作品公開が相次いでいる今年だが、『マジック・マイク』『サイド・イフェクト』に続く本作、前2作とはまた一線を画した内容になっている。実在の人物であるリベラーチェ(劇中では「リベラーチー」と発音していた。こちらの表記の方が正しいのかもだが)の晩年と、その私生活上で起こった、運転手兼愛人のスコット・ソーソンとの日々を描く。

リベラーチェ wiki

当時は同性愛者の有名人って上手くごまかすことも可能だったけど、今のようにメディアが発達して個人でも発信できる時代となると、もう隠すことは無理でしょうね。目撃されて、「リベラーチェなう」ってどこかのスポットでつぶやかれたらそれで一貫の終わりだし。70年代はまだまだのどかな時代でした。"Behind the Candelabra"という原題の通り、「燭台の裏側で」何が起こっていたか、一般人は知る由もなかったのだから。

冒頭での、初々しいスコットとリベラーチェの出会い。しかしそれをやぶにらみに見つめ、今にも発狂しそうな別の男も画面の端に存在する。そしてそんな男たちは、リベラーチェの屋敷に遊びに行ったスコットの目には、あちこちに散見するようにも見える。この男たちはまぎれもなくリベラーチェの「愛の残り火」。リベラーチェからお払い箱になるのが時間の問題な男たちが、新しく彼のおもちゃになるべくしてやってきた男に向ける羨望と嫉妬の眼差しの凄まじさ。女性同士の嫉妬よりも、絶対に男性同士の嫉妬の方が根深く怖いとここでも思えてしまう。

リベラーチェは気に入った男には惜しげもなく金と地位を与える。しかしながら相手をとっかえひっかえしている訳なので、そこに永遠というものがないことがわかる。男たちはリベラーチェが与えるものに満足するが、やがてそれには飽き足らない部分で不平不満を言い始める。その多くの原因は、リベラーチェの愛し方に対してのものだろう。リベラーチェは好きになった相手には絶対服従を命じる。いついかなる時でも自分を優先させること、自由な時間はいらないでしょう?という彼の主張、いいんですが息が詰まりそう(笑)パートナーを束縛する人間は、相手を信じられないのと、自分に自信がないことの両方なので、そこに気がつかないと束縛癖は直らない。それはリベラーチェ自身の過去の恋愛の不安定さからも来ているのだと思われる。有名人との恋愛はいつ終わりになってもおかしくはない関係、まして昔は今のように堂々と同性愛をカミングアウトなんてできないから余計に秘密にしないといけない堅苦しさ。孤独になることへの怖さが相手を縛るもととなり、相手はそれに加えてリベラーチェに待遇面でいろいろと要望を出し始め、次第にギクシャクしていく。

出会った頃の蜜月期間と、終わろうとする間際の冷たい空気の対比。これは男女の恋愛でもそうだけど、男同士だと尚更冷えて来るものがあるように感じる。とげとげしさが半端じゃないんですよね。そういう空気をリベラーチェは何回も体験してきているから、その気配が見え始めると「またか」と言う感じで、後処理を分かっている人間に任せてみたり、次のターゲットに秋波を送ってみたり。そしてスコットも冒頭の端っこに出てくるように凄まじく嫉妬深い、ドラッグに溺れるただの男になり下がってしまうんですね。あれだけ彼の言いなりになって、ライフスタイルはおろか、自分のアイデンティティまでも変えたのに、何故だ!という想いが余計に嫉妬を深くする。

それでも一時はリベラーチェを愛したことに変わりはなく、またその愛の日々は元の暮らしとはかけ離れ過ぎていて、忘れるには強烈過ぎた。単にその贅沢三昧な日々が惜しいわけではなく、そこに愛があったから余計に想いが裏返しとなって強く憎しみが出る。それでも相手が自分に対して、ひとかけらでも心を残してくれているとわかった時、その嬉しさはひとしおなのだろう。
愛はこわれもの。儚く去ってもなお想いを残す。過ぎ去ることはわかっていても、そこにはやはり一時を過ごしたという「情」が残る。その思い出を抱きしめたくなる時が来たら、素直に従えばいいのだと。

孤独なエンターテイナーをマイケル・ダグラスが好演。孤独だけどゴージャスで冷酷、極端な対比が上手い。マット・デイモンの純情と狂気、絶妙なロヴ・ロウのキャスティングもよかった。やっぱりソダーバーグ作品って好きですね。


★★★★ 4/5点







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