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『クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち』 (2011) / フランス・アメリカ

2012-07-01 | 洋画(か行)


原題: CRAZY HORSE
監督: フレデリック・ワイズマン
出演: フィリップ・ドゥクフレ 、クレイジーホースダンサーたち
観賞劇場: ル・シネマ

公式サイトはこちら。


昨年のTIFFでも上映があったのですがチケット完売につき、一般公開まで待ちました。 映画の日のル・シネマは避けたかったんですが、ネット予約ができるようになりましたので待ち切れずに早々と観賞。
ワイズマン作品は
『パリ・オペラ座のすべて』
を観賞しています。 今回もフランスの、舞台つながりということなのですが、大きく異なるのはその内容。 オペラ座は一般的に芸術と見られていますが、本作の舞台である「クレイジーホース」は1951年にアラン・ベルナルダンによって創立されたナイトショー。 パリのナイトショーと言えば「ムーラン・ルージュ」が有名ですが、こちらも世界中から観客を集めて魅了してきた。
本作はその「クレイジーホース」の魅力を丸ごと伝えている。


まずは何と言っても舞台の美しさ、そしてダンサーたちそのものの美しさに尽きる。 
彼女たちの身体そのものが衣装と言ってもいいくらい完璧に美しく、躍動感があり、官能的であること。
そして舞台演出も彼女たちを最大限に輝かせ、セクシーに見せるように考案されている。 舞台の構成、そして照明やセット、小道具の全てが彼女たちのためにある。 「彼女たちのために」というのはすなわち、「どこまで男性をクレイジーにさせられるか」が基準の全てとなっている。
とりわけ美しいのはタイトルの「クレイジーホース」。 彼女たちの衣装(ほぼ裸なのですが)も実によく考案されている。 男性の「萌えポイント」を捉えている上に、照明で微妙に見えるのか見えないのかと調節されてもなお、かっちりと決まったダンスと相まって彼女たちは凛々しくも官能的。
思いっきりマスキュランな舞台のあとに続く影絵のシーンでは、今までかぶっていた仮面を1つ1つはぎ取ってフェミニンな表情をのぞかせる。 このギャップが男性にはたまらないに違いない。 また男性のみならず、多くの女性たちも彼女たちの魅力を賞賛する秘密は、単に男性だけをターゲットにした下品な出し物ではなく、きちんと視覚にもキュートに美しく訴える方法が計算し尽くされているからだろう。 例えば衣装担当のフィフィ・シャニュエルは「お尻を丸く見せる衣装」にこだわっているが、舞台での印象を均一に見せながら、彼女たちの持つ若さやボディの美しさを引き出す秘訣なのだろう。


彼女たちはオーディションでふるいにかけられる。そもそもボディーラインが審査の対象なのだから、求めるものに合わなければダンスの技量は関係なしに容赦なく落とされる。 
クレイジーホースに必要なのは、コンセプトに合う人材になれるかどうか、それだけ。 ボディーラインもそうだが、自分を磨いていこうという気構えがあるかどうかもその中に入るだろう。 完成形でなくてもいい、その人自身がどう自分をレベルアップさせて、自己の美を引き出せるだろうか。 要するに美に対して伸び代のある人材ということなのだろう。
芸術監督のアリ・マフダビ氏曰く、
「美しさを鼻にかける子は伸びない。コンプレックスがある子は自分磨きに精を出す。」
どの世界でも魅力的になれる人というのは自分に対して謙虚であり、前向きで、周囲に温かな姿勢であることなのかもしれない。 舞台で最大限の「美」を演じる一方、楽屋でロシアバレエのVTRを観ながら談笑しているダンサーたちを見ていると、相反するところでメリハリをつけていくことが人としての成長を促すのだと改めて思う。


ダンサーたちを美しく見せるために努力しているのは当然本人たちだけではなく、裏で支えるスタッフたちも同様である。 五輪やワールドカップでも振付を担当したフィリップ・ドゥクフレ氏は「最高のヌードショーを見せるため」に、彼の持てるものを全て出している存在。 そして先のマフダビ氏は客観的にクレイジーホースを分析し、衣装のフィフィも素材選びからダンサーたちに寄り添う。
しかしながら本作ではスタッフたちの意見交換を通じて、クレイジーホースが持つ課題点も浮き彫りにしていく。 芸術美を達成するために必要な型破りな発想、それと相反する規律や常識といったものがうまくかみ合わない。 当然としてダンサーたちにも舞台に対しての着眼点がある。 どれが欠けても成立しないだけに、どこでバランスを取っていくのか。 
会議で方向性を模索中もなお、舞台ではため息が出るような技とダンスを淡々と見せてくれる。 そしてそんな真剣勝負のショーをも全て優しく包み込むような、パリのゆったりとした街並みがところどころ入ってくる時、様々な要素を受け入れてくれるパリという街の度量の大きさを改めて感じていけるのだろう。


★★★★☆ 4.5/5点




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6 Comments

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Unknown (KLY)
2012-07-06 23:14:30
ありゃ綺麗だよ、本当に。
もちろん人にも寄るけど、私は裸観たらまず第一にバスト見るんだけど、あのヒップラインは素晴らしいに尽きます。お尻のところだけ見せてピンクの水玉ライトが当たるショーとか、何か可愛いなぁって(笑)
私はよーしらんかったのだけど、クレイジーホースって凄い有名なんですね。映画なんか全然見ない友達に聞いたら「フランスのショーパブだろ?」だって。ちと認識違ってるけど名前知ってるのに驚いたデス。
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KLYさん (rose_chocolat)
2012-07-07 18:24:24
あの赤い水玉のライトは可愛かったよねー。というか、このショーは照明の役割がすごく重要だよ。
ダンサーたちの肌を綺麗に見せる色というか、ピンクっぽく配色してるような気がするよ。

私もそんなに詳しくはないけど、今回じっくり観て素晴らしいと思いましたねー。
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衣裳。 (BC)
2012-07-21 10:07:55
rose_chocolatさん、おはようです。

私はダンス映画好きなのでこの作品期待しています。
(コチラでは来週から公開なの。)
衣裳も楽しめそうでなかなか良さそうですね。
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行きたい (かえる)
2012-07-22 07:28:21
去年フレデリック・ワイズマン特集に通ってこの新作も楽しみにしてました。
アメリカ・ドキュメンタリーの重鎮ワイズマンといったら、軍事や政治経済社会を見つめるものが主流ですが、モデルとかバレエものも魅力的ですよね。
パリに行った時はムーランルージュの行って満足してましたけど、クレイジーホースを目指さなかったことを後悔。
日本だと、もはやストリップショーをやる小屋て、とことんうらぶれた場末感が漂うイメージなんですが、パリだとそれが本気の芸術として追究されるのがやはりすばらしいなと。
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BC。さん (rose_chocolat)
2012-07-23 12:40:33
ダンス映画がお好きなら、これはいいんじゃないかなあ。
衣装なども可愛らしいんです。 それでいてセクシー。 可愛いセクシー、なかなか映画ではお目にかかれないのでいいと思います。
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かえるさん (rose_chocolat)
2012-07-23 12:42:04
昨年のTIFFではご覧になってなかったのかな?
私、こういうスタンスの作品はとても好きです。
クレイジーホース、行ってみたいですよね。真剣に彼女たちをアートとして扱っているところがいいと思います。
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