原題: DE ROUILLE ET D'OS/RUST AND BONE
監督: ジャック・オーディアール
出演: マリオン・コティヤール 、マティアス・スクナールツ 、アルマン・ヴェルデュール 、セリーヌ・サレット 、コリンヌ・マシエロ 、ブーリ・ランネール 、ジャン=ミシェル・コレイア
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前作『預言者』で、厳かな中にもたたみかけるような密室劇を見せてくれたジャック・オーディアール監督、そしてマリオン主演と来たらこれは絶対行かないと!ということで、結構上映館が少なめな中、行って参りました。
<あらすじ>
南仏アンティーブの観光名所マリンランドのシャチ調教師、ステファニー(マリオン・コティヤール)は、シャチのショーを指揮している最中にステージが崩壊、両足を失う大怪我を負ってしまう。過酷なハンディキャップを抱え、生きる希望さえ失っていく日々。そんな失意のどん底に沈んだステファニーの心を開かせたのは、彼女自身にとっても意外な人物だった。ナイトクラブの元用心棒で今は夜警の仕事をしているシングルファーザー、アリ(マティアス・スーナーツ)。彼は他者への愛を表現する術を知らない不器用な男であったが、他の人々のように同情心でステファニーに接するのではなく、両足がないことを知りながら彼女を海の中へと導いていく。(Movie Walkerより)
昨年公開があった『ソウル・サーファー』にもしかして似てます?と思ったら、同じだったのはケイティ・ペリーの曲だけで(この曲ってマリンランドとかで人気なんでしょうかね?ノリがいいからかな。笑っちゃいましたが)、あとは全く異なる視点からのアプローチだったのでホッとした。申し訳ないけど昨年のこの作品に関してはあまりにも美談だけに終わってしまっていた点で個人的にはちょっと否定的な見方なので。肢体が無くなったところから立ち上がる話は確かにいいんですよ。でもヒロインの宗教的な目線も入ってしまい、映画がカムバックストーリーだけで終わってしまっていたのがもったいないような気もして。
その点やはりというか、単なる復帰物語とか恋愛だけで終わらせていないところはさすがジャック・オーディアール監督といったところ。
失意のステファニーの前に現れたアリは言うなれば幼稚な部分も大いにある「一筋縄ではいかない男」、だけどステファニーに対してはまるで普通の人であるかのように自然に接する。両脚がないからどうのこうのということじゃなく、人間としての彼女に対して興味があるから。
原題の"RUST AND BONE"の意味はアリのボクサーとしての仕事や、彼のそれまでの身体を使って生きてきた経歴にも因るのだけど、この2人の関係がストレートに生々しいあたりも関係している。男と女、手順を踏んで・・・ということは最早まどろっこしいだけで、本来は動物的な間柄なのだから余計なことは取りはらってもいいじゃないか。そんな意図も感じる。
例え言動や生活態度が「それってどうよ?」と言いたくなるようなものであっても、黙って困っている所を助けてくれて、ごく自然に接してくれたら。今は理屈や体裁が優先で、アリのような野性味あふれる人間力は昨今あまり見かけないだけに、こんな人がいたら、脚を失って心が折れそうだったステファニーが惹かれてしまうのも当然なのかも。何も飾らずに繕わずに共にいられる感覚こそ、一緒にいたくなる異性の条件じゃないだろうか。
決して人の弱みに付け込むんじゃなくて、そこにそれが必要だからしてあげるという感覚。アリの中のホスピタリティにはどこか『最強のふたり』のドリスを思わせる大胆なものがある。いろいろなしがらみを一足飛びに超えてしまう度量なのだろう。そしてそんなアリにステファニーは自分をさらけ出していく。
その2人の間に超えるべきハードルがあるとしたら、それはアリの未熟さだったのだろう。通じ合ったと思っていたはずなのにアリの言動は理解できないことだらけ。
あの仕草はまやかしだったの?やっぱり脚がちゃんとある女の子の方が魅力的だし面倒じゃないし。ステファニーがそう思うのも無理もない。
子どもじみた男の性として、しっかりと支える女が必ず側に必要とされる。「人を愛するとは何か?」を改めて感覚として掴めなかったアリが最後に気付いたのは、まぎれもなくそこにいてほしいと願うことそのものだった。人を好きになって目から鱗が落ちるような気持ちになることがあるなら、そこに何も理由はいらないことがわかるはず。余計なエピソードなしに、ただお互いがお互いを求める姿を映画で掛け値なく描くのは実に難しい中、あざとくせずにそのハードルを難なく超えてきた本作。単純な中にも深く深く共鳴できる内容がいい。
★★★★ 4/5点
今思いついたんだけど
どうせなら、アリとステファニーひっくり返してみたらどうだったんだろう?両足切断して失意のアリに、オペだよと言ってめんどうみてくれるステファニー。うん、その方が共感できたと思う。(笑)
ケイティー・ペリー本人もこれが一番好きな曲だって言ってました。
何で私の周りとか知ってるんだよ! 笑
>ただ、誰とでもオペな男は結構いる。
これはゴロゴロいる。笑
アリとステファニー逆・・・ それは男の妄想でしょう。
日本なら「負けないで」ですかね。
私もアリの無言実行の直接さは、『最強のふたり』のドリスの飛び越え方と似ているように思いました。アリは何も考えてない、けものwととらえている方もいましたが、感覚的なだけで彼もまたまっとうな人なんだと思います。
アリは獣・・・では、ないですよね。
ちゃんとステファニーに対しての愛情もあったし。
ワイルドなんだと思います。
持病の薬がちょっと強くなったらば、なんともぐったり。
1か月それを飲んだ時点で、完全グロッキー・・。
検査の結果、数値がよくなってたんで、戻してもらいました。
やっと気力も復活で、ようやく・・です。
やっぱ映画見るのも、まず体力ですね!
同情やら憐れみやらではなく、まず同等に相手と接するというのがさりげなく、それでいて嫌みなくってのがよかったです。
「預言者」、未見ですが、興味深々です。
多忙はお互い様ですから・・・ 汗
眠い時は寝て下さい。ほんと、それが一番ですよ。
『預言者』、渋味があるというか、密室劇をこんなにも見事に展開させられるんだなと感心した記憶がありますね。
きっと人物の深淵を描くのが上手い監督なんだと思いますよ。
楽しみに待ってます。
じっくり味わえる作品だと思いますよ。お楽しみに。