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『天使の分け前』 (2012) / イギリス・フランス・ベルギー・イタリア

2013-04-17 | 洋画(た行)


原題: THE ANGELS' SHARE
監督: ケン・ローチ
出演: ポール・ブラニガン 、ジョン・ヘンショウ 、ガリー・メイトランド 、ウィリアム・ルアン 、ジャスミン・リギンズ 、ロジャー・アラム 、シボーン・ライリー 、チャーリー・マクリーン
観賞劇場: 銀座テアトルシネマ

映画『天使の分け前』公式サイトはこちら。


1年前くらいから告知されていた銀座テアトルシネマの閉館でしたが、いよいよこの5月となってしまいました。本作はクロージング作品。
結構な数の作品をこちらで観させていただいて、思い出深いシアターなだけに大変残念です。当然観に行きましたよ。
5月の特集上映レイトショーもお邪魔したいけど・・・どうかな。





<あらすじ>
スコッチ・ウイスキーが根付くスコットランド。この地は今、不況にあえいでいた。家族とうまくいっておらず何かにつけ暴力沙汰を起こしてきたロビー(ポール・ブラニガン)は、またしても問題を起こし捕まる。しかし恋人との間にできた子どもがじき生まれることを鑑みて、刑務所送りではなく社会奉仕活動をするよう言い渡される。そこで指導者のハリーと出会い、ウイスキーの奥深さを知ったロビーは、次第にテイスティングの才能を目覚めさせていく……。
(Movie Walkerより)


確かにロビーが起こしたことはよくない。そしてロビーが引き起こしたことは根本的には解決されてはいない(と思う)。この監督のお得意のパターンだが、ここが引っかかる人はもうこの作品はだめだと感じてしまうのだろう。その気持ちは分からないでもないが、本作の意図するところは善悪が云々というところではない。

階級社会の弊害が根強く残る中、自分が置かれている境遇から抜け出すことはイギリスではまだまだ難しい。不況が続き、若年層の就業が難しく、ましてやロビーたちのような前科がついたら尚のこと偏見がついて回る。抱えたトラブルを引きずって、平穏な暮らしが脅かされるのは結局自業自得でもある訳だが、そこにいつまでも浸りたくないと思うのは誰しも同じことだろう。
暴力が支配する環境から抜け出したいロビーが出会ったのは酒の世界。そこで(偶然ではあるが)才能を見出したロビーが思いついたこと、そのこと自体は話の展開から言ってご都合主義でもありはちゃめちゃでもあるのだけど、どこかお茶目で憎めない。もう誰も傷つけたくないし更生したいという気持ちがそうさせたのだろう。きちんと「天使の分け前」にこだわっているところなどは何とも心憎い演出。

イギリス階層社会の厳しい現実を描きつつも、ケン・ローチ監督は不遇な環境下にある人にも希望を見出すことを忘れないでほしいと訴えている。どこにも出口がないように見えるかもしれない、けれどどこかにあるきっかけを見つけるかどうかは自分次第。決着がついた4人の行く末もバラバラなのだろうが、とりあえずきっかけは掴んだ。そこから先にどう生きるかは自分で考えること。そんな優しさと厳しさが入り混じった監督のまなざしがそこにはある。
そんな温かみはきっと、閉館する銀座テアトルシネマへの立派な花向けとなるのだろう。素敵な作品を見せてもらった思い出はいつまでもあたたかく心に持ち続けて。


★★★★ 4/5点





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8 Comments

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こんばんはー☆ (kira)
2013-04-24 21:27:35
>そこから先にどう生きるかは自分で考えること。
>そんな優しさと厳しさが入り混じった監督のまなざしがそこにはある。

そうなんですよね~♪
roseさん、素晴しいです!
あの、1本をスコッチを愛する彼に残して発って行った先に、
ようやく始まる普通の人生が、平穏であるようにと願いました。

テアトルシネマ、実は私も1回ふられて、夕方近くの回になったんですよ~。
もしかしたらroseさんとニアミスだったかも~。惜しかったです
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kiraさん (rose_chocolat)
2013-04-24 22:15:47
えっとね、16:35~の回でしたよ。
もしかしたらご一緒かな?
超満員だから予約しないとだめよね。
銀座テアトル、閉館前の5月の特集上映にも行きたいかなと思ってます。レイトだけど(涙)

「小粋な」って言葉が似合う作品でしたね。
1つの映画館の終わりにもふさわしいと思いました。
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感慨深い (sakurai)
2013-05-04 20:49:28
そっか、クロージング作品となってしまったのですか。
それはまた思うところがありますよね。

彼のやったことをよしとはしませんが、なんかあったかい視線で撮るようになった監督に、余裕が感じられるような。
監督、若者を撮るのはうまいですよねえ。
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sakuraiさん (rose_chocolat)
2013-05-05 08:37:34
そうね。映画だから、現実としてロビーがやったことを取り上げ出すとキリがなくなっちゃう。
それもありつつも、でも、さてこの若者たちに未来はあるか?ってことだと思いました。

私は、ロビー以外の3人は、これまでと大して変わらない日々になると予想します。
でもロビーだって、これから成功するという保証も何にもないよね。
そのいい加減さもまた、この作品の魅力なのかな。ある1点の時間軸だけに結末を絞り込んできてますね。
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こんにちは ()
2013-05-10 11:24:36
ロビー以外の3人はさっそく飲みにいくわけだし、あっという間に2万5000ポンドを使っちゃいそうですね。

監督のリアリズムとユーモラスな語り口がうまく溶け合っているようでもあり、どこか齟齬をきたしているようでもあり、そこをどう感じるかで印象が変わってくるような気がします。

以前はとても厳しかった監督の眼差しがずいぶん変わってきたのが素敵でした。
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雄さん (rose_chocolat)
2013-05-10 16:13:40
ロビー以外は、お金持たせるだけ無駄みたいな気がしますよね(笑)
そうはいってもロビーだってすってんてんになるかもしれません。
予測がつかないのが面白いです。

私はどちらかというと本作はあたたかみを感じました。
ここから先は自分でやりなさいよっていう、親心のようなまなざしです。
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こんにちは (ノラネコ)
2013-05-25 15:25:25
ポイントは、ロビーの泥棒は誰も不幸にしてなくて、むしろ結果的に何人かを幸せにしてるって事でしょう。
だから気持ちよく観られる。
唯一落札者は不幸と言えなくもないけど、舌バカで気づいて無いし。
まあ酒好きとしてはちょい落札者の立場も想像しちゃって、複雑な気分にはなるのですけど。
もしモルト・ミルの本物にブレンドされたら憤死するかも(笑
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ノラネコさん (rose_chocolat)
2013-05-30 06:35:30
>ロビーの泥棒は誰も不幸にしてなくて
ですよね。
最初の事件はちょっと困ったかなって感じでしたけど、泥棒はセーフ。

>モルト・ミルの本物にブレンドされたら憤死するかも(笑
ノラネコさん、気がつくでしょうか。 笑
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