『諸君は私を好きになるまい』…例えそう言われても、
どうしようもなくロチェが抱える闇に惹かれてしまう。
『私を好きにならないでくれ』…それがロチェの口先だけの願いだとしても、
露悪さを装う孤独な瞳に魅了されずにはいられない。
映画の幕開けに、ジョニー・デップの真髄、魅惑の瞳の威力が炸裂する。
久々に【リバティーン】の世界に浸ってみました。
言うまでもなく、冒頭の挑発的ロチェに心奪われたまま、
馬車の中で妻に誘拐の思い出を語らせる場面は文字通り脳天を直撃する。
気品と情熱を併せ持つ妻の傍らで、不敵な眼差しを向けるロチェスター。
そして、狭い馬車という舞台の中で様々な大役をこなした右手中指(笑)。
私はDVD鑑賞のみですが、劇場の大画面で鑑賞された皆様。
心中お察し申し上げます…(笑)
ジョニーの場合あのような具体的なシーン(爆)は珍しいと思うので。。
続いて馬車を降りたロチェの、
何気ない、本当にさりげない右手の動きの意味するところを、
頭の中で何分の1秒か、電光石火のごとく駆け巡った刹那。
ほんの束の間、美しい指が優雅に鼻の先をかすめる時、
エロティックと呼ぶにはあまりに優雅で美しく、
その瞬間だけはロチェスター本人をも凌駕し、揺らめく長い指が主役だった。
これはジョニーのアドリブに違いない…と思った。
そこにいたのはジョニーではなくロチェスター伯爵なのだ。
彼ならそうするだろうというジョニーの演技を信じる。
このように早々にジョニーの細やかな演技によって、
ロチェスターの不敵な猥褻ぶりが如何なく発揮される。
皮肉屋で傍若無人な振る舞いの放蕩児ロチェスター。
なのに、それと裏腹な哀しげな瞳が心を揺さぶる。
ジョニーが創造した、悪徳の衣をまとった孤独で繊細な魂を持つ天才。
娼婦ジェーンとロチェスターの関係。
劇場の暗がりで呼び止め、身も心もとろけるような口づけをする。
ジェーンがどれほど惹かれているか、切ない吐息が物語っていた。
ジョニーの演じるシーンの官能的なこと…何度観ても慣れるということがない。
ロチェスターが『mouth(口で)』とジェーンに告げる。
この時の世にも悩ましい表情は筆舌に尽くし難い。
有り得ないほどの妖艶…。最上級の陶酔。
馴染みの娼婦との束の間の安息の時間に寛ぐロチェは子供のようだ。
ジェーンは心を乱されまいとしながらも、危うい彼を愛さずにはいられない。
そして聖母のような慈愛を示すジェーンに、ロチェも特別な想いがあったに違いない。
そんな微妙な関係の二人は切ないけれども、温かく通じる心が見える。
舞台女優リジーと恋に落ちたロチェスター。
自らの才能と情熱を注ぎ育て上げたリジーに、忘れかけた生きる歓びを見出し、
リジーとの恋に心奪われてゆく。
こんなにも無防備で繊細な瞳を見せるロチェに、鎧を脱ぎ棄てた裸の心を見る想いがする。
射るような眼差しが消えたロチェの瞳はどこを彷徨っているのだろう。
二人の人生の先に待つ危うさを感じていただろうか?
普通、ラブシーンと言えば女優がメインというもの。
ところがジョニーの場合、話は別だ。
この震えるような睫毛の美しさはどうだろう。
獰猛さや性急さというものは無縁で、まして鼻息の荒さなどもってのほか。
ここがジョニーのラブシーンの美しさであり、人々を魅了する理由であると思う。
まったく美しい…。指の先まで美しい…。あまりに美し過ぎて胸が痛むほどに。
母親に対する悪態を見せるロチェスター。
このシーンにおける母親役の、演技を超えて息を飲む様子が見えるようだ。
この、嘲りと挑発を含むような眼差しは、母親に対して有り得るものだろうか?
それほどに複雑な意味を含み、深い闇を湛えて余りある。
ジョニーのほんの少しの表情の変化は言葉よりも圧倒的に多様なものを伝える。
一瞬の目の色が、唇の動きが、完全に言語を超えて観る者に迫って来る。
私はこの時のロチェの邪悪な美しさを言葉にしようと躍起になるが、
何をもってしても到達できない高みにジョニーがいるということだけを静かに悟るのみ…。
身も心もボロボロになっても、相変わらずの皮肉や自堕落さは変わらない。
しかし病に冒されて虚勢も悪態も虚しく終わる時、
傷ついた野生の獣の咆哮のような涙がたまらない。
壊れゆく肉体と精神の嘆きを見事に表現した慟哭だった。
ロチェスター有終の美。
衝撃の鼻パッチ。華麗なる腐乱。
崩壊する肉体から放たれる最後の知性のきらめきを見せる。
ワンテイクで演じたというジョニーの迫真の演技は、
ロチェスターの演説と同じように観衆をくぎ付けにする。
現世との別れを自覚した今、許して欲しかったのだろうか?
神というよりも、自分自身に。
魂が天に召される瞬間、ロチェの瞳は確かに光を失ったように見えた。
驚くべき死んだフリである。
享年33歳。
自ら葬り去った惜しむべき才能への鎮魂歌が哀しく始まる。
『それでもまだ私が好きか?』
優美で哀愁漂う歌声が流れる中、問いかけながらロチェが消えてゆく。
誰をも魅了した知性とユーモアを持ちながら、
神を切り捨て、権力に反抗し、享楽に身を落とした人生。
背徳的な自由奔放さは人生の充足感をもたらしてはくれなかった。
そのようにしか生きられなかったロチェスターの苦悩が切ない。
ロチェスターの不敵さと繊細さが複雑に入り乱れる眼差しは、
ジョニーの瞳をもって成し得た功績だと称えたい。
才能と美と毒…ロチェスターが持つ稀有な天性。
それはまた、ジョニーも内包しているものではなかったか。
今は愛に満たされ、生きる理由を見つけたジョニーの、
もう一つの人生であったような気がしてならない。
ぽんぽこさんの彼はロチェ様ですか?いいですね~
私は誰だろう?…ルーかな。。(笑)
>ロチェは(ジョニーは)全身あますところなくエロスの塊ですねぇ。
ほんと!エロスですよね
エロチェスターと呼びたいわ!!(笑)
>体が売り物の彼女が一番欲しかったものは、ロチェの心
おっしゃるとおりですね。
あ~切なくてたまりませんね
>「あ、今リジーに恋に落ちた」「あっ、今イッタ」「あぁ、死んだ…」
爆…「あぁ、死んだ…」になぜか大ウケしました(笑)
ホントに死んだと思うような顔でドキドキしました。
まったく、ジョニーは何と言う天才なんでしょうか。
>POTCファンサイト
あやふるさんがこちらに?では早速物影から覗かせて頂きます♪(笑)
お気遣いのお言葉、ありがとうございました
ふるえるまつ毛(←Reiさんのこの表現、素敵!)、あの指、濡れた瞳、キューピッドの矢の様な唇…。
ロチェは(ジョニーは)全身あますところなくエロスの塊ですねぇ。
娼婦ジェーン、体が売り物の彼女が一番欲しかったものは、ロチェの心。すごく切ないし美しい。
それにしても、ジョニー程「瞬間」というものをはっきりと、それでいてごく自然に体現できる役者はいないのではないでしょうか。
「あ、今リジーに恋に落ちた」「あっ、今イッタ」「あぁ、死んだ…」
これらは映画を観ながらの私の頭の中の言葉(笑)
ジョニーは天才だ、と思わずにはいられない瞬間です。
失禁のあとのすすり泣きが切ない。それ以上にその直後妻に見せる虚勢に胸が張り裂けそうになります。
Reiさん、あやふるさん(はじめまして(^-^)POTCファンサイトでお名前よく拝見します♪)のお子ちゃま達が早く良くなりますように…。
ロチェ・ワールドは特別です
ダークでディープな世界がお気に入りで…
何と言ってもジョニーがハマり役ですね。
映画の内容は…イマイチかもしれませんが(笑)
>NIMOはリジーとのMAKE-LOVEの映像が
>なんとも切なくて、お好みです
リジーの前のロチェは違う人になっちゃいましたからね…。
なんともいえず可哀想な人ですが、
あっぱれな人生だったかもしれませんね。。
お気遣いありがとうございます。
宵子さんは映画館でご覧になったのですね
大画面は圧巻でしたでしょうね!
ジョニーの役者魂が素晴らしかったですね。
ジョニーのラブシーンは女性的なんでしょうか?
『男』という気がしません(笑)
観てるこっちの鼻息が荒くなりそうで(爆)
いえいえ、ジョニーのが大好きなんですけどね♪
優しい感じが素敵ですよね
こんばんわぁ
Reiさんのロチェへの賛辞は
読み応えがあってホント大好きです
18禁・・・いかにも。。。
>ロチェスターの不敵さと繊細さが複雑に入り乱れる眼差しは、
ジョニーの瞳をもって成し得た功績だと称えたい
このコメントには大きく頷いてしまいました
NIMOはリジーとのMAKE-LOVEの映像が
なんとも切なくて、お好みです
お母さんも色々と大変にお疲れ様でした!
リバティーン…素晴らしい映画でしたよね~
私は最後の演説のシーンに凄く感動しました
大切なのは信仰の種類ではなく王家への忠誠心なんだと言い切るロチェスターが、強くそして哀しくて何度も映画館の暗闇で涙いたしました
本当にジョニーという役者さんは凄い!と心から実感した作品でありました!
で、Reiさん
>まして鼻息の荒さなどもってのほか。
ここかなりウケました(爆笑)
作品の感想とかって大好きなんです!
また色々と読ませてくださいね!!
手を差し伸べたくなるロチェ様ですよね。
私はジェーンの立場で甘んじていいです(笑)
妻では辛すぎるかな~。。
愛人では苦しすぎるかな。
フリーダムで美味しいジェーンがいいです
私では何の役にも立ちませんが、
どうか早く元気になって下さいね。
下でもコメしましたが、本日のあやふるは、かなり落ち込んでいました。
より一層センチメンタリー…
だけど、やっぱりロチェ様サイコー
ロチェ様を助けるべきあやふるが落ち込んでなんかいられない!!(今日だけは勝手に言わさせて…)
ロチェ様が安心して永い眠りにつけるよう、心配なんてかけられない…
今宵、逢いにイキます。