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読書のよもやま(2023.10.16)

2023-10-16 | 雑文
「日本医家伝」吉村昭(中公文庫)

裏表紙から一部引用すると、江戸中期から明
治初期に現れた、日本近代医学の先駆者たち
十二人の苦闘の生涯を描くという本作。

十二人は、掲載順に山脇東洋、前野良沢、伊
東玄朴、土生玄碩、稲本いね、中川五郎治、
笠原良策、松本良順、相良知安、荻野ぎん、

高木兼寛、秦佐八郎で、一人あたりは20頁
から30頁くらいと短めになっている。

医家伝とあるが、純粋な伝記ではなく、事実
や資料を基にした小説モノとなっており、気
軽に読むことができる。

小説ならではの入りの引き込みに続き、相当
に凝縮された展開がページを進める手を早め、
あっという間に読み終えてしまった。

浅学であり、著者の作品もはじめてで、十二
人も知らない人物ばかりで、読書中の気分は
小中学生の頃のようで。

江戸中期から明治初期となれば、日本が西洋
の医学に触れ、当時の世界の標準に近づいて
いく時代であり。

人物とともに、その時代の日本の医学の状況
なども学ぶことができる。

一人目の山脇東洋は300年前の西暦18世
紀であるが、日本では解剖が禁止され、人体
の内部構造の知識も乏しかった。

そうした日本で、今のように大学で一律に学
ぶ制度もない社会で、医家は様々に独自に知
識を身に着け、それぞれの人生を生きる。

何を今更、という人に向いているとは言えな
いが、自分のように詳しくなく難しいものは
不得意な人は、間違いなく楽しめる。

創作の入るものを好まない人や、純粋な伝記
を求めて読むと、ややがっかりする可能性が
あるので注意が。

この時代に、こういう人たちがいて、今の医
学があるのだなあという、月並みだが大切な
初歩が得られる、そんな作品でおススメ。


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