~Words~

心に宿る言葉たち

生き方が“うた”になる

2006-02-15 | essay


 なんか。。。
段々とタイトルが凄いことになってると感じる今日この頃。。
ですが・・・やっぱり書かせていただきます。

佐賀には元プロの隠れ音楽人が結構居住されている。
若い頃を東京の地で過ごし、色んな想いから佐賀へと帰郷又は移住・・・
そんな音楽の大先輩たちの影響を受けていた頃の話。

『フランシーヌの場合』って昔、昔ヒットした曲知ってますか??
その歌の作曲者のK氏・・・
その方もそんな隠れ音楽人の一人でした。

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私はひょんな事から、そのK氏の元で
歌を歌う事になった。21歳の頃――

『ballad』というバーはK氏が・・・
『木の実』というスナックを奥さんが・・・
その二つのお店を行ったり来たりして、私は働いていた。

二つの店が開店する前の一時間。音楽の勉強をしたり、
歌のレッスンを受けたり・・・
世間知らずの私にとって、そんな世界の事など、これまで
考えたこともなかったので、毎日毎日が目新しい事の連続だった。

その店でJAZZと出会った。

K氏はJAZZを歌う私によく、こんな事を言っていた。

『もっとバカになりなさい』

バカになれと言われても当時21歳の私には
何がバカで何が利口なのか皆目見当もつかないことで・・

ただ、K氏の生き方を見て行く内になんとなくわかった
ような気にはなって、自分なりに“バカ”を理解していると
思っていた。そのつもりでいた。

おかしなもので、そんな世界に 惹かれ始めると
思いもよらないところから思いもよらない方々と
知り合いになるもので・・・
結構、色んな所で歌わせて貰った。

K氏の店とはまた違った雰囲気の“クラブ”で歌う時は
異様な緊張感がある。高級な客を相手にするホステスは
華やかな中にも礼儀正しく、凛としている。
どんな商売もプロとしての誇りを持っている人はかっこいい。
そう思いながらも、圧倒されっぱなしのそんな日々を過ごし、
いつもどこかで私の足らないものを探していた。

JAZZをクラブなどで歌うのはいやではなかった。
でも、なぜかいつも違和感が付きまとう。
崩せない自分が、いつもいる。
どれが誇りでどれがプライドかがわからない。

ある日、K氏が私に言った。

「これからどうするね」

プロになるのか、それとも辞めるのか。
そろそろ答えをだせと問われた。

「自信がありません」

そう、自分が発した言葉で初めて気付いた。
結局、私は状況を消化できないまま歌っていたのだった。

 

今になってようやく、分かりかけている。

私は、結婚したら、もう曲なんて出来ないのではないかと思っていた。
普通の生活の中には何も生まれないと思っていた。
だけど、それは逆だった。
事あるごとに、音楽に対する気持ちは深くなってくる。
いやいや、音楽だけではないかもしれない。

『バカになりなさい』

その言葉は、物凄く私を楽にしてくれる。
それは、生き方そのものが“うた”になる事を知っていた
K氏の最高の贈り物だったかもしれない。そう、今は感じる。