F & F嫁の “FFree World”

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小林紀子バレエ・シアター 「 マノン 」

2011年08月30日 | Ballet

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日曜日、新国立劇場オペラ劇場で開催された 小林紀子バレエ・シアター 第 100 回祝賀記念公演 「 マノン 」

F 嫁と観に行った。 会場は初台の新国立劇場オペラ劇場である。



ケネス・マクミランの 「 マノン 」 といえば英国ロイヤルバレエ前々回の来日公演、コジョカルちゃんが踊ったマノンだ。

もう 6 年前もになるのか。

2005 年 7 月 17 日に up した記事 が懐かしい。( ですます調が新鮮 )




タマラ・ロホがカルロス・アコスタと組んだ映像速品も BS で見て感銘を受けた。

どちらも独自のマノン像を構築しており見応えがあったが、「 マノン 」 という作品についてならタマラ派かな。



















GXR / GR LENS A12 28mm F2.5





小林紀子バレエ・シアターを観るのは 2008 年以来 ひさしぶり。

そのときは第 90 回の公演だった。

今回は記念となる第 100 回目の公演ということになる。




「 マノン 」 という決して上演が簡単ではない作品をこれだけのレベルでやってのけた小林先生率いるバレエ・シアターの実力に驚嘆した。




やはり極初期のものからコツコツとマクミラン作品を大切に積み上げてきたカンパニーだけある。

各論はいろいろあるが、まずはこの二日間における 「 マノン 」 公演の成功を素直に祝したい気持ちだ。
















マノン


バレエ・シアターのプリンシパルである 島添涼子さん が演じる。

演じなければならないのがマクミラン作品の難物たる所以のひとつであろう。

前回のシルフは当たり役だと書いた。

今回のマノンもゆるぎのない技術で出ずっぱりのたいへんな役を見事に踊りきった。

パートナーに恵まれたとはいえ、これだけマクミラン作品を踊れるダンサーは数多くはあるまい。




マノンとして馬車から降りてきた島添さんは小柄で、幼い印象を与えるのに成功していた。

「 マノン 」 の舞台は寝室で一瞬の愛が煌めこうと、娼館で華やかな宴が繰り広げられようと、常に陰鬱な影がつきまとう。

その中でマノンはその美しさ、幼さ故に身を滅ぼすのだ。

であるからマノンの内面には無邪気さと打算、虚実入り混じった感情 ( その時々では自分に素直であったとしても ) が渦巻く。

言葉で表すのは難しいのだが、可愛くて技術が素晴らしいだけでは… なにかしらのひっかかりが欲しいもの。

こうしてみるとマノンという役はほんとうに難しい。




「 マノン 」 をキチンとした形で上演できるカンパニーは多くないし、映像作品としても非常に少ないのが現実だ。

いきおい我々はロイヤル・バレエのそれと比較することになる。

いい意味でコッテコテの英国物語バレエの主役を張る面々と、島添さんのアプローチは異なるように思えた。

寝室のパ・ド・ドゥはふたりの思いがぶつかり合い高みに昇り詰める素晴らしいシーンだが、ここ一番というところで

感情の爆発が少し薄いような気がした。

もちろんテクニックは磐石で揺るぎないものだが、デ・グリューが思い切った感情をぶつけてくるのに対しややバランスを欠いたか。

床に寝転んだ時も、デ・グリューの手が待ち切れないと言わんばかりに背中を思いっきり浮かせて欲しいのだ。

うむむ、やはり濃いメンツを観過ぎだろうかw












デ・グリュー


そのデ・グリューはゲスト・プリンシパルの ロバート・テューズリー が踊った。

さすがにやや年齢は感じさせるが、長身でハンサム。

彼ほど世界中のカンパニーにゲスト出演している有力ダンサーは他にいないだろう。

マクミランの 「 マノン 」 におけるデ・グリュー役もお手のものであろう。

小林紀子バレエ・シアターとの関係も深く、日本人キャストの中に入ってもさほど浮くことがない。

身長差のある島添さんを上手くリードしていたと思う。

流刑地での汚れっぷりには驚いたが。

史上再汚のデ・グリューだったのでは?













GXR / GR LENS A12 28mm F2.5














レスコー


個人的にこの舞台における最大の違和感。

冒頭、真っ暗な舞台中央にスポットが当たり、レスコーがひとり座しているオープニングは傑作だと思うが、

ここであれ?? っと思ってしまった。

レスコーが発する禍々しい負のオーラが見えなかった。

いやレスコー役の 奥村康祐さん は熱演だった。

ただいかにも若すぎた。

デ・グリューを巻き込んで悪辣な思いを巡らすオトコにしては爽やか過ぎたと思う。

素晴らしいダンサーだけに別の役でも見たかったと思う。
















ムッシュ G.M.


最初に登場したときは外国人ゲストかと思った。

後藤和雄さん の彫りの深いハンサムな顔立ちはそう思わせるだけの雰囲気があった。

慇懃な金持ちを素敵wに演じていた。

ただマノン、レスコーとともに踊る寝室のトロワ?では、もう少しねっとりじっとりと睨めつけてほしい。

脚をイヤらしく撫で回してほしい。

観ているこちら側がこのおやじマジでヤバイんじゃ? とハラハラするくらいに。














マダム


個人的にたいへん印象に残った。

大塚礼子さん 演じる高級娼館のマダムは見事だった。

G.M. の後藤さん同様、日本人離れしていた。

パンフレットを拝見すると素顔はとても可愛らしい方だが、バターかしょうゆで言えば完全なるバター。

それが重厚なメイクと衣装を身につければ、完璧なやり手ババアへと変貌を遂げる。

いかにも多数の娼婦たちを仕切っているという雰囲気を発しながら豪快に笑う。

主役クラスが巧いのは当たり前。

こういった脇をギュギュッと締められる役者がいるカンパニーは強い。
















バレエ・シアター


多様な役が存在する 「 マノン 」

舞台の隅から隅まで様々な役柄の人々がそれぞれの演技を行う。

娼婦、買いに来た客、街の人々、乞食たち。

それぞれをバレエ・シアターのダンサー諸氏、諸嬢は生き生きと演じていた。

後方の後方でやや棒立ち気味の方も見られたが、本家の過剰なまでの芝居を見慣れているからか。

物語バレエでは、脇の方々の演技が楽しくてセンターを見逃すこともしばしばだ。




第 1 幕で登場し、本当の意味での鼻つまみ者とされる Rat Catcher ( ネズミ捕り ) という男。

終幕の回想シーンにまで登場するが、なにかの暗喩だろうか。

気になる。

















舞台装置・衣装


両方とも オーストラリアン・バレエ から借用したものだという。

同団から装置担当者が来日し、舞台組みを監督したというから本気だ。

本家ロイヤル・バレエほど重厚長大ではないものの、ほどよく簡素で落ち着いた舞台装置だった。

シンプルなだけにより主体がハッキリするという副次的効果もありか。

ただ船着場のシーンだけは、舷側を模した高さからスロープを降りてきて欲しかった。




背景の窓を使い、その奥でも芝居をさせる演出は見事だった。

特に手紙を出し終えたデ・グリューがレスコーに言いくるめられている背後、

窓の外には着飾って馬車に乗り込むマノンの姿がしっかりと見えていた。

ただこれは 1 階席、せいぜい 2 階席くらいまで、しかも限られた角度からしか見えないかもしれない。













小林紀子先生


F 嫁曰く 「 素敵だわ~ 」

開演前、休憩中、ホワイエで関係者と談笑する小林先生はとてもエレガント。

しかしレッスンでは日本屈指の厳しさで知られるという。 

マグマのような情熱をもって指導されるのだろう。

でなければ自身の名を冠したカンパニーをここまで引っ張ってこれるわけがない。

今後も変わらぬご活躍をお祈りします。




休憩時には売り切れてしまったプログラムにおける小林先生が振り返る100シーズン

というインタビュー記事はたいへん興味深く必見。


















GXR / GR LENS A12 28mm F2.5










第 100 回祝賀記念公演 と銘打った、節目にふさわしい素晴らしい公演だったと思う。

ホワイエで目撃したが、縁のある小野絢子さんをはじめ新国のダンサーの方々が何人も観に来ておられた。

来季 「 マノン 」 を上演する予定の新国立劇場バレエ。

小林紀子バレエ・シアターが成し遂げたこの 2 日間は、彼らにとってたいへんなプレッシャーとなるだろう。

















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