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6 月 4 日土曜日、F 嫁と渋谷オーチャードホールに K-Ballet 「 ロミオとジュリエット 」 を観に行った。
ウチは何回か K-Ballet の舞台を観ているが、そのほとんどが非御大の日である。
F、F 嫁ともに 浅川紫織ちゃん のファンだというのがその理由だ。
この日も紫織ちゃんがジュリエットデビューするというので、御大/マルケスという誰もが期待するソワレをあえて外し、
マチネの公演にやってきたわけだ。
数日前まで上着が必要だった気温が一気に上昇し、この日の渋谷は夏日。
ただでさえ苦手な渋谷という街が余計に厳しく感じる。
トップ写真はほぼ正午の渋谷スクランブル。
オーチャードまでの道程が長いこと。
GXR / GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO
直射日光は暑いがホールの入り口は日陰で風が通り抜け、緑も目にやさしく気持ちいい。
写真は当日券売り場前の階段に腰をおろし、VIRON 渋谷で仕入れてきたキッシュを頬張る F 嫁。
開演約 1 時間前に到着し、ずっと窓口の前に座って待っていたのには理由がある。
無事に舞台を鑑賞出来たから告白するが…
じつはチケットを紛失したのだ!!
オンラインでポチッとしたのが今年の 1 月 23 日。
チケットが自宅に郵送されてきたのが 2 月 1 日。
間の悪いことに 2 月 1 日は、めったに決意しない自宅の大掃除を断行していた珍しい日だった。
ウチでいちばん大きなクローゼットの中身はすべてリビングにぶちまけられており、通販で購入した整理棚の組み立て、
衣類の仕分けと整理、溜まりに溜まった雑誌類の破棄など家中がカオスの中にあった。
そこに宅配便でチケットが届いたらしいが、 F も F 嫁も記憶が完全に欠落している。
その後震災の混乱もあり、チケットのことなどすっかり忘れていた。
3 月も下旬になってようやく気持ちに余裕が出てきたとき、K-Ballet のチケットが無いことに気づいた。
探しに探したがどこにも見当たらない。
おそらく当日でた大量にゴミにまぎれて排出されてしまったのだろう。 痛恨の失態‥
あわててチケットスペースに連絡し、事情を説明した。
担当の方はウチへの配達記録が間違いなくあると確認した上で、開演 5 分前になって当該席に誰も座っていなかったら
我々の入場を許すとのこと。 まぁ仕方ない対応だろう。
クレジットカードの記録とチケット購入履歴確認書をブリンとアウトして待つ。
誰も座ってないだろうとは思いつつもドキドキ。
ほんとうに 5 分前、スピーカーで 「 ◯◯さ~ん!! 」 と呼ばれ少々恥ずかしかったが無事に臨時チケットを入手できた。
GXR / GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO
珍しい手書きのチケット。 F & F 嫁とも反省しきりである。
チケットスペースの I さん、N さん、たいへんお手数をおかけしました。
ジュリエット
というわけでイントロダクションがやたら長くなってしまったが、浅川紫織ちゃん が全幕で初めて踊るジュリエット。
素晴らしいパフォーマンスだった。
ファンならではの身贔屓を差し引いても。
比較的紫織ちゃんには厳しい F 嫁もこの日の踊りは絶賛。
以前は全幕の主役だとどこか心許ない部分が見られたものだが、ジュリエットは堂々の踊りと演技。
ジュリエット登場の場面では溌剌としていながら幼い雰囲気をよく出していた。
ある程度体格があるダンサーの場合、幼いジュリエットのピョンピョン跳ねるような動きは苦手な場合があるが、
紫織ちゃんはこちらがオヤッ?と思うほど動きがよかった。
パリスとの結婚話に戸惑う演技、そしてその焦燥感の中でロミオと出会う舞踏会。
それぞれ説得力のある演技であり、踊りであった。
ジュリエットは合っているのではないか。
「 ロミオとジュリエット 」 の白眉であり、単独でも有名なパ・ド・ドゥであるバルコニーシーン。
紫織ちゃんの踊りは美しかった。
メリハリのある回転が素晴らしい。
昔の紫織ちゃんはどちらかといえば回転系は不安定だった。
そして鋭い身体のキレ。
決して鋭利はならないが、動きをテンポよく見せている。
もともと身体能力が高いダンサー。
心技体が融合しつつあるのを感じる。
そしてこんなにも 背中で語れ るようになっていたのか‥
高々とリフトされるところや、ロミオに身体を預けて反るポーズ。
まったく安心して観ていられる=ふたりが紡ぐ物語に没入できるということは素晴らしい。
第1幕の終焉を飾るにふさわしい見事なパ・ド・ドゥだった。
床に突っ伏して泣き崩れる場面はとてもよかった。
全体的に泣くシーンは多いのだが、紫織ちゃんのそれはわざとらしくならずに自然体だった。
ツアーで 1 日だけのジュリエット。
1 発勝負でここまでのジュリエット像を創り上げた紫織ちゃんの成長を実感できる舞台であった。
注文がないわけではない。
たとえばロミオとともに一夜を過ごした翌朝。
立ち去ったロミオを涙で見送ったジュリエットが、キャピュレット卿に結婚話を詰められ切羽詰まって教会へと疾走するシーン。
当然あの状態で家を抜け出すのには勇気がいるわけで、多少の逡巡がほしいところ。
いきなりマントをなびかせて駆け出すのではなく、その前に少しだけ間が欲しかった。
そして薬の瓶を枕の下に隠し、パリスとの結婚を受け入れると言ってからの表情。
パリスと踊る際も眉根を寄せて嫌という表情だけではなく、ここではある種の 「 無表情さ 」 があればいいと思った。
もうパリスも父親であるキャピュレット卿でさえも目には映っているけれど感じられない。
心にあるのはロミオだけ…と決意する静かなたたずまいは素晴らしかったが。
ロミジュリ落涙ポイントである、ロミオの死を知ったときの絶叫。
前後の流れは素晴らしかったが、肝心の絶叫時に上 ( というか後ろに近い ) を向いてしまい、表情がわからなかったのが残念。
最後、安置台ではなく墓室の床で果てる場面はとてもよかった。
演出としては素晴らしいが安置台から反るよりも、この方が自然で好きかもしれない。
初役のジュリエットを演じきった紫織ちゃん。
とても成長した姿を観ることができた。
僭越ながらカーテンコールではブラヴォー!!を。
立場は人を育てるというが、プリンシパルとなって一層精進したことだろう。
マチネでジュリエットを踊り、そのままソワレのロザラインという過酷な土曜日だったが、それらもすべて糧となろう。
地方公演はどうしても御大中心になってしまうが、紫織ちゃんにも踊らせてあげて。
我々が思っていたよりずっとずっとジュリエットは当たり役だった。
しかし約 1 年前に確立した F & F 嫁の ジュリエットスタンダードは限りなく高い
役に対するアプローチは人それぞれだろうが、その高みに近づけるように今後も頑張ってほしい。
ソワレにも役がついているということで、終演後も楽屋口からは出てこないだろうと判断。
F 嫁の意見でお花を贈ることにした。 ( 荷物になってすみません )
GXR / GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO
文化村1階の花屋さんで素敵なアレンジメントを購入した。
紫織ちゃんに雰囲気合っていると思わない?
F 嫁がメッセージカードを書き、会場入口で係員の方に託した。
ジュリエットお疲れさまでした。
次に踊る機会があれば、必ず観たいと思います。
9 月 29 日の 「 白鳥の湖 」 もチケット押さえたので頑張れ~!!
ロミオ
遅澤佑介さん はティボルトが当たり役と言われていたが、ロミオもなかなかいける。
ちょっとトッポいお兄ちゃんという雰囲気で、決して直情型ではない。
彼なりのロミオ像なのだろうが、バルコニーなどではもうひとつ情熱が伝わりきらなかった感あり。
ただ早く回り高く翔べば‥ということではなく、身体から発散する熱とでも言うべきだろうか。
こればかりは言葉にするのが難しい。
意外によかったのがロザラインとの絡み。
年上のお姉さんに甘える弟分みたいな雰囲気が上手い。
そしてジュリエットと出会い等身大の恋に目覚め…となるはずが、ジュリエットの急激な成熟に追い越されてしまった感じ。
紫織ちゃんとのパートナーシップは破綻なく上手くまとめていた。
最近共演の機会が増えているが、ロミオとジュリエットとしてもっともっと踊り込んであうんの呼吸を育てて欲しい。
しかしティボルトでも観てみたいなぁ。
ティボルト、マキューシォ、ベンヴォーリオ、パリス
某発表会などで拝見し、我々の中ではとても “ いい人 ” の ビャンバ・バットボルトさん がティボルトを演じおもしろかった。
憎々しげな雰囲気などは少ないものの、端正な悪役という感じ。
西野隼人さん 、秋元康臣さん のマキューシォ、ベンヴォーリオでは、特に秋元さんの足先の美しさが目を引く。
おふたりとも若々しく、K-Ballet の未来を背負って立つ存在になろう。
若手…といえば、浅田良和さん をマンドリンダンスで使うのはもったいないなぁ~
宮尾俊太郎さんの当たり役といえばパリス。 失礼ながらそう思っていた。
ところが今回別の日に宮尾さんのロミオを観た信頼できる方の情報によれば、ロミオもかなりよかったらしい。
9 月の白鳥ではジークフリードとして紫織ちゃんを頼むぞ!!
ロザライン
K-Ballet のロミジュリの特徴的な存在であるロザライン。
松岡梨絵さん は圧倒的に巧い。
やはり踊りの他、表情ひとつで演技できるひとは強い。
冒頭のロミオを翻弄する視線。
モンタギュー家の女たちとの諍いでみせる怒り。
キャピュレット家の舞踏会で見せる高慢。
その舞踏会に潜入した三人組に気づいたときの絶妙な表情。
そしてロザラインの見せ場といもうべき、ティボルト刺殺のシーン。
ロミオに刺されて苦しむビャンバさんより、階段上で悲劇に気づき駆け下りてくる松岡さんから
双眼鏡が離せなかったことを告白せねばならない。
今回のツアーはロザライン役だけだが、その存在感はさすがだと言わざるをえない。
キャピュレット夫人
キャピュレット卿を演じるスチュワート・キャシディさんについては、もう重鎮だし超がつくほど安定感があるが、
驚いたのは 松根花子さん 演じるキャピュレット夫人。
この日のマチネ、すべての中でいちばんのインパクトがあったという感想は F & F 嫁共通のもの。
とにかくキャシディさんに負けていないその存在感が凄い。
高貴、威厳というものを立役で表現できる日本人にしては珍しいタイプではないか。
モンタギュー夫人と並びたって視線を戦わせるシーンがあるが、0.5 秒で圧勝という感じ。
まだファーストアーティストでお若いと思うが、このキャラクターは貴重だ。
松根さんが踊られているところをじっくり観たことはないが、がぜん今後が楽しみになってきた。
地方公演で松根さんがロザライン、紫織ちゃんがキャピュレット夫人を演じた日があったようだが観たかったな~ ものすごく!!
紫織ちゃんのジュリエットと並ぶともう少しだけ上背に差が欲しい感はあるが、たいへん素晴らしいキャピュレット夫人だった。
ブラボー!!
GXR / GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO
この日のオケは大きな破綻もなく頑張っていた。
福田先生の指揮もあいかわらずよく舞台が見えている。
そしてあらためてプロコフィエフの音楽のすばらしさを実感した。
K-Ballet の 「 ロミオとジュリエット 」 はプロダクションとして洗練されていて好きだ。
休憩 1 回の全 2 幕でジュリエットとともに観客も駆け抜けるのである。
ソリスト以上だけでなく、K-Ballet 全体としてレベルアップされてきていると感じる。
群舞も魅せるし細部にこだわる御大らしく、舞台の隅々まで計算され演技されている。
ただし男性陣の充実ぶりに比して、ファンとしては女性陣全体の底上げをもうひとつ求めたい。
男性ダンサーにとっては御大という明確で巨大な目標があるのに対して、女性ダンサーはどこに向かっていくべきか
方向性がハッキリしていないのではないか。
そして階段をスッ飛ばして昇進し、現プリンシパルたちが驚異に感じるくらいの新人ダンサー求む。
カンパニーがステップアップするためには、男女を問わずそのような存在が必要だ。
久しぶりの K のロミジュリをたいへん楽しむことができた。
次に K-Ballet を観るのは、秋の 「 白鳥の湖 」 である。
赤坂サカスのくるみはどうしても好きになれないので申し訳ない。
文中の通り 9 月 29 日という紫織ちゃん-宮尾さんの日で御大ではない。
GXR / GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO
偶然にも本稿執筆中にチケットスペースから佐川急便で白鳥のチケットが届く。
こんなデカイものをどこにやってしまったのだろう。
今度はなくさないように厳重に保管しておこう。
さて、渋谷でバレエといえば、その後の VIRON ( この夜も紫織ちゃんだったなぁ ) はお約束だったが、この日は F に腹案あり。
渋谷駅を経由して猿楽町までテクテク歩いた。
そこで出会った美味しいものに関してはまた後日
※ 2014 年の 「ロミオとジュリエット」 についてはこちら
オーチャードの1階前方席は懲りました。
以来、2階のサイドバルコニー席狙いです。
ここは意外と舞台から近いし好きなんです。
コジョカルちゃんのジュリエットは素晴らしかったですが、パートナーがコボーだったら‥といまだに詮ないことを考えます。
まぁあれ以上に完成度が高い舞台になったのは間違いなく、そうするとさらにハードルが上がっちゃいますがね。
7月頭には新国のロミジュリも予定しており楽しみです。
ウチはK-Balletファンではありますが、ダンサーとしての熊川さんには興味がありません。
しかしカンパニーを統べる者としては関心を持って見ています。
再三書いていますが熊川さんダンサー引退後のK-Balletにはワクワクドキドキします。
紫織ちゃんの白鳥も楽しみですが、宮尾さんがどれほど成長したのか(してないのか)にも注目しています。
ABTはホセの東京フェアウェルのドン・キただ一日です。
徐々にエンタメ公演も以前にもどりつつありますが、夏~秋以降も無事に開催にこぎつけてもらいたいと心から願っています。
私オーチャードでバレエ観賞したことはありませんが、傾斜が緩くてバレエ観づらくないですか??そして私もオーチャード行く時はVIRON寄りますよ(笑)
1年前に確立したジュリエットスタンダードは限りなく高い>
これってコジョカルちゃんだよね?!と思ったらやはり(笑)コジョカルは素晴らしかったですね~。私はバレエを観てあんなに泣いたのは初めての体験でした。
遅沢さんのロミオそれなりに良かったのですね^^コッペリアでジプシーを演じていた遅沢さんの動きがすごく良かったので、遅沢さん主演の舞台も観てみたいなぁと思いつつ結局熊川さん主演日のチケを取ってしまう私です…。
私も熊川デーですが(笑)白鳥観に行きます。志織さんのオデットレポ楽しみにしていますね!!ABTも行かれますよね?ABTもkも今から楽しみです☆
紫織ちゃんはもともとロザラインがスタートでしたから、それなりに数は踊っているはず。
Kのロザラインはやりがいのある役ですね。
私もダンサーとしての熊川さんにはさほど興味がないので、
彼が芸監に専念するようになった後のKに期待と関心があります。
プロデューサーとして古典をリフレッシュする手練には一目置いています。
許されるのなら他のマクミランものも期待したいところです。
紫織さん、華のあるロザラインでした。
Fさんの前情報がなければ「あの人誰だろう?」
とチェックしていたと思います。
全体を通して、マクミラン版というもはや決定版のようなものがあるのに
そんなに抵抗なく観られ、熊川さんてすごいなあと思いました。
Fさんのおっしゃるよう、ラストシーンは自然で感情移入しやすかったです。
ロミオの手を剣に添えて……というところも好き。
やっぱりKバレエは結構いいな~と思ったのでした。
ご無沙汰しております。
コメントありがとうございます。
ウチは紫織ちゃんの日ばかりなので、熊川さんはほとんど観たことないんです。
マルケスとのパートナーシップは素晴らしかったようですね。
紫織ちゃんのロザラインもツアー中に観たかったです。
公演期間の中で複数回、主役が踊れるように今後も頑張ってもらいたいと思います。
またお気軽にお立ち寄りくださいね!!
私は同日のソワレを見ました!
もちろん、主役のお二人は本当にすばらしくすてきで、瞬きするのももったいないくらいで、食い入るように見入ってしまいました。
今更ながら、熊川さんて偉大だな、としみじみ思いました。
浅川さん、キラキラ光ってました。
本当に成長されたな、と思いました。
存在感がぐ~んとアップした、というのでしょうか。
しかも、瑞々しいロザラインでした。
これから楽しみですね。