経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

猛暑が 景気を危うくする? (下)

2018-07-26 08:01:30 | 電気料金
◇ 原油価格+猛暑+政策の失敗 = 電気料金の値上げは、原油やLNG(液化天然ガス)の輸入価格が上がったためだと説明されている。しかし、この説明は正確ではない。太陽光発電などを強制的に買い取らされた電力会社が、この分を料金に転嫁しているからだ。標準家庭の電気料金は大震災前に比べると月1400円ほど値上がりしているが、その半分が強制買い取りの転嫁分だ。

経済産業省は太陽光発電の普及を促進しようと、電力会社に強制的に買い取らせる制度を12年に導入した。ところが、その買取価格を大規模事業者の場合1㌔㍗時=40円という法外な値段に設定。このため買い取り費用は、17年度で2兆7000億円にも達している。このうち2兆1000億円が、電気料金に転嫁された。

これでは電気料金が上がるばかり。自らの失敗に気付いた経産省は、買い取り価格を下げ続け、18年度は18円になっている。しかし、こんどは価格が安すぎて、コストの高い日本企業は参入するのが難しくなってしまった。その間隙を突いて、コストの安い外国企業が日本の太陽光発電市場を占拠する勢い、というのが現状である。

原油の国際価格上昇が、電気料金の値上がりに直結することは確かだ。それに経産省の“失政”が加わったことも事実。さらに歴史的な猛暑によって、電力の使用量が膨張する。その結果、家計の不可避的な出費がかさむと、家計は秋以降その分を埋め合わせようと努力する。それがどの程度の規模になるかは即断できないが、個人消費を減らして景気の足を強く引っ張る危険性もないではない。

       ≪25日の日経平均 = 上げ +103.77円≫

       ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ


猛暑が 景気を危うくする? (上)

2018-07-25 08:57:17 | 景気
◇ どんどん上がる電気・ガス代 = 電気・ガス料金の値上げが止まらない。大手電力8社と都市ガス4社は、8月も料金を引き上げると発表した。たとえば東京電力の場合、標準家庭の電気料金は月額7015円に。前月より37円高くなる。これで値上げは7か月連続。東日本大震災の前に比べると1400円、率にして25%も上昇することになる。

値上げの理由は、原油やLNG(液化天然ガス)の輸入価格が上がったため。8月の料金は3-5月の輸入代金を反映して決められるが、この期間の輸入価格はOPEC(石油輸出国機構)の生産調整などで上昇した。この傾向は6月になっても続いたから、9月も電気・ガス料金が引き上げられることは間違いなさそうだ。

電気・ガス料金の引き上げは、企業の経営や家計のやりくりに直接影響する。特に電力消費型の中小企業には、大きな痛手になりやすい。また一般家庭もその分の出費増加を、どのようにして埋め合わせるか。他への支出を節約するか、貯蓄を取り崩すか。これだけ電気・ガス料金が高くなると、家計への影響も決して小さくはない。

加えて、この猛暑である。気象庁が「熱中症を防ぐために、クーラーを付けてください」と、呼びかけているご時世だ。一般家庭の電力・ガス使用量は、それこそウナギのぼりに増えていることだろう。当然、支払う料金には値上げ分だけでなく、使用量の増加分も含まれてくる。秋以降、家計がその分の埋め合わせを始めると、個人消費が減って景気に注意信号が灯る危険性が生じても不思議ではない。

                                (続きは明日)

       ≪24日の日経平均 = 上げ +113.49円≫

       ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ


トランプ大統領が 口先介入

2018-07-24 07:21:25 | 円相場
◇ 支離滅裂は承知のうえ = トランプ大統領がとうとう、金利や為替にまで口先介入を始めた。まず先週19日には、テレビ番組で「金利が上がるのは好きではない」とFRBの金融政策を批判。ツイッターでも「金融引き締めは、われわれが成し遂げてきたすべてを傷つける」とフォローしている。さらに20日はツイッターで「中国やEUは通貨を操作し、金利を低くしている」と、為替相場にまで言及した。

もともとトランプ大統領は、不動産業で成功した人。したがって高金利やドル高は、昔から商売の敵であったに違いない。だから思わず本音が出たとも言えるが、大統領としてFRBを批判するのはニクソン大統領以来のこと。決して褒められたことではない。また中国やEUを名指しで非難したことも、大人げない態度だと受け取られている。

ただ大統領の発言は、それなりに影響力を持っている。この2日間の発言で、ドルは各国通貨に対して下落。たとえば円の対ドル相場は、発言前の18日朝は113円台だったものが、19日夜には111円台に急騰した。しかし市場は、ドルの下落がこの先も続くと考えてはいない。トランプ大統領の思考は支離滅裂で、説得力に欠けるからである。

トランプ大統領はアメリカの景気回復を目指して、大幅減税とインフラ投資を実行した。その効果が出て、経済は長期にわたって拡大を続けている。するとドルは強くなり、物価は上がる。またトランプ大統領が始めた貿易戦争も、物価高を招きそうだ。したがって金利の上昇もドル高も、実は大統領自身がタネを播いたことになる。だから大統領の言動は自己矛盾、支離滅裂。大統領自身もそれを承知のうえで発言している、という見方が強い。

       ≪23日の日経平均 = 下げ -300.89円≫

       ≪24日の日経平均は? 予想 = 上げ


今週のポイント

2018-07-23 07:17:56 | 株価
◇ 短期は買い、長期は警戒 = アメリカ経済は、いぜん順調な拡大を続けている。特に注目される小売り売上高は6月も前月比0.5%の増加、これで5か月連続の増加となった。4-6月期の企業決算も予想以上の成績。なかでも大手銀行の利益が大幅に増えている。ただ半面、貿易戦争の影響には警戒感が強まった。このためニューヨーク株式市場では長期投資が手控えられ、投資ファンドによる短期売買が主流となっている。ダウ平均は先週39ドルの値上がり。

日経平均は先週101円の値上がり。割安感から外国人投資家の買いも入ったが、円相場が1円ほど上昇したことが相場の頭を重くした。またアメリカが自動車の輸入関税を、ほんとうに引き上げるのかどうか。市場にとっては、その見極めがしだいに重要な問題になってきている。

そこへまた新たな一石。トランプ大統領は先週末、得意のツイッターでFRBの利上げ政策を「好ましくない」と批判した。この影響でFRBが利上げのテンポを落とすと考えられれば、円高要因になる。逆にインフレが進むと予想されれば、円安要因になるだろう。今週は日米の市場が、その答えを探ることになりそうだ。

今週は26日に、6月の企業向けサービス価格。27日に、7月の東京都区部・消費者物価。アメリカでは23日に、6月の中古住宅販売。25日に、6月の新築住宅販売。27日に、4-6月期のGDP速報が発表される。

       ≪23日の日経平均は? 予想 = 下げ


新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-07-22 07:10:05 | SF
第5章 ニッポン : 2060年代

≪42≫ 驚愕の提案 = 「やあ、元気そうだね。きょうは大事な話をするから、よく聞いてくれたまえ」
ウラノス博士は開口一番、こう切り出した。白髪に丸顔、低くて柔らかい声。最初に会ったときと、ぜんぜん変わっていない。ただ変わったのは胸のプレート番号。≪12≫から≪07≫に変わっている。ああ、あれから5年もたったんだ。

「以前に『君にはやってもらいたいことがある』と言ったのを覚えているかな」
――もちろん、よく覚えています。でも何をすればいいのか、いまだに全く判りません。博士の頼みならばどんなことでもやるつもりですが。

「よろしい。君には地球に帰ってもらいたいのじゃ。そして地球の人類にも、われわれダーストン人のためにもなる仕事を始めてもらいたい」
――えっ、そんなことが、ぼくに出来るんですか。

「われわれの予測だと、地球人は再びエネルギーで大問題を惹き起こす可能性が高い。たとえば、われわれの祖先が使用済み核燃料の処理で失敗したようにな。すると地球人はまたまた脱出先の星を探して、このダーストン星を発見するかもしれない。わしらの賢人会は、そんな事態を未然に防ごうと考えたんじゃ。
君もよく知っている例のダーストニウム合金を、地球上の国に普及させる。そうすれば太陽光発電だけで、エネルギーを賄うことができ、不測の事態は起きんじゃろう」

――びっくりして、心臓が止まりそうです。なるほど、考え方はよく解りました。しかし、ぼくにそんな能力はありませんよ。また、ぼくが日本に帰っても、航空自衛隊には戻れないでしょうし、親類も友人もいません。

「大丈夫。われわれがすべて計画を練り上げる。君は指示通りに動いてくれればいいんだ。それに補佐役兼連絡係として、このマーヤを付けてあげる。君さえ決心してくれれば、あと半年の間に宇宙船を造り、マーヤを日本人の女性に改造する」

正直に言って、この提案を受け入れるのは、とても不安だった。その半面、日本のいまの様子を知りたいという気持ちも強かった。そんな心の葛藤を破ったのは、マーヤを連れて行けるという博士の発言。十分に計算したうえのひと言だったに違いない。そっとマーヤの横顔を覗き込んだが、表情に変化はなかった。

                              (続きは来週日曜日)


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