経済なんでも研究会

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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-07-15 07:43:00 | SF
第4章  錬 金 術 と 太 陽 光

≪41≫ 別世界? = たしかに、この国は住みやすい。だいいち働かなくても、結構な暮らしができる。おカネの心配もない。病気やケガは完全に治してくれて、100歳までの健康が保障されている。喧嘩や犯罪もない。人々は自分の好きな道を選んで、生きがいを感じているらしい。

でも、それだけに刺激というものが全くない社会でもある。最初のうちは「他人と競争しようなんて思わない」とか「現状に不満なんてない」といった人々の声を聞くと、ぼくは疑ったものだ。突如として出現した地球人に、強がりを言っているのではないか。そんな風に感じていたことは、否定できない。

ときどき、わが愛するマーヤにも聞いてみた。だがマーヤは常に「人々の言うことに嘘はないでしょう」と断言していた。このロボットと人間との関係も判りずらい。ぼくが地球で知っていたロボットは生産工場で人間の代わりをしたり、会社やホテルで受付の業務をこなしたり。まだ進化した機械に過ぎなかった。それが、ここでは人間と変わらない肢体を持ち、人間以上の知能を有し、社会では人間並みに扱われている。

だがダーストン星に5年も住み着いてみると、ぼくの考え方もは変わってきた。ここの人たちは、どうも心の底から現実を受け入れているようだ。そんな感じが次第に強くなってきた結果、最近では「それがダーストン人なのだ」と思うようになっている。この人たちは、こういう環境で生まれ育った。だから200年以上も前の競争的な人生や戦争や犯罪が多発した社会のことは、教科書でしか知らないのだ。

ところが、ぼくはつい数年前まで、実際にそういう社会に住んでいた。そのギャップは限りなく大きい。もし、ぼくがこの星にずっと住み続けるとしたら、多分そういう人生観に変わって行くのだろう。だが、どうしても理解できないことが1つある。

それはダーストン国というのは、地球とは完全に違う『別世界』なのか。それとも『地球も200年すれば、この国のように変わって行くのか』という大いなる疑問だ。この大問題は、おそらく賢人たちに聞いても判らないだろう。そうして、こんな問題に頭を悩ませている日本人が、4.2光年も離れた星で暮らしている事実を、地球上ではだれ一人として知らない。こう考えると無性に寂しくなって、思わずマーヤの手を握りしめた。

そんなとき、賢人会のウラノス議長から連絡があった。真剣な顔をしたマーヤが「重要な話をしたいので、あした来てくださいと言ってます」と告げた。

                            (続きは来週日曜日)


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