貫之集 536
よのなかは かくこそありけれ ふくかぜの めにみぬひとも こひしかりけり世の中は かくこそありけれ 吹く風の 目に見ぬ人も 恋ひしかりけり 世の中とはこのようなものだ。吹く風が音
貫之集 535
やまざくら かすみのまより ほのかにも みしばかりにや こひしかるらむ山桜 霞の間より ほのかにも 見しばかりにや 恋しかるらむ...
貫之集 534
恋こえぬまは よしののやまの さくらばな ひとづてにのみ ききやわたらむ越えぬまは 吉野の山の 桜花 人づてにのみ 聞きやわたらむ...
貫之集 522
こゑたかく あそぶなるかな あしひきの やまひといまぞ かへるべらなる声高く 遊ぶなるかな あしひきの 山人いまぞ 帰るべらなる...
貫之集 506
かみなづき しぐれにそめて もみぢばを にしきにおれる かみなびのもり神無月 しぐれにそめて もみぢ葉を 錦に織れる 神南備の杜...
貫之集 489
みよしのの よしののやまに はるがすみ たつをみるみる ゆきぞまだふるみ吉野の 吉野の山に 春霞 立つを見る見る 雪ぞまだ降る...
貫之集 459
道行く人、川のほとりに鶴群れゐたると見るよそなれば みぎはにたてる あしたづを なみかゆきかと わきぞかねつるよそなれば みぎはに立てる 葦田鶴を 波か雪かと わきぞかねつる...
貫之集 442
やへむぐら しげくのみこそ なりまされ ひとめぞやどの くさきならまし八重葎 しげくのみこそ なりまされ 人めぞ宿の 草木ならまし...
貫之集 431
はるすぎて うづきになれば さかきばの ときはのみこそ いろまさりけれ春すぎて 四月になれば 榊葉の 常盤のみこそ 色まさりけれ...

三輪田米山の書9.紀貫之『ちはやふる』
私の持っている三輪田米山の書の中で、一番、年老いた時の作品です。 『ちはや布留神乃い可幾尓はふくつも 秋丹ハあへす...
貫之集 397
八月十五日夜ももとせの ちぢのあきごとに あしひきの やまのはかへず いづるつきかげ百年の 千々の秋ごとに あしひきの 山の端かへず 出づる月影...