一 閑 堂

ぽん太のきまぐれ帳

江戸小紋

2005年02月18日 | 江戸の夢
昔から江戸小紋が好きだ。
幼い頃、女性より男性のきもの姿に親しんだせいだろうか?
「きれい」「かわいい」より「かっこいい」を好む志向がある。
その私にとって、武士の裃柄から発した江戸小紋は、その発展の仕方と共に江戸の粋であり、永遠の憧れである。

別ページに、簡単な江戸小紋文様集をつくった。
こちら も参照してほしい。

江戸小紋は、大きくわけて二種類。
武家社会の制服としての「裃小紋」と、町人オリジナルの「いわれ小紋」がある。

「裃小紋」は、原則として特定の家中にしか許されていない留柄であり、これを「定小紋」とも呼ぶ。
例をあげると、徳川家の『松葉』(御召小紋)『十字』(御召十)、紀州徳川家の『極鮫』、加賀前田家の『菊菱』、武田家の『武田菱』、鍋島家の『胡麻』、島津家の『大小霰』『鮫』、細川家の『梅鉢』などだ。
今でも格が高いとされる柄はこれら「定小紋」であり、中でも「三役」と呼ばれているのが「鮫」「行儀」「角通し」の三つ。紋を入れれば礼装になる特別の柄である。

「いわれ小紋」は、その名の通り地口(駄洒落)や吉祥紋などを組み合わせた、町人文化ならではの柄。
道具などの日用品を図案化したものでは、たとえば、『魚に包丁』『下ろし金に大根』『はさみ』『斧』『宝づくし』『宝珠に鍵』『扇子』『矢車』『旗指物』などがある。
文字そのものを図案化した柄は、『寅の字』『辰の字』をはじめ、『家内安全』『江戸京大阪』『雪月花』『十二干支』などなど。
またいわゆる縁起ものやげんかつぎとしては、『竹に雀(良縁)』『南天(難を転じる)』『六瓢箪(無病)』などがあり、その柄は数えきれない。

この他江戸小紋には、古来から今に伝わる、自然風物や生物を図案化した「自然柄」も数多くある。
『唐草』『麻の葉』『竹』『梅』『桜』『菊』『紅葉』『露芝』『流水』『渦巻』『青海波』『波頭』『波に千鳥』『亀』『立涌』『霰』とこれもキリがない。

そして、なんといっても極め付けが「縞」だ。
千筋・万筋・毛万筋はもちろん、さまざまなバリエーションの縞ものがある。


これら天文学的数に達する江戸小紋の柄は、遠目からは無地にみえるほど小さい。
目を近づけてマジマジと眺めてもよくわからないものもある。
江戸小紋は、ひたすら無駄に労力を使い贅沢をする【江戸美学】の結晶なのだ。
似たような小づけの小紋でも京都のそれとはまったく異なっている。
江戸小紋は、江戸っ子の意地と張りで、ただただ途方もない壮大な無駄にしてみせているところが、最高にかっこいいのである。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
弟子入り希望 (ブルブル)
2005-02-28 13:43:32
ぽんたさん

小紋を勉強中なので色んなお話し聞かせてください。



ブルブル

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ブルブルさん、ありがとうございます (ぽん太)
2005-02-28 19:22:26
ブルブルさん、さっそく読んでくださって、ありがとうございます。



小紋は、江戸にしろどこにしろ、奥が深いですよね~。



江戸小紋に関しては、これぞ極め付け!みたいな文献があるといいのですが、あいにくとまだ見つけられていません。



いっそそれなら、私が、職人さんに細々と取材しつつ、さまざまな型紙や図柄の名称をも一覧でき、なおかつ歴史的な背景がまとまったものを書きたいな~なんて、夢想しておりますが、さすがにそれは無理でしょう(笑)



これからも、どうぞよろしくお願いします!
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