難しいのは、着付けでもTPOでもない。きものという衣服には、その発展の経緯により、ローカルな考えが無数にあり、どれが正しいといちがいに考えられないにもかかわらず、自分の知るルールや見識こそ「正しい」と信じる人が、数多くいることだ。
少し前までは、全国的なきものの常識なるものは、礼法や茶道花道にたずさわる人の考えを反映していた。『冠婚葬祭のTPO』といった常識マニュアル本の著者にその道の人が多かっ . . . 本文を読む
平日一人で出向くことが多いので、めったにないのだが、芝居小屋で偶然知人に会うのはとても嬉しいものだ。
特に、このたびの勘三郎襲名興行では、どうしてか、色んな方々と出会っている。
まず、初日昼の部。
長らくご無沙汰していた人と、入口でバッタリ遭遇した。
お互いに驚きつつ、「やっぱり、来てると思った」と喜びあう。といっても、大混雑の初日だけに、早々にお別れし、それぞれの席に。開演前の売店でも袖すり . . . 本文を読む
江戸時代には、襲名なるものはなかったようだ。
少なくとも、襲名という言葉は、資料の上ではみつからないという。
とはいえ、江戸でも海老蔵が團十郎に、團十郎が海老蔵になったりしていたのだから、今でいう「襲名」らしきことはあった。それを称して改名と呼んでいたらしい。
では、今でこそすっかり有名な「襲名」は、いったいいつが起源なのか?というと、はっきりとはしないが、おそらく大正から昭和にかけてだろうと考 . . . 本文を読む
振袖というものを、これまで一度も着たことがない。振袖を着るべき年齢だった頃、きものにまったく関心がなかったこともあり、着はぐれてしまったのだ。
今から考えるにとても残念だが、誰も彼もが、とりあえず成人式に振袖を着るようになった歴史はそう古くはないことだし、この先決して着られなくても仕方がない…と思っている。
「(若い)未婚女性の第一礼装」が定義の現在の振袖だが、たとえば、豪華なホテルでのパーティ . . . 本文を読む
いよいよ、歌舞伎座三ヶ月にわたる十八代目中村勘三郎襲名興行が、始まった。
全国的にみるならば襲名興行はほぼ四年がかり。歌舞伎をみせる小屋数がふえ、東京からスタートし、名古屋・京都・大阪・博多とまわるのにおよそ足かけ二年。その他に、地方巡業があるからだ。
初日昼の部のチケットを用意していた私は、仕事の合間をぬって、なんとか出かけてきた。
実のところ、襲名の初日をみたのはこれが初めてのことである。
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ここに来て、仕事が重なってきた。臨戦態勢でいかないと切り抜けられない。
おまけに、一ヶ月半まえに勘三郎襲名のチケットを買ってある。それも初日のをだ!
初日というと、なんとあさってだ。ところがどっこい、その翌日には納品がある。
だから、よけいに早めに対応しないといけない、いけないのだ…。
…のだが、仕事がさし迫ればさし迫るほど、逃避願望も強く働くというのが常である。
勤め人だった頃は、仕事時間中 . . . 本文を読む