ぽんしゅう座

優柔不断が理想の無主義主義。遊び相手は映画だけ

■蛇の道(2024)

2024年06月23日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」

終わらせたい男(ダミアン・ボナール)。終わらせたくない男(西島秀俊)。そして終わらない女(柴咲コウ )。女の姿(カタチ)をとらえる焦点は、その正体(存在)の不確かさを象徴するように滲み、ふたたびフォーカスが合ったとき女と男は終わりの見えない次のステージに進む。

頻繁に繰り返されるピン送りによって状況が揺さぶられ「終われない」から「終わらない」という女の円環地獄が露呈する。

近景では遮光マスクで顔を覆った女が溶接の火花を散らせ、中景では床に這いつくばった男が飛び散った食料をむさぼり食い、遠景には銃をかまえ虚空に弾丸を放つ男の立ち姿。3者にピントが合った光景が「執念と欲望と暴力」の共存を思わせてシュール。なんとも不気味なベストショット。

ちょっと記憶が曖昧なのですが、1997年版『蛇の道』は主人公の数学講師(哀川翔)が数式という理性によって非理性的な復讐行動に突き進む狂気じみた不条理劇だったような気がします。それに比べると本作は(テクニカルなピン送りの多様のせいでしょうか)ロジカルで情緒的な気がしましたが、それもまたよしです。

(6月19日/MOVIX橋本)

★★★★


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