ぽんしゅう座

優柔不断が理想の無主義主義。遊び相手は映画だけ

■ 国境ナイトクルージング (2023)

2024年11月05日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」

その先のない雪と氷の国境の町に行きついて、それなりに日々をやり過ごすナナ(チョウ・ドンユイ)と男友達のシャオ(チュー・チューシアオ)。同類のハオフォン(リウ・ハオラン)が加わったところで、その場で浮いたり沈んだりのコップの底の乱痴気騒ぎ。

広い中国のなかで居場所を失くした若者たちに“氷の世界”の出口は見えたのだろうか。

(10月27日/テアトル新宿)

★★★★


【あらすじ】
中国東北部の延吉。漢字とハングルの併記が溢れる北朝鮮との国境の町だ。友人の結婚式に出席するために、この地を訪れた上海の企業に勤めるエリート青年ハオフォン(リウ・ハオラン)は密かに心に病を抱えていた。式を終えた翌日、ハオフォンは時間つぶしに参加した観光バスツアーでガイドのナナ(チョウ・ドンユイ)と知り合う。その夜、彼女の男友達のシャオ(チュー・チューシアオ)も合流し一晩飲み明かすことに・・・。ナナとシャオもまた挫折をか抱えて、この国境の町に流れ着いた若者だった。シンガポールのアンソニー・チェンによるカンヌ・カメラドール受賞作『イロイロ ぬくもりの記憶』に次ぐ脚本/監督作。(100分)

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■ SUPER HAPPY FOREVER (2024)

2024年11月04日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」

深い悲しみを描て“思い出”という光明で映画は幕を閉じる。失くした「赤い帽子」は自分の前から姿を消しただけで、世の中のどこかに存在するはずだという思い。失くした(亡くした)からこそ思い出になるのだという残酷だが受け入れざるを得ない人としての運命。

前半と後半で時の扉をくぐり抜けるようにするりと物語の時制が入れ替わる。そして今起きている事象(現実)が、5年前に起きた時(とき)の流れのなかに、さりげなくかつ理詰めで結びつけられ、今もどこかにあるかも知れない“幸福な時(とき)”が立ち表れる。五十嵐耕平監督の計算づくの仕掛けが、物語を支配する感情を負から正へと逆転させてしまうのだ。不思議な、良い意味で騙されたような幸福感で映画は幕を閉じる。

途中で明かされる「SUPER HAPPY FOREVER」の由来に思わず苦笑いするも、その能天気なフレーズの裏返しとして、人が人生において図らずも抱え込んでしまう悩みや悲しみの深さに思い至る。

(10月27日/新宿武蔵野館)

★★★★

 

【あらすじ】
最近、妻を亡くし意気消沈した佐野(佐野弘樹)を見かねた幼馴染みの宮田(宮田佳典)は二人で伊豆のリゾートホテルを訪れていた。そこは5年前に二人が宿泊し、佐野が妻の凪(山本奈衣瑠)と出会った場所だった。そのホテルもすでに閉館が決まりベトナム人従業員のアン(ホアン・ヌ・クイン)たちの退職の日が迫っていた。自暴自棄ぎみの佐野を癒そうと宮田は声をかけ励ますが、その言葉は届かない。そして佐野は、5年前の凪と知り合った日に彼女がが失くした「赤い帽子」に思いを巡らせるのだった。東京造形大/東京藝術大学大学院出身でロカルノやヴェネツィア国際映画祭で注目されている1983生まれの五十嵐耕平の脚本/監督作。(94分)

 

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■ まる (2024)

2024年10月30日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」

投機化する現代アート市場になぞらえて“権威”について皮肉るのかと思ったらそうでもなく、主人公(堂本剛)の暖簾に腕押し的な生き方を通して“(荻上直子が好きそうな)自然体の利”を性懲りもなく説きたいようでもあり、何が言いたいのかよく分からない。。

未見の方には意味不明なコメントかもしれませんが、物語のオモテ的には主人公の行動を左右する役割の吉岡里帆、綾野剛、早乙女太一、柄本明が、ウラ的にはビジュアルの面白さとして○(まる)、鳥、蟻、茶の湯が機能していないからだと思う。

いちアートファンとしては、ちゃかされただけで終わった現代美術界に同情します。


(10月25日/TOHOシネマズ南大沢)

★★★

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■ ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ (2024)

2024年10月28日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」

社会システムを維持したい常人たちは、社会秩序の紊乱者ジョーカーを、ただの社会的落伍者でしかない小市民アーサーとして精神鑑定と陪審員裁判という社会的合理の範疇で“処理”しようと試みる。ジョーカーとアーサーの狭間で揺れ動く寄る辺ない男の悲しみ。

「ザッツ、エンターテインメント」!!。アーサーに成り下がった男をジョーカーに引き戻そうとするハーレイ・クイン(レディー・ガガ)は、そう歌い上げ、呪文のようにそう囁く。

エンターテインメントとは、社会システムを維持するための合理の対極にあり、情緒や感情という不合理や不条理の“柔軟な表出”だ。だからハーレイが体現する「エンターテインメント」は端から社会的合理の外側に存在しているのだ。その証拠には前作『ジョーカー』でも“笑い(コメディ)”というエンターテインメントが物語の重要な鍵になっていた。本作のミュージカルパートはジョーカーとハーレの閉じられた世界として描かれる。ジョーカーは何者なのかという「世間」の喧騒のなかで社会的合理の範疇を超越するか否かの結界で揺れるアーサー(=ジョーカー)がスリリングだった。

そして正直なところ私は“あのジョーカー”に裏切られたようで唖然とした。しかし冷静になってみるると、それは私の勝手な(映画というエンターテインメントに託した)妄想であり、無責任な(自己満足としての)破壊願望に起因しているのではないかと気づいた。トッド・フィリップスは前作『ジョーカー』に対する真摯なアンサー映画として本作をもって社会的責任を果たそうとしたのだろう。

(10月22日/TOHOシネマズ南大沢)

★★★★★


【あらすじ】
ジョーカーとして5人を殺害したアーサー(ホアキン・フェニックス)は精神鑑定のため精神病棟に収監されていた。そこで彼はジョーカーの熱烈な支持者である謎の女リー(レディー・ガガ)に出会う。裁判が始まりアーサーとともに法廷に立った弁護士(キャサリン・キーナー)は彼には二重人格障害がありアーサーとジョーカーは別人だと主張する。そして傍聴席には“ジョーカー”に熱い視線を送るリーことハーレイ・クインの姿があった。被告は惨めな社会的弱者なのか反逆の殺人者なのか男の自我は揺れ動く。危ういほどに熱烈な支持者を生み出した前作『ジョーカー』に対するトッド・フィリップス監督のミュージカル仕立のアンサー映画。

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■ 若き見知らぬ者たち (2024)

2024年10月26日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」

主人公(磯村勇斗)の孤立を描くにあたって内山拓也監督は、個人と社会システムとの関りを(意図的なのか成り行きなのか)完全に切断してしまう。これでは弱者を描くための“弱者利用”に見えてしまうかもしれない。この企みは好嫌/賛否が分かれるだろう。

例えば主人公のリアリティに欠けた母親(霧島れいか)に対する処遇は社会通念からすれば受け入れがたいし、たとえ物語演出のための確信犯だとしても好悪が分かれるだろう。この若者は自ら地獄を選択しているように見えるのだ。

2024年の同時期に公開され、本作の対極に位置する二本の映画が頭に浮かんだ。

一本は、図らずも人と違う境遇を抱えた若者が、情緒に流されず社会でのマイノリティの位置づけを丁寧に拾うことで光明を見ようとした『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(呉美保)。あるいは、社会が内包している暴力性の理不尽さの象徴として、銃弾が持つ破壊力という価値(負の重さ)との距離の取り方において『Cioud クラウド』(黒沢清)の対極に位置しているとも言える。

この2本の作品に比べて本作は、商業映画でありながら観客にまったく媚びない。それはもどかしさでもあるのだが本作の凄みでもある。あえてリアルさを排除して社会とのつながりを断つことで、個人と社会システムの齟齬を強調し“弱者利用”と批判されることを恐れずに、絶望的な“孤立”を描いてしまう。この内山拓也監督の意固地さを私は支持したいです。

たとえ意欲過剰の意欲作だとしても。

(10月20日/イオンシネマ多摩センター)

★★★★


【あらすじ】
高校卒業後、風間彩人(磯村勇斗)は父が残した借金を返しながら脳を患い精神を乱した母(霧島れいか)と暮らしている。一方、格闘技の才能を見いだされた弟の壮平(福山翔大)は世界戦を控え練習に没頭していた。すべての不幸を一身に背負う彩人の地獄のような生活を恋人の日向(岸井ゆきの)は淡々と支えいていた。二人を見かねた友人の大和(染谷将太)の忠告も耳に入らずマゾスティックにもみえる生活を改めようとしない。果たして彩人の思いはどこにあるのか。そこには社会に巣くう“暴力”の景が浮かぶ。『佐々木、イン、マイマイン』に続く内山拓也監督/脚本/原案による長編第三作。(119分) 

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■ HAPPYEND (2024)

2024年10月19日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」

33歳、米国生まれ日米育ちの空音央監督(坂本龍一氏の子息だそうだ)が描く近未来の日本の高校では様々なルーツを持つ生徒たちがさしたる軋轢なく当然のように過ごし、卒業式だって米国式の6月だ。ただ彼らが友情や政治に葛藤するさまはいたってオーソドック。

未成年の夜間外出、無軌道で無邪気な悪戯、扇動者と政治集会と街頭デモ、バリケード封鎖と立てこもり、なんと岡林信康まで・・。ネタばれになるので詳しくは書けないが、空監督の体制批判思考は1960年代後半から70年代の空気と呼応する。私は大島渚の『日本春歌考』や村上龍原作で李相日が撮った『69 sixty nine』を思い出していた。

1990年代生まれの新鋭監督には斬新な新規性を期待していたが、友情の捉え方や反体制の表明手段として何か新しいものがある分けではなく“過去の正攻法”に回帰していく。語り口もゴツゴツといささか生硬かつ図式的で素人っぽさが残っているのだが、それも合わせて監督の正直さや誠実さ、そして先達へのリスペクトの表れとも感じられ好感が持てた。

コウ(日高由起刀)とユウタ(栗原颯人)の卒業後の姿に『バティモン5 望まれざる者』でラジ・リ監督が二人の主人公に託した同志ならではの“選択と理解”と同質の友情を感じた。


(10月13日/MOVIX橋本)

★★★★


【あらすじ】
大地震の予兆に怯える近い将来の日本。政府は緊急事態条項の必要性を訴え街では警備が強化されていた。韓国料理店の息子コウ(日高由起刀)と裕福な家のユウタ(栗原颯人)は幼馴染みでクラブ音楽好きの卒業を間近に控えてた高校生だ。そんな二人が通う学校にも校則の遵守を目的にAI監視システムが導入される。コウたちのグループはこれに反発するが導入に賛成する生徒たちも少なからずいた。コウは同級生フミ(祷キララ)の影響を受け校外の抗議デモに参加し始め、音楽がすべてで我関せずのユウタに苛立ち始める。管理や分断社会に警鐘を鳴らす米国生まれで日米育ちの33歳の空音央監督による初長編劇映画。(113分)

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■西湖畔に生きる(2023)

2024年10月18日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」

心地よいリズムと美しい映像で湖のほとりに駿立する茶畑に暮らす母(ジアン・チンチン)と息子(ウー・レイ)の物語が始まる。そこは歴史的に“伝統”の地であり、対岸に垣間見えるビル群の夜景との対比もまた不気味でありながら現代の景色として美しい。

そして「マルチ商法」の逸話へと物語が突入したとたん映画は一転しどんどん暴走し始める。 このグー・シャオガン演出の、ひとつのこと(語り口)にこだわりはじめると全体の体裁が見えなくなる、あるいは確信犯的に見ないという“加減の無さ”にある種の偏執癖を感じてしまう。そして中盤以降は神話的にもみえる物語を語りながら案の定“物語映画”として破綻する。

それでも★印2つにしなかったのは、その「破綻」に作者の意志を感じたからです。私は人から感想を聞かれたときに「つまらなかったです」と応える映画を★印2つにすることにしています。でも本作は決してつまらなくはなかった。グー・シャオガンという映画作家は、通常とされるコンテキストとは違った基準の“塩梅”といううか“加減”で映画を作っているのではないかと思えてきました。

ちなみに監督の前作『春江水暖 しゅんこうすいだん』の私の感想を転載しておきます。「チャレンジングな撮影に目を見張るが、才気が走り語るためではなく見せるための画になってしまっているきらいを感じた。何気ない家族の物語に潜む深みが立ちあがってこず、逸話の魅力を引き出し切れていないように思う。何もしなくても日常はもっと面白いものだ。」

暴走は前作から始まっていたのでは・・・

(10月11日/ル・シネマ渋谷宮下)

★★★


【あらすじ】
高級中国茶の産地として知られる浙江省杭州の西湖のほとり。10年前に夫が失踪したタイホア(ジアン・チンチン)は茶摘みの仕事で質素に生計を立てていた。家族を捨てた夫を恨み、すでに死んだものと吐き捨てるタイホアだが息子のムーリエン(ウー・レイ)は父の行方をいまだに捜していた。そんな母タイホアは茶畑主一家とのトラブルで職を奪われ湖の対岸に渡る。そこは高層ビルが立ち並ぶ経済発展の象徴の地だった。そして次に息子の前に現れた母親は、マルチ商法の世界にどっぷりつかた狂信者に変貌していた。初監督作『春江水暖』がカンヌ映画祭で注目を集めたグー・シャオガンの第二作。(118分)

 

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■ ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ (2024)

2024年10月13日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」

ワルキューレ(高石あかり/伊澤彩織)のキャラ頼りになりがちな企画ですが“敵役(悪役)が魅力的な映画はもれなく面白い”の法則どおり、組織の論理の前に立ちはだかる狂気のフリーランス・池松壮亮の猪突猛進ぶりがぐいぐいお話を盛り上げ楽しかった。

エンタメ的な攻と守の切り変わりを、よくある舞踏的な美しさではなく、あくまでも争いとして合理的に見せる立ち回りシーンが心地よく、かつ分かりやすくていいです。アクションコーディネーターの川本直弘の仕事なのでしょう。彼のガンアクションや立ち回りのアイディアを的確につなぐ編集の遊佐和寿(ガンエフェクトとVFXも兼ねている)の力も大きいのかもしれません。

今回の鑑賞の第一目的は高石あかりさんを見ることでした。私は本シリーズ(前二作)は未見で『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』で初めて彼女を知りました。そのときの感想が「高石あかりさんの映画的瞬発力とでもいうのか、存在感と動作(アクション)のキレは凄いですね。」でした。

このとき感じた「映画的瞬発力」とか「動作(アクション)のキレ」というの擬闘のそれではなく話の流れのなかで見せる自然なようでいて意表をつく(松田優作が持っていたみたいな)“所作”のことです。

本作でもときおり“それを感じさせる所作”はあったのですが「杉本ちさと」というキャラ作りのためか、いささか芝居がかったオーバーアクトのほうが勝っていいました。私の買いかぶり過ぎでしょうか。いやいや、また別の機会に女性版優作が炸裂するのではないかとまだ期待は捨てておりません。


(10月8日/MOVIX橋本)

★★★★

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■ Cloud クラウド (2024)

2024年10月12日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」

金を稼ぐことに没頭する奴がいる。没頭は視野狭窄的であり見えないにしろ見ないにしろ、稼げない奴は存在を否定されたと思い込む。現実社会ではそんな奴がときおり一人で自爆するのだが試しに集団にしてみるとエンタメ化する。で、それを外から見てる奴がいる。

外から見てる奴になりたくてもなれないのが、たぶん私(たち)ですね。だから見て見ぬふりをする。

無邪気でクラシックなガンファイトは映画的に良くできていた。でもこんな余興がガス抜きになった時代はとっくの昔の話、という意味でも(構造)はクラシック映画。

(10月6日/TOHOシネマズ南大沢)

★★★

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■ 憐れみの3章 (2024)

2024年10月07日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」

人を支配しようとする者。自ら進んで支配される者。そんな権威に対する人間の悪魔的欲望を描いて容赦ない。それも小難しい説教話ではなくお伽噺の教訓のように分かりやすく。そして3篇ともファンタジー&サスペンスの中編として楽しくも醜悪で抜群に面白い。

『女王陛下のお気に入り』(2018)のメジャー性にちょっと首をかしげてしまい、さらに作画的にも物語的にも肥大化の一途をたどる『哀れなるものたち』(2023)に、まあこんなものなのかなあと自嘲ぎみに納得しようとしていた初期のヨルゴス・ランティモス監督ファン(の私)としてはこの原点回帰はうれしい限りです。

脚本にエフティミス・フィリプが参加していることもあるのでしょうか、『ロブスター』(2015)や『聖なる鹿殺し』(2017)がはらんでいた“得体のしれない毒”が、今回は一時間弱の中編(3本)という適度な時間尺にそれぞれ凝縮されていて、観る者に有無を言わさぬ明快さで突き刺さってきました。途中、ルイス・ブニュエルの作品群を思い出していました。

あと、異なった3つの物語の個性的なキャラを変幻自在に(嬉々として)演じる俳優さんたちをみる贅沢。これもとても楽しかったです。

最後に、これから本作をご覧になる方へご忠告。エンドクレジットの途中で席を立つと2時間45分かけて観てきた“意味”がなくなります。くれぐれも明るくなるまで席は立たないように。

(10月3日/TOHOシネマズ南大沢)

★★★★★


【あらすじ】
ヨルゴス・ランティモス監督・脚本による「支配」をめぐる3つの物語。〔第1章:R.M.F.の死〕ビズネスマンのロバート(ジェシー・プレモンス)は朝起きてから寝るまで衣食住すべての行動を上司のレイモンド(ウィレム・デフォー)に指示され逆らうことができない。〔第2章:R.M.F.は飛ぶ〕警察官ダニエル(J・プレモンス)には、海で遭難し奇跡的に生還した妻リズ(エマ・ストーン)が別人に見えてしかたない。〔第3章:R.M.F.サンドイッチを食べる〕家族を捨て家を出たエミリー(E・ストーン)はアンドリュー(J・プレモンス)とペアを組みカルト教祖のオミ(W・デフォー)の使命を受け特殊能力を持つ女を見つけるために奔走する。(164分)

 

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