ぽんしゅう座

映画を観るくらいしか趣味のない男の、雑談です。

■ ハッピーエンド (2017)

2018年04月15日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
続発する不祥事の現場の顛末は詳述されず「起きたこと」の“後始末”ばかりが淡々と描かれる。一族間のパッションの衝突は封印され空々しさだけが蓄積する。これから「起きること」を意志として表明したあの背中越しの海の青色が、不気味なほど美しいのは、そのせいだ。

(4月10日/新宿武蔵野館)

★★★★★
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■ クソ野郎と美しき世界 (2018)

2018年04月14日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
いささか、とうの立ったアイドルの新生プロモーションとして既成の枠にはまらない映像作家を起用してオムニバスを作るというのは悪くない企画だと思います。以前の藤島ジュリーKさんのところでは撮れない映画を期待したのですが仏は作れても入魂までは難しいですね。

■ピアニストを撃つな! (園子温監督)
ほとんど動かない稲垣吾郎さんを物語の中心に据え、弾けっぷりと疾走ぶりが素晴らしい馬場ふみか、浅野忠信、満島真之介の「動」を推進力にスクリーンを引っ掻き回すスラップスティックの定石。薄味ですが楽しめました。


■慎吾ちゃんと歌喰いの巻 (山内ケンジ監督)
いささか現実の香取慎吾さんに媚を売りすぎな感もありますが「歌喰い」のアイディアは面白かったです。無表情の低体温ぶりが市川実日子を彷彿とさせる若干12歳の中島セナちゃんも、まだ未知数とはいえ今後が楽しみです。

■光へ、航(わた)る (太田光監督)
草なぎ剛の十八番、怖そうだけど本当は良い人、はあまりにも妥当すぎ。壊れ気味の尾野真千子もどこかで観た気が・・・・。太田監督らしい毒気のあるボケ/ツッコミの掛け合いが、ときどきクスリと笑わせてくれる、だけ。


■新しい詩(うた) (児玉裕一監督)映画としての仕掛けが何もなくフィナーレの大団円としては肩すかし。プロモーションビデオの域を出ず、とてもお金の取れるしろもではない。オムニバス作品として本作をまとめきれなっかたこの4本目の失敗は罪深い。ミュージカル映画をなめるとこうなる悪例。

で、稲垣さん、香取さん、草なぎさんが新境地を見せたかというと、3人とも過去の既存イメージ踏襲の安全牌だのみ。とは言え、この人たちは、いったいいつまでアイドルを続けるつもりなのだろう、などと3人を責めるのはお門違いなような気がします。

安全牌を手放せないのは、一新された(であろう)にもかかわらず既得権益から抜け出せない新スタッフ陣であり、数十年来の年季が入ったファンの人たちの方じゃないのでしょうか。

(4月8日/TOHOシネマズ)

★★★
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■ 素敵なダイナマイトスキャンダル (2018)

2018年04月13日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
メガネを曇らせた者たちが象徴的に何人か登場する。みんな感情をむき出しにした人々だ。停滞の70年代から狂騒の80年代、一見、主人公(柄本佑)が感情を露わにしないのは、混濁した経済と文化のバブルに拝金の腐臭を嗅いだからだろう。健全な精神こそがサブカルを生む。

(4月5日/テアトル新宿)

★★★★
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■ blank13 (2017)

2018年04月12日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
情に流されず丁寧かつ的確な斎藤工の演出。奇をてらわず控えめな西条みつとし脚本と金子ノブアキの音楽も邦画界の新たな希望。安手のお涙ものに陥ることなく、葬儀を義務でこなす息子らの胸中に本人たちも戸惑う“心の隙間”をあぶり出す手腕は見事。

話調の転機となる、葬儀出席者のデフォルメされたいでたちの視覚容量と、控えめでいながら印象的なひとり語りの時間容量のバランス感覚が新鮮だ。それだけに佐藤二朗のワンパターンの饒舌芝居だけが過剰で鼻についた。佐藤の暴走を止め(られ)なかったのは斎藤工の宿題として、次回作がとても楽しみ。

(4月1日/下高井戸シネマ)

★★★
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■ グレイテスト・ショーマン (2017)

2018年04月03日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
ポジティブな語り口に徹し、常時明るく華やかでスリリングな点。ハッタリではなく進行説明(時間)の節約にCGを駆使した点。無自覚さを装いながら権威とタブーを撃ってみせた点。この三点に置いて巧妙かつ真摯なミュージカル映画なのだが、なによりも理屈抜きで面白い。

そう、面白いのだが、観ているあいだすっと何か心に引っかかっていた。たぶん「最も崇高な芸術とは人を幸せにすることだ」という、みえすいた綺麗ごとの裏に、階級、成り上がり、好奇、偏見といった人間の抜き差しならない“醜悪”さへの問題意識が隠されているからだと思います。

それをランダムに列挙してみます。

大衆の好奇心を満たして喝采を浴びるフリークスの幸福。そのフリークス演芸の無意識の攻撃性を恐れる、自分よりの下を存在を失いたくない下層民の過激な抗議活動。同じように、成り上がり者とその家族に対する優位性の喪失の恐怖としての上流家族(実家)の差別意識。虐げられた者(P・T・バーナム)が幸福を追求するモチベーションは復讐心と表裏一体であるということ。そして異形も至芸も上昇するための手段だ割り切る合理性の功罪。さらに成り上がりでありながらその実力+美形(北欧の歌姫)に対する盲目的陶酔。その純粋芸術を気取る演芸(歌唱)に対する評価と、その評価者の高慢と虚構(権威)性。

無理やり結論を急ぐことなく、このわだかまり(モヤモヤ)をこっそりと、しかし確実に臭わせてみせたことが本作の隠れた成果だと感じました。

「最も崇高な芸術とは人を幸せにすることだ」なんてい言ってみたところで、映画だってミュージカルだってサーカスと同じ見世物でいいじゃないですか。キワモノをみて幸せになったことのある正直者なのに臆病者の私は「別に“芸術”にこだわらなくてもいいじゃないか!」と小さな声で言ってみるのでした。

(3月31日/TOHOシネマズ)

★★★★
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■ BMP ビート・パー・ミニット (2017)

2018年04月02日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
余命宣告を受けたも同然の若者たちの失意の裏返しとしての決起と抵抗の高揚が、沸点へ向かって一本調子で突き進むユーロビートの不穏さとシンクロする。死に急がないために個人が民主的秩序のもとに連帯し、生き急ぐように硬直した社会秩序を激しく攻撃する正当性。

彼らの行動は平常を撃つ“暴挙”であはるが、平常を破壊する暴力ではない。私は、この“暴挙”を非難することができない。彼らの時間は平常人の数倍のスピードで死へ向かって突き進んでいる。さらに無知と偏見は第二、第三の彼らを生み出し続けるのだ。

傷ついた個は、連帯することでやるせなさを力に代え、連帯が勝ち取る「可能性」の不安を恋愛で癒すことができる。が、最後はすべて個に帰る無常。

(3月25日/新宿武蔵野館)

★★★★
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■ ラッキー (2017)

2018年03月30日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
頑固でぶっきらぼうだが、礼儀はわきまえている常識人。ヘビースモーカーにして健康体。すっかり枯れていながら、意外と女性に人気がある。リクガメのように飄々と、いつもそこに「居る」だけだが、町じゅうの人がその影を優しく見守っている。こんな老人に私もなりたい。

役者にとっての肉体と顔は自身の“存在”そのものであり、これはハリー・ディーン・スタントンへの敬老映画であり、ドキュメンタリー映画だ。なによりも彼の“あの笑み”がそれを証明している。

(3月25日/シネマカリテ)

★★★★
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■ 脅迫 -おどし- (1966)

2018年03月28日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
西村の不適、三國の狼狽、室田の蒙昧、春川の困惑、保積の抵抗。それぞれの“顔”が好い。行動を封じられた室内の閉塞と、屋外の半解放状態の戸惑いが作りだす緊迫感から、一気に話が動き出し現金授受の活劇へ突入する語り口も破綻なく快調。冒頭の披露宴の逸話がもっと主題にからむのかと思ったが、それが心残り。

(3月23日/シネマヴェーラ渋谷)

★★★★
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■ 鉄と鉛 STEEL&LEAD (1998)

2018年03月26日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
導入部のシャープな展開が劇画のコマ割りを彷彿とさせ、さすが漫画家きうちかずひろ監督だなと感心するも、話が展開しだすとすぐにハードボイルド感は剥げ落ち、気のいいヤクザ成瀬正孝とのバディものとしての感慨も、女子高生からの依頼成就や謎解きのスリルも薄味で、ただただ探偵(渡瀬恒彦)さんのドンパチぶりが虚しく銀幕に踊る。

(3月23日/シネマヴェーラ渋谷)

★★
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■ 聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア (2017)

2018年03月18日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
登場する人々の営みはとても下世話で俗っぽいのに、ひんやりとして温度が感じられない。まるで、こちら側の世界との間に透明だが分厚い膜でも存在するように、その奇異な出来事は客観的に淡々と繰り広げられある。現実と非現実の間に宙ぶらりんにされる不思議な薄気味悪さ。

(3月14日/シネカリテ)

★★★★
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