いささか合理性を欠いた主人公の行動に戸惑いながらみていたのですが、人里離れた山間の一軒家に“嫌悪と赦し”の微妙なバランスで成立した「虚実あわいの家族」の姿がさながら桃源郷のファンタジーに見え始める。闖入者の「実」が夢想者たちの「虚」を“合理”に引き戻す切なさ。
この一軒家の出来事で物語が終わっていたなら躊躇なく5点満点にしていたと思います。
映画には「物語の結び」として、さらに山を下りてからの話が準備されている。ある種の「明快さ」として有りうるシークエンスだと理解はできるのですが(蛇足とまでは言いいませんが)、もっと第三者(観客)に「かくしごと(原作の題名は“嘘”だそうだ)」に秘められた罪と救いの危うさと、その是非を委ねても良かったのでは、と・・・まあ、しょせん私の好みの問題ですが。
(6月30日/テアトル新宿武)
★★★★