ぽんしゅう座

優柔不断が理想の無主義主義。遊び相手は映画だけ

■ あんのこと (2023)

2024年07月03日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」

厚い唇のせいか、あん(河合優実)は、いつも口が半開きのようにみえる。彼女の存在は始終受け身で河合が唯一意識している“芝居”はこの口元だけのように思えた。何かを訴えようにも言葉が見つからないとか、自分が置かれた境遇に呆然としているとか、そんな意思の表れではなさそうだ。

彼女は、だらしなく状況に流されているだけのバカにみえる。河合のたたずまいは世間的なバカを演じてとてもリアルで、引き算の芝居として素晴らしい。そんな「あん」の無知ゆえの無力を笑ったり責めたりするバカにだけは、私はなるまいと思う。

終盤、映画(物語)の意志(力)が拡散してしまっているように感じたのが残念。

(6月30日/新宿武蔵野館)

★★★


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