舞台となったビル有りきの企画なのだろう。一階、二階、三階と登るごとに男は沈み才気は失せていく。自堕落な愛欲生活に身を置く男(クォン・ヘヒョ)は疑似天国のような屋上で焼き肉食いながら“神”を見たと女に告げる。いっそ煙にでもなれたなら昇天も出来ただろうに。
(7月13日/新宿シネマカリテ)
★★★★
【あらすじ】
映画監督のビョンス(クォン・ヘヒョ)は、インテリアの仕事がしたいという疎遠だった娘のジョンス(チョ・ユニ)を連れて旧知のインテリアデザイナー・ヘオク(イ・ヘヨン)のもとを訪れる。彼女がオーナーの小さなアパートメントは、1階は彼女が営むレストランで地下室が仕事場。2階は借主のソニ(ソン・ソンミ)という女性シェフが運営する料理教室。売れない画家に貸している3階の屋根裏部屋は広いバルコニーにつながっていた。久しぶりの再会で会話はぎくしゃく。間が持たないビョンス、ヘオク、ジョンスのワインの量は進む。4階建ての限定空間のなかで時空を超えた“男の流転”が描かれるホン・サンスの長編第28作。(白黒/97分)