9月5日(土)キハラ良尚&モーツァルト・シンガーズ・ジャパン『魔法の笛』
~五島記念文化賞オペラ新人賞研修成果発表~
かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
【演目】
モーツァルト/「魔笛」K.620(演奏会形式、抜粋版)
【出演】モーツァルト・シンガーズ・ジャパン
ザラストロ:伊藤純/タミーノ:望月哲也/夜の女王:針生美智子/パミーナ:文屋小百合/パパゲーノ:宮本益光/パパゲーナ:鵜木絵里/モノスタトス:伊藤達人/侍女I:増田のり子/侍女II:小泉詠子/侍女III:中島郁子/童子I:横森由衣/童子II:松原典子/童子III:加藤麻子/魔法の笛:上野由恵/魔法の鈴:作本美月/ナレーション:長谷川初範
【管弦楽】
キハラ良尚 指揮 東京交響楽団オペラアンサンブル
【構成】宮本益光 【振付】成平有子 【衣装】下斗米大輔 【舞台監督】近藤 元
オペラと美術の分野で活躍が期待される若いアーティストを顕彰し、海外研修の助成をしたり、研修の成果発表の機会を提供したりする五島記念文化賞を受賞したキハラ良尚氏の研修成果発表として行われたオペラ公演を聴いた。上演のために集まったのは、それぞれの分野の第一線で活躍している人ばかり。オケも含めてこれだけの人材が一人の新人賞の成果発表に動員されるなんてすごい賞で、おかげでとても充実した「魔笛」を聴くことができた。公演は演奏会形式のカット版だが、パパゲーノとパパゲーナは完全な「フル装備」のコスチュームで、他の出演者も動きや振付けは本格的。ナレーションやダンスを付けて物語を立体的に分かりやすく描き、たいへん楽しめる上演だった。
とりわけ印象に残ったのは演奏の素晴らしさ。歌手陣は粒揃いで、誰の歌も存在感を持って輝いていた。刃物がギラリと光るような強さと妖しさを供えた歌で2つのアリアを見事に決めた夜の女王役の針生、アリア「愛の喜びは露と消え」の美しく繊細な歌唱で深い悲しみを表現したパミーナ役の文屋、パパゲーノは「外れ」が少ない役とはいえ、セリフがない分キャラ作りは大変だったと思うが、衣装負けすることなく全身で歌と演技を披露して聴衆をメルヘンの世界へ誘った宮本、歌で勇気と情熱を伝えたタミーノ役の望月など、挙げ始めたらきりがない。3人の侍女役の増田と小泉は、18年の新国立劇場の「魔笛」でも同役を演じたが、中島を加えた3人のアンサンブルは振付とともに見事に決まり、更にそれぞれの個性も感じさせる歌唱で存在感を示した。セリフに代えて物語の進行をうまく伝えたのが長谷川初範のナレーション。臨場感と味わいある語り口が光っていた。
一方で少々消化不良だったのは、ナレーションと同様にオリジナルにはない役として加わった「魔法の笛」と「魔法の鈴」。「笛」の上野は魔法の笛のパートを舞台上で演奏し、「鈴」の作本はパパゲーノの傍でうなだれたり、ダンスを踊ったりとパフォーマンスを見せた。それぞれタミーノとパパゲーノのサポート役と思われるが、その意図はあまり明確には伝わらなかった。パパゲーノのサポートとしてはむしろ3人の童子が重要なはずだが、これが「パパパのデュエット」の前の最後の場面以外全てカットされ、このオペラの大切なメッセージのひとつである「優しさ」が伝わりきれなかった。
また、場に光とパワーを与え、華麗な演出効果に欠かせない合唱が次々とカットされ、オーケストラのみの短縮バージョンとなったのも残念だった。合唱には制約も大きいだろうが、せめて最後のシーンだけは今日の出演者で歌ってほしいと願っていたが、神に感謝を捧げる合唱も歌われず、もう諦めていたら、最後の最後の合唱を参加者全員で歌ってくれたのには涙が出るほど感動。やっぱり「魔笛」はこの合唱で大団円を迎えないとね。
この公演のタイトルに冠されたキハラ良尚の指揮による東京交響楽団オペラアンサンブルは、終始生き生きと瑞々しく艶やかな演奏でオペラを彩り、歌を奏で、生気を与え続けた。上演で常に感じたのは、「モーツァルトの音楽って素晴らしいな!」ということ。それを伝えてくれたのは若いアーティスト達の実力と尽力あってこその結果。今後の益々の活躍が楽しみだ。
新国立劇場オペラ公演「魔笛」 (2018.10.3 新国立劇場)
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モーツァルト/「魔笛」K.620(演奏会形式、抜粋版)
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【管弦楽】
キハラ良尚 指揮 東京交響楽団オペラアンサンブル
【構成】宮本益光 【振付】成平有子 【衣装】下斗米大輔 【舞台監督】近藤 元
オペラと美術の分野で活躍が期待される若いアーティストを顕彰し、海外研修の助成をしたり、研修の成果発表の機会を提供したりする五島記念文化賞を受賞したキハラ良尚氏の研修成果発表として行われたオペラ公演を聴いた。上演のために集まったのは、それぞれの分野の第一線で活躍している人ばかり。オケも含めてこれだけの人材が一人の新人賞の成果発表に動員されるなんてすごい賞で、おかげでとても充実した「魔笛」を聴くことができた。公演は演奏会形式のカット版だが、パパゲーノとパパゲーナは完全な「フル装備」のコスチュームで、他の出演者も動きや振付けは本格的。ナレーションやダンスを付けて物語を立体的に分かりやすく描き、たいへん楽しめる上演だった。
とりわけ印象に残ったのは演奏の素晴らしさ。歌手陣は粒揃いで、誰の歌も存在感を持って輝いていた。刃物がギラリと光るような強さと妖しさを供えた歌で2つのアリアを見事に決めた夜の女王役の針生、アリア「愛の喜びは露と消え」の美しく繊細な歌唱で深い悲しみを表現したパミーナ役の文屋、パパゲーノは「外れ」が少ない役とはいえ、セリフがない分キャラ作りは大変だったと思うが、衣装負けすることなく全身で歌と演技を披露して聴衆をメルヘンの世界へ誘った宮本、歌で勇気と情熱を伝えたタミーノ役の望月など、挙げ始めたらきりがない。3人の侍女役の増田と小泉は、18年の新国立劇場の「魔笛」でも同役を演じたが、中島を加えた3人のアンサンブルは振付とともに見事に決まり、更にそれぞれの個性も感じさせる歌唱で存在感を示した。セリフに代えて物語の進行をうまく伝えたのが長谷川初範のナレーション。臨場感と味わいある語り口が光っていた。
一方で少々消化不良だったのは、ナレーションと同様にオリジナルにはない役として加わった「魔法の笛」と「魔法の鈴」。「笛」の上野は魔法の笛のパートを舞台上で演奏し、「鈴」の作本はパパゲーノの傍でうなだれたり、ダンスを踊ったりとパフォーマンスを見せた。それぞれタミーノとパパゲーノのサポート役と思われるが、その意図はあまり明確には伝わらなかった。パパゲーノのサポートとしてはむしろ3人の童子が重要なはずだが、これが「パパパのデュエット」の前の最後の場面以外全てカットされ、このオペラの大切なメッセージのひとつである「優しさ」が伝わりきれなかった。
また、場に光とパワーを与え、華麗な演出効果に欠かせない合唱が次々とカットされ、オーケストラのみの短縮バージョンとなったのも残念だった。合唱には制約も大きいだろうが、せめて最後のシーンだけは今日の出演者で歌ってほしいと願っていたが、神に感謝を捧げる合唱も歌われず、もう諦めていたら、最後の最後の合唱を参加者全員で歌ってくれたのには涙が出るほど感動。やっぱり「魔笛」はこの合唱で大団円を迎えないとね。
この公演のタイトルに冠されたキハラ良尚の指揮による東京交響楽団オペラアンサンブルは、終始生き生きと瑞々しく艶やかな演奏でオペラを彩り、歌を奏で、生気を与え続けた。上演で常に感じたのは、「モーツァルトの音楽って素晴らしいな!」ということ。それを伝えてくれたのは若いアーティスト達の実力と尽力あってこその結果。今後の益々の活躍が楽しみだ。
新国立劇場オペラ公演「魔笛」 (2018.10.3 新国立劇場)
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