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尾高忠明指揮 読売日本交響楽団/小曽根真(Pf)

2020年09月09日 | pocknのコンサート感想録2020
9月8日(火)尾高忠明指揮 読売日本交響楽団
~第601回定期演奏会~
サントリーホール


【曲目】
1.グレース・ウィリアムズ/海のスケッチ
2.モーツァルト/ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488
【アンコール】
 ♪ ビリー・ストレイホーン/A列車で行こう
 Pf:小曽根 真/B:大槻 健
3.ペルト/フェスティーナ・レンテ
4.オネゲル/交響曲第2番


小曽根真が弾くモーツァルトを聴いてみたかったのと、尾高忠明の指揮で未知の硬派の曲を聴くのも面白そうだったので出かけた読響の定期演奏会。モーツァルト以外の3曲は他の楽器も一部入るものの、どれも影を宿した弦楽合奏のための作品で、渋い曲目にモーツァルトが花を添えるプログラム。

最初の「海のスケッチ」の作曲者、グレース・ウィリアムズは名前を聞くのも初めて。海にちなんだタイトルが付けられた各曲はどれも水彩画のようなタッチで豊かな詩情を湛える。読響の弦は温もりある柔らかな音色でそれぞれのタイトルに相応しい情景を紡いでいった。各パートに与えられたしみじみとした「歌」も聴きもので、アンサンブルの中に浮かび上がるソロが歌をつないで行く第3曲「セイレーン海峡」のファンタジックな色合いや情感はなかでも心引かれた。

ペルトの「フェスティーナ・レンテ」も初めて聴くが、ペルトらしい静謐な祈りの音楽。無風状態を持続させる弦楽セクションの繊細で安定した演奏が、薄暮のなかで雲母の極薄の層が音もなく剥がれてはキラキラ舞うような情景を繊細に表現し、聴き手を恍惚の世界へ誘った。

後方に一人トランペット奏者が着席して始まったオネゲルのシンフォニーも初めて聴く。導入はペルトの音楽を引き継ぐ静けさの中に暗闇をさ迷うような気分が漂い、やがてもがき苦しむように動き始める。そして苦しみのなかにも穏やかな抱擁を感じる第2楽章が続く。尾高の指揮は細部まで丁寧に深く掘り下げ、柔軟で熱のこもった表現で苦悩や憧憬を描いて行く。闘いに挑むように始まった第3楽章は、激しいバトルが続いたあとに待機していたトランペットが一声を発する場面が実に印象的。高所から奏でる高らかなコラールは、山の頂から周囲の山々にこだまし、輝かしい光を照らすよう。苦悩から希望へと転じて曲を閉じた。

これら3曲が編成も音楽的にも繋がりを感じるのに対して、小曽根が登場したモーツァルトは、シビアな音楽のなかにゲスト的な華やかな雰囲気をもたらした。オーケストラの前奏が少々流麗過ぎるのではと思っていたら、小曽根のピアノがその流れのなかに絵の具を溶かし込むように入ってきた。小曽根のアプローチは至って誠実で、丁寧に音を一つ一つ置いていく感じ。ただしカデンツァは原調からどんどん離れ、遊び心と冒険心いっぱいの少年が未知の世界を遊び歩くようで、実際の即興を思わせるジャズピアニストらしさを全開させた。第2楽章の独特の味わいを湛えた歌い回しも良かったし、第3楽章終盤でジャズの乗りでリズム遊びが顔を覗かせたのも楽しかったが、クラシックのピアニストではあり得ないようなぶっ飛んだモーツァルトを聴けるかもという期待ほどではない。これは小曽根のクラシックへの、そして何よりモーツァルトへの愛情と敬意の証なのかも知れない。

その分、アンコールでは一転してごきげんなワクワクの演奏を聴かせてくれた。共演した読響の若き首席ベーシストの大槻健も小曽根のパフォーマンスに乗ってきて、短かったけれどベースのソロを聴かせるシーンもあり、センスと技とノリで楽しませてくれた。
小曽根真&ゲイリー・バートン  2013.6.22 サントリーホール
読響 特別演奏会:コバケンのベト7! 2020.7.21 サントリーホール

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