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新作歌曲の会 第13回演奏会

2011年07月30日 | pocknのコンサート感想録2011
7月30日(土)新作歌曲の会 第13回演奏会
東京文化会館小ホール

【曲目】
1.高島 豊/「さみしいみすゞ、かなしいみすゞ」(詩:金子みすゞ)
MS:小泉詠子/Pf:堀越夕子
2. 野澤啓子/猫ばっか Anytime「ワグネリニャン」(詩:佐野洋子)
T:小林大作/Pf:野澤啓子
3.嶋みどり/ラテンアメリカ詩集より バリトン独唱のための「ラテンアメリカのうた」
Bar:石崎秀和/Pf:亀澤奈央
4.和泉耕二/「希望」(詩:沙久良湖、和泉荘輔他)
S:佐藤貴子/Pf:和泉真弓
5. 金田潮兒/≪愛の哀しみ・Ⅲ≫~女声とピアノの為に~
MS:紙谷弘子/Pf:亀澤奈央
6.赤石敏夫/詩集「すこやかに おだやかに しなやかに」による3つの歌曲Ⅳ(詩:谷川俊太郎)
Bar:鎌田直純/Pf:堀越夕子
7.糀場富美子/「とはずがたり」(詩:峯陽、原作:後深草院二条)
S:平井香織/Pf:藤原亜美
8.鈴木静哉/「夏の旅」より(詩:立原道造)
T:横山和彦/Pf:藤原亜美

4年ぶりに参加の機会を頂いた「新作歌曲の会」演奏会。作曲は今回も金子みすゞの詩をテキストにした。みすゞが詠う「さみしい」や「かなしい」は、本当は自分の寂しさや悲しみを綴ったもの、という思いで、みすゞの心にできるだけ寄り添って曲をつけた。

これまでリサイタル等を聴かせて頂き、強い印象と感銘を受けている小泉詠子さんの歌は、深い表情とくっきりした線で、心の深いところにある寂しさや悲しみを、格調高く歌い上げてくださった。花園をイメージするような鮮やかな衣装も素敵。

第1曲「さびしいとき」では終盤、まさに「仏さま」が「私」のさびしさに寄り添い、深く安らかな呼吸で包んでくれている深遠な世界を、第2曲「お菓子」では、ちょっとした「罪」が「私」にとっては一大事、お菓子と悲しみを共にする気持ちを見事に伝え、第3曲「夕顔」では、お星さまにそっぽを向かれてしまった夕顔の寂しい孤独感が、さりげない表情のなかにくっきりと刻まれ、第4曲「さみしい王女」では、自由に大空を飛びまわっていた頃への抑えきれない郷愁を、深く遠く、そして熱く訴えた。堀越さんのピアノもいつもながらとても安定していて、歌の背景を彩り、またあるときは、歌を先導して全体像をくっきりと描いてくださった。自分が思い描いていたみすゞの世界を余すところなく、更にファンタジーをも加味し、最高の姿で届けてくださったお二人に、心からの感謝と敬意を捧げたい。


自分の出番が一番なので、他の演奏を全て落ち着いて聴けたのもありがたい。野澤さんの人気シリーズ「猫ばっか」では、小林さんの狂おしいほどの猫の悶えの「叫び」にユーモラスを超えたリアルさを感じ、嶋さんの「ラテンアメリカのうた」では、石崎さんの鮮烈な歌唱が印象的だった。和泉さんの「希望」は、震災で被災された沙久さん、和泉荘輔さんの書き下ろしの詩を中心にした曲で、抗い難い非情さから希望の光を見つけるに至る大作。佐藤さんの透明でリアルな声が、悲しく、美しく、強くホールに響いた。

後半、金田さんの≪愛の哀しみ・Ⅲ≫は、終盤の劇的な溢れんばかりの盛り上がりが、ワーグナー的陶酔感へと導いた。赤石さんのシリーズ、「すこやかに おだやかに しなやかに」は、叙事的なアプローチで言葉の中味をくっきりと浮かび上がらせた。ピアノパートがもう一人の語り手のように付き添っていたのも印象的。糀場さんの「とはずがたり」は、演出を交え、シアターピースの立体的な作品。尼僧となった二条の女の生々しく熱い感情の昂ぶりを、ソプラノの平井さんは明確に捉え、リアルに演じ、聴き手の心を掴んだ。鈴木先生の「夏の旅」は、テノールの横山さんの磨きのかかった柔らかな美声で歌われるとても丁寧な表情づけと、色彩感溢れる藤原さんのピアノが、立原の世界を美しく織り成していた。

様々なタイプの新曲歌曲を、それぞれ個性豊かで実力のある演奏者の演奏で聴けるこのシリーズは聴衆としても聴き応え十分だし、とても楽しめた。

とくに、拙作の応援のため、お忙しい中いらしてくださった方々には、心からのお礼を申し上げます。

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