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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

アミハイ・グロス(Vla) & 三浦謙司(Pf)デュオ・リサイタル

2023年03月02日 | pocknのコンサート感想録2023
2月27日(月)アミハイ・グロス(Vla)/三浦謙司(Pf)
東京文化会館小ホール

【曲目】
1.シューベルト/アルペジオーネ・ソナタ イ短調 D821
2.ブルッフ/コル・ニドライ Op.47
3.ショスタコーヴィチ/ヴィオラ・ソナタ ハ長調 Op.147

去年のレコ芸12月号で読んだ三浦謙司のインタビュー記事で、ドイツで研鑽を積み重ねる大切な時期に、「音楽の道を進むだけでは芸術を志す人間として成長できない」と敢えて音楽から離れて帰国し、音楽とは全く関係ない社会に2年近く身を置いたという話を読み、また最近リリースされたCDの選曲にも興味を惹かれ、三浦の演奏を聴いてみたいと思っていた。このデュオリサイタルのことを知ったときは、デュオよりソロを聴きたいと思っていたところ、先月のN響定期でアミハイ・グロスのヴィオラを聴いて魅了され、これに行こうと決めた。グロスはN響定期に出演したあと一旦帰国し、再び来日したとのこと。

グロスのヴィオラは今夜も素晴らしかった。磨かれた音色は淡い光を放ち、深みと艶を湛え、滑らかな語り口でどんな音域でもムラなく心の深いところに訴えてくる。

初めて聴く三浦のピアノは、繊細かつ深い味わいがあり、優しくヴィオラに寄り添い、絡み付く。特別な人生経験からアグレッシブな演奏を想像していたが、それよりも知的で、落ち着いた大人の魅力が滲み出ていた。両者はお互いに陰になり日向になって、アンサンブルに柔らかな陰影を作り出していった。

最初のアルペジョーネ・ソナタは、無駄がなく、さり気ない身のこなしが繊細で生き生きとした表情を生み出し、調和の取れた美しい佇まいを聴かせた。エネルギッシュな場面への鮮やかな切り替わり、各場面が有機的につながって生き生きとした音楽を繰り広げていった第3楽章がとりわけ印象に残った。
ブルッフの「コル・ニドライ」は、グロスのヴィオラの濃厚な歌が全体を印象付けた。これも力任せではなく、静かに湧きあがるパッションが全体を覆い、熱っぽくて美しいフォルムを形作っていた。

後半はショスタコーヴィチ最晩年の遺作のソナタ。プログラムノートには、初演することになったヴィオラ奏者のフョードル・ドルジーニンへ、曲についての意味深なコメントのあとに「これには惑わされないで欲しい。音楽は晴れ晴れとしている。」と作曲者が伝えたことが記されていた。このエピソードにかかわらず、今夜の演奏からは深淵な闇のなかに澄んだ眼差しがこちらをじっと見つめているようなシリアスさを感じた。

最も感銘を受けたのは第3楽章。ベートーヴェンの月光ソナタから取られた楽想を奏でながら、グロスの万感の想いを湛える孤高の歌が、影のように付き従う三浦のピアノと共に人生を静かにふりかえりつつ、静謐な沈黙の世界へと消えていった。

トゥガン・ソヒエフ 指揮 NHK交響楽団(Vla:アミハイ・グロス) 2023.1.26 サントリーホール

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