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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

仲道郁代 ショパンへの道

2019年01月29日 | pocknのコンサート感想録2019
1月26日(土)仲道郁代(Pf&お話し)
《ショパン 鍵盤のミステリー》第6回 祖国の土 <最終回>
ハクジュホール Hakuju Hall

【曲目】
♪ 3つのマズルカ Op.59
♪ 2つのノクターン Op.62~第1番ロ長調
♪ 3つのワルツ Op.64~第1番変ニ長調「子犬」、第2番嬰ハ短調
♪ ポロネーズ第7番変イ長調 Op.61「幻想ポロネーズ」
♪ ♪ ♪
♪ 24の前奏曲 Op.28~第4番ホ短調
♪ 4つのマズルカ Op.68~第4番ヘ短調“絶筆のマズルカ”
<発表!もう一度聴きたい!ショパン・アンコール ベスト3>
♪バラード第1番ト短調 Op.23
♪12のエチュード Op.10~第3番ホ長調「別れの曲」
♪ポロネーズ第6番変イ長調 Op.53「英雄」

30年来応援している仲道さんのピアノをしばらく聴いていなかったので、良さげな内容だったこの公演に出かけたら、6回シリーズの最終回と知った。仲道さんのトークと聴衆の親密な雰囲気から、シリーズに通っている人が多いことが窺えた。リクライニングが売りのHakuju Hallは眠くなりそうで、ここのコンサートに関心が向かず、このシリーズにも気づかなかった。去年初めてこのホールを訪れ、雰囲気も響きもいいし、リクライニングではないコンサートもたくさんあると知ってから、チラシもちゃんと見るようになった。

最終回となる6回目は、ショパンの晩年にスポットを当て、仲道さんのトークと演奏、それにこのシリーズの企画を担い、トークの台本も作ったという浦久俊彦氏との対談も交えた充実した内容。仲道さんが作った台本ではないながら、ショパンやサンドの手紙の朗読なども含め、完全にいつもの仲道ワールドを作っていたのはさすがだ。

話の内容は、晩年になって、ショパンがプライベートな人間関係や健康状態の悪化、戦争の影響による社会の変化など様々な要因で窮地に追い込まれ、それが作曲活動に与えた影響がリアルに伝わってきた。何よりも仲道さんの、他の人の台本であっても自分の言葉で伝える姿勢、ショパンに対する愛情と敬意がひしひしと伝わってきて、話の世界にすっかり入り込んでしまった。リストが幻想ポロネーズのただならぬ曲想を評した言葉や、サンドとの別離の様子、祖国への望郷の念などが、ドキュメンタリーを観ているように心に迫ってきた。

このように、このコンサートでは「お話」の部分が量でも質でも重いうえに、プログラム後半は最終回の特別企画ということで、リクエストによる演奏だったため、メインプログラムにおけるレクチャーのウェイトが必然的に高まった。個人的には、今日演奏しなかった「舟歌」やマズルカ、できればチェロソナタも含め、演奏から晩年のショパンをクローズアップしてもらいたかった。

演奏についてだが、晩年の作品を集めた前半では、ほぼ1作品ごとに長いレクチャーが入ったことで演奏が細切れの印象になってしまった。最初に弾いた3つのマズルカでは、仲道さんならではの溢れる詩情よりも、きっちりと刻銘に拍に乗って弾いている印象だった。それでも、幻想ポロネーズは深刻なヴェールを纏いつつ複雑なテクスチュアによる構造を鮮明に聴かせていたし、アンコールベスト3はどれも充実した見事な演奏だった。前半のマズルカと違って、解き放たれて自由に羽を広げ、雄弁な語りや、情感あふれる歌を聴かせてくれた。3曲を通して演奏してくれたことで、聴く側の緊張感も持続して、最後の英雄ポロネーズでクライマックスを感じることができた。

仲道郁代 ~3台のピアノの響きとともに~ 2017.4.13 なかのZERO大ホール
♪ブログ管理人の作曲♪
合唱曲「野ばら」(YouTube)
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」(YouTube)
金子みすゞ作詞「鯨法会」(YouTube)
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~(YouTube)
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美

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