2月17日(日)東京藝術大学バッハカンタータクラブ
東京藝術大学奏楽堂
【曲目】
1. J.C.バッハ/交響曲ニ長調 Op.18-4
2.バッハ/カンタータ 第105番「主よ、あなたのしもべを裁きにかけないでください」BWV105
S:大田茉里/A:德田あさひ/T:石黒達也/B:坂本樹生
♪ ♪ ♪ 3.バッハ/カンタータ 第21番「私の心は憂慮に満たされていた」BWV21
S:大田茉里、高橋慶/T:石黒達也、久松大騎/B:玉山彰彦
【管弦楽&合唱】
山根風仁指揮 東京藝術大学バッハカンタータクラブ
今年も待ちに待ったカンタータクラブの定期演奏会に夫婦で出かけた。カンタータは名曲の誉れ高い大作の21番と、同時代のやはり名作105番。バッハのこの時代のカンタータは、合唱の活躍の場が多いのも嬉しい。
最初はクリスチャン・バッハのシンフォニー。これがとてもステキだった。瑞々しく颯爽としていて、魅力的なフレーズが生き生きと語りかけ、重なりあい、心踊った。このバッハの末っ子から大きな影響を受けたと云われるモーツァルトのエッセンスも感じ、終楽章はハイドンのピアノコンチェルトなんかも思わせた。表現豊かで抑揚に富み、クリスチャンの晩年の作品がいかに充実しているかを十二分に伝えてくれる演奏だった。これを機に、作品18のシンフォニーをじっくり全部聴いてみたくなった。
カンタータ105番はプログラムの解説によれば、歌詞の元となった聖句には少々ややこしい教えがあるが、平たく云えば、「最後の審判」への恐れと、そこからの救済、解放を願う音楽。演奏からは、全体を支配する厳粛な空気、深みと起伏ある感情表現が見事に伝わってきた。冒頭の管弦楽による前奏では、各声部が一音一音を祈るように奏で、それらが重なり合い、人々の様々な感情がひとつの「思い」に凝縮して行き、合唱へ繋げた。アリアやコラールでの、通奏低音を欠いた独特な響きは、浮遊感がうまく表現されて、手探りで救いを求める一種の不安感を掻き立てた。ソロも皆素晴らしかった。
後半は21番。孤独の不安にかられる前半と、そこから救済され、喜びを高らかに歌い上げる後半から成る。105番と共通点もあるが、こちらは2部構成で音楽はより複雑な様相を呈し、演奏時間も40分にも及ぶ大作。演奏も充実の極みと云える素晴らしいものだった。それは、人の心の弱さや、それを救ってくれるイエスへの感謝と賛美の気持ちなど、演奏者がどの曲でも歌詞を噛みしめ、自分の言葉として共感と愛情を以て表現し、聴き手を同じ気持ちにさせてくれるから。歌詞を持つ合唱メンバーやソリストだけでなく、器楽奏者の演奏からもこのことが感じられ、全員が一体となって大きな福音を伝えてくるのが感じられた。これは、このクラブの持つ大きな魅力で、これがあるから40年近くも聴き続けているのだ。
ソリストも皆素晴らしい。とりわけ印象に残ったのは、藝祭のゼレンカのミサでもステキな歌を聴かせてくれたソプラノの大田茉里さん。奥さん曰く「姿も歌も美しすぎる!」。確かに!大田さんは105番でも珠玉のアリアを聴かせてくれたが、こちらの名アリアでは、声や端正な歌唱の美しさもさることながら、言葉へのより深い追及が身に迫ってきた。言葉を一つ一つ吟味し、言葉の響きと意味がぴたりと一致し、”Not(苦悩)”、“Tod(死)”、“Schmerz(痛み)”といったキーワードの一つ一つが、胸に突き刺さってきた。イエスと魂を歌った高橋さんと玉山さんのデュエットの、こぼれるような自然な幸福感の表現にもホレボレしたし、テノールの石黒さんが切々と歌うアリアのくっきりとした表現は、苦難の道を一層リアルに伝えていた。通奏低音を務めた稲垣真奈さんの、とりわけ第10曲のアリアでの、軽やかな息遣いで雄弁に奏でるチェロにも聴き惚れた。
105番も含め、オーボエのオブリガートもステキだったし、バッハのカンタータは、バッハの音楽の魅力が詰まった宝石箱のような存在だと改めて感じた。指揮を務めた山根さんがプログラムの「カンタータクラブに寄せる思い」で、クラブでずっと通奏低音を受け持ったおかげで、音楽の構造や各パートの役割、演奏のタイミングなどを習得できたと書いていたが、今日の演奏会はそんな経験の賜物だと思えた。今、個人的に大きな心配を抱える身にとって、しばしの癒しと至福の時間をくれたカンタータクラブに感謝!
2018年 東京芸術大学バッハカンタータクラブ藝祭演奏会
♪ブログ管理人の作曲♪
合唱曲「野ばら」(YouTube)
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」(YouTube)
金子みすゞ作詞「鯨法会」(YouTube)
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~(YouTube)
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
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東京藝術大学奏楽堂
【曲目】
1. J.C.バッハ/交響曲ニ長調 Op.18-4
2.バッハ/カンタータ 第105番「主よ、あなたのしもべを裁きにかけないでください」BWV105
S:大田茉里/A:德田あさひ/T:石黒達也/B:坂本樹生
S:大田茉里、高橋慶/T:石黒達也、久松大騎/B:玉山彰彦
【管弦楽&合唱】
山根風仁指揮 東京藝術大学バッハカンタータクラブ
今年も待ちに待ったカンタータクラブの定期演奏会に夫婦で出かけた。カンタータは名曲の誉れ高い大作の21番と、同時代のやはり名作105番。バッハのこの時代のカンタータは、合唱の活躍の場が多いのも嬉しい。
最初はクリスチャン・バッハのシンフォニー。これがとてもステキだった。瑞々しく颯爽としていて、魅力的なフレーズが生き生きと語りかけ、重なりあい、心踊った。このバッハの末っ子から大きな影響を受けたと云われるモーツァルトのエッセンスも感じ、終楽章はハイドンのピアノコンチェルトなんかも思わせた。表現豊かで抑揚に富み、クリスチャンの晩年の作品がいかに充実しているかを十二分に伝えてくれる演奏だった。これを機に、作品18のシンフォニーをじっくり全部聴いてみたくなった。
カンタータ105番はプログラムの解説によれば、歌詞の元となった聖句には少々ややこしい教えがあるが、平たく云えば、「最後の審判」への恐れと、そこからの救済、解放を願う音楽。演奏からは、全体を支配する厳粛な空気、深みと起伏ある感情表現が見事に伝わってきた。冒頭の管弦楽による前奏では、各声部が一音一音を祈るように奏で、それらが重なり合い、人々の様々な感情がひとつの「思い」に凝縮して行き、合唱へ繋げた。アリアやコラールでの、通奏低音を欠いた独特な響きは、浮遊感がうまく表現されて、手探りで救いを求める一種の不安感を掻き立てた。ソロも皆素晴らしかった。
後半は21番。孤独の不安にかられる前半と、そこから救済され、喜びを高らかに歌い上げる後半から成る。105番と共通点もあるが、こちらは2部構成で音楽はより複雑な様相を呈し、演奏時間も40分にも及ぶ大作。演奏も充実の極みと云える素晴らしいものだった。それは、人の心の弱さや、それを救ってくれるイエスへの感謝と賛美の気持ちなど、演奏者がどの曲でも歌詞を噛みしめ、自分の言葉として共感と愛情を以て表現し、聴き手を同じ気持ちにさせてくれるから。歌詞を持つ合唱メンバーやソリストだけでなく、器楽奏者の演奏からもこのことが感じられ、全員が一体となって大きな福音を伝えてくるのが感じられた。これは、このクラブの持つ大きな魅力で、これがあるから40年近くも聴き続けているのだ。
ソリストも皆素晴らしい。とりわけ印象に残ったのは、藝祭のゼレンカのミサでもステキな歌を聴かせてくれたソプラノの大田茉里さん。奥さん曰く「姿も歌も美しすぎる!」。確かに!大田さんは105番でも珠玉のアリアを聴かせてくれたが、こちらの名アリアでは、声や端正な歌唱の美しさもさることながら、言葉へのより深い追及が身に迫ってきた。言葉を一つ一つ吟味し、言葉の響きと意味がぴたりと一致し、”Not(苦悩)”、“Tod(死)”、“Schmerz(痛み)”といったキーワードの一つ一つが、胸に突き刺さってきた。イエスと魂を歌った高橋さんと玉山さんのデュエットの、こぼれるような自然な幸福感の表現にもホレボレしたし、テノールの石黒さんが切々と歌うアリアのくっきりとした表現は、苦難の道を一層リアルに伝えていた。通奏低音を務めた稲垣真奈さんの、とりわけ第10曲のアリアでの、軽やかな息遣いで雄弁に奏でるチェロにも聴き惚れた。
105番も含め、オーボエのオブリガートもステキだったし、バッハのカンタータは、バッハの音楽の魅力が詰まった宝石箱のような存在だと改めて感じた。指揮を務めた山根さんがプログラムの「カンタータクラブに寄せる思い」で、クラブでずっと通奏低音を受け持ったおかげで、音楽の構造や各パートの役割、演奏のタイミングなどを習得できたと書いていたが、今日の演奏会はそんな経験の賜物だと思えた。今、個人的に大きな心配を抱える身にとって、しばしの癒しと至福の時間をくれたカンタータクラブに感謝!
2018年 東京芸術大学バッハカンタータクラブ藝祭演奏会
♪ブログ管理人の作曲♪
合唱曲「野ばら」(YouTube)
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」(YouTube)
金子みすゞ作詞「鯨法会」(YouTube)
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~(YouTube)
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
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