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~余韻嫋嫋~ 松下功追悼演奏会

2019年02月16日 | pocknのコンサート感想録2019
2月14日(木)~余韻嫋嫋~ 松下功追悼演奏会
アンサンブル東風 第20回定期演奏会
紀尾井ホール


1.「海へ、そして夢に」(2015) 室内合奏のための
2.詩曲「天空の光」(2008) 室内オーケストラのための
3.「舞あそぶ音に」(2016) 箏とオーケストラのための
4.「このこと そして・・・」(2009) 邦楽合奏のための
5.和太鼓協奏曲「飛天遊」(1993/94)

日舞:花柳美輝風/箏:遠藤千晶/和太鼓:林 英哲/邦楽合奏:深海合奏団
ショルト・ナジ指揮 アンサンブル東風


作曲家としての創作活動に留まらず、日本作曲家協議会とアジア作曲家連盟の会長として、長年に渡り日本とアジア各国の新しい作品紹介と、作曲家たちの国際交流に尽力してきた松下功。松下氏が長年会長を務めた日本作曲家協議会の末席に加えて頂いている身として、昨年9月の松下氏急逝の報には驚きとショックを禁じ得なかった。松下先生とは直接の面識を持つ機会はなかったが、氏の穏やかな表情と語り口、会報に掲載される謙虚に信念を語る文章、指揮者としての的確で端正な演奏に改めて思いを馳せた。

今夜の演奏会は、氏の藝大退官記念として企画され、「余韻嫋嫋 (よいんじょうじょう) 」という新曲も添えられるはずだった。残念ながらこの新作は永遠に聴く機会を失ってしまったが、これを演奏会のタイトルに冠し、氏の代表作の一つである「飛天遊」を加え、氏とゆかりの各方面で活躍する名手たちが集まり、作曲家・松下功の神髄に触れる掛けがえのない演奏会が実現した。

松下先生の作品をじっくりと聴くのは初めてかも知れない。一連のプログラムに接して感じたのは、気高さ、透明感、繊細さと云った「静」と、時に血沸き肉躍るほどの情熱と生命力が伝わる「動」の二つの要素を併せ持ち、全体が瑞々しい感性の下に調和していること。作品を聴いていると、松下先生の穏やかで、時に厳しい情熱を秘めた表情が目に浮かんでくるようだった。

1分間の黙とうの後に始まった「海へ、そして夢に」。3.11を契機に書かれた映像のための音楽は、穏やかな安らぎと、「斎太郎節」が引用され、深い思いが秘められた部分から成る美しい作品。花柳美輝風の舞は、時に妖艶に音楽の空気感を伝えていた。続く「天空の光」は、柔らかな光がゆらめく幽玄の世界から、エネルギーみなぎる大地の鼓動へと進んで行った。印象的な名前の「舞いあそぶ音に」は、遠藤氏の琴が奏でる優美な和の調べと、室内オケの無調の調べが融合して、反復しながら永遠の連なりを感じさせた。後半最初の「このこと そして・・・」は、琴のアンサンブルによる雅なハーモニーに三味線の単音の粋な音色が映える音響構造が新鮮。優雅な前半と、リズムが躍動する後半のコントラストが見事。歌も入り心が躍った。

そして最後の「飛天遊」でコンサートはクライマックスを迎えた。空気もホールも震わせ、全身がビンビンと揺さぶられるほどの重厚な響きがホールを満たす林氏の和太鼓で始まった音楽は、和太鼓の迫力もさることながら、この楽器がこれほど深くて幅広く、雄弁な表現力を具えていることを実感した。途中の長いソロなど、松下氏はどこまで譜面にしているのだろうか。インスピレーションとインプロヴィゼーションのセンスに溢れ、今まさに音楽が沸き起こるようなリアル感。オケとの共演部分では、ナジ氏指揮アンサンブル東風の体当たり的な迫真の演奏で両者の熱気が合わさり、会場のテンションは最高潮に達した。

余韻がホールに吸い込まれると、ブラボーと盛大な拍手。これに応える林氏が、天から見守っている松下先生に挨拶を送る姿に、松下先生が遺したもの(作品のみならず)の大きさと重さを改めて思い、これが「余韻嫋嫋」と受け継がれて行くことを願った。

♪ブログ管理人の作曲♪
合唱曲「野ばら」(YouTube)
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」(YouTube)
金子みすゞ作詞「鯨法会」(YouTube)
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~(YouTube)
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美

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