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クァルテット・エクセルシオ 第39回東京定期演奏会

2020年11月10日 | pocknのコンサート感想録2020
11月8日(日)クァルテット・エクセルシオ
Vn:西野ゆか、北見春菜/Vla:吉田有紀子/Vc:大友肇 & Vla:柳瀬省太
~第39回東京定期演奏会~
東京文化会館小ホール

【曲目】
1.ハイドン/弦楽四重奏曲 第33番 ト短調 Op.20-3
2.ラヴェル/弦楽四重奏曲 ヘ長調
3.ベートーヴェン/弦楽五重奏曲 ハ長調 Op.29
【アンコール】
♪ ベートーヴェン/弦楽五重奏のためのフーガ ニ長調 Op.137

コロナ禍で演奏会が再開されてからクァルテット・エクセルシオを聴くのは今日で3回目。ホールの入りもまずまず。ヴィオラの柳瀬省太を迎えてのベートーヴェンの珍しい弦楽五重奏曲をメインに、3人の作曲家の個性的な名品が揃った。

最初はハイドン。エクらしい落ち着きのある、統率の取れた演奏。第3楽章の西野さんのヴァイオリンと大友さんのチェロによる歌も沁みた。けれどハイドンでは途中から眠くなってしまった。この曲はハイドンのシュトゥルム・ウント・ドランク期に当たる短調作品で、激しい感情のパトスが迫ってくることを期待してしまうが、そうした強いメッセージ性よりも端正な美しさ、襟を正す佇まいで一貫していたような気がする。それを眠くなってしまった一因と云うのは責任転嫁かな…

続くラヴェルは文句なしに素晴らしかった。空気を包み込むような柔らかさと、水の流れのような流動性と勢いに貫かれていた。その中で、それぞれのパートがくっきり浮かび上がってきたのも印象的だった。特に吉田さんのヴィオラの存在感が心に刻まれ、セカンドの北見さんが作り出す淡くて柔らかな影にも耳を引かれた。フランス的なおしゃれな香りをことさら強調するのではなく、透明感、色彩感などホンモノの美を追及し、終楽章の息もつかせぬ鮮やかなスピード感をはじめとする生きた音楽を聴かせる演奏に脱帽。

ヴィオラの柳瀬さんが加わってのベートーヴェンの弦楽五重奏曲は、交響曲ではまだ第1番しか書いていない30歳のベートーヴェンの知られざる名曲に触れる機会となった。これは、ベートーヴェンらしい激しさよりも落ち着きと歌に溢れた充実の音楽だ。音楽の展開や内声部の豊かな響き、テクスチャーも素晴らしい。終楽章にはフーガも登場。最後にフーガを入れることで音楽の重みを増して充実度が高まる。しかし、突如3拍子のレントラー風の音楽に変わり、民衆のおどけた踊りの様子を描く。これはそれまでの音楽とは異質。でも5人のメンバーは音楽にピタリと波長を合わせ、気分をがらりと変えて遊び心いっぱいに手を取り合ってダンスするような演奏を聴かせた。おかげで「これもありかな」と思えた。

若きベートーヴェンの作品の魅力が伝わったのは、そんな充実した演奏に依るところが大きい。5人のプレイヤーは柔軟に伸び縮みするゴムのような弾力性で、この音楽を伸びやかに奏でていった。ヴァイオリンの西野さんの透明で伸びやかな歌が生え、ゲストヴィオラの柳瀬さんは存在感を示しつつもエクの息づかいに溶け込み、アンサンブルにしっくりとハマっていた。ヴィオラが一つ加わることでカルテットとは異なる独特の潤いのある響きが生まれることを今日の演奏から体験した。こんな充実した若書きの弦楽五重奏曲に出会えたことはベートーヴェン・イヤーならではの収穫だ。記念年にちなんでアンコールで演奏されたフーガは最晩年の作品。これも珍しい作品との出会いとなった。

クァルテット・エクセルシオ ベートーヴェンチクルス第1回 2020.10.14 浦安音楽ホール
クァルテット・エクセルシオ 第37回東京定期演奏会 2019.11.17 東京文化会館小ホール
クァルテット・エクセルシオ 第32回東京定期演奏会 2017.7.8 東京文化会館小ホール
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