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クァルテット・エクセルシオ 第32回東京定期演奏会

2017年07月13日 | pocknのコンサート感想録2017
7月8日(土)クァルテット・エクセルシオ
~第32回東京定期演奏会~
東京文化会館小ホール

【曲目】
1. ベートーヴェン/弦楽四重奏曲 第2番ト長調 Op.18-2
2.シューベルト/弦楽四重奏曲第1番 ホ長調 D353
3.ブラームス/弦楽四重奏曲第2番 イ短調 Op.51-2

昨年の10月、初めて聴いたクァルテット・エクセルシオの演奏にすっかり魅せられ、また聴きたいと思っていて出かけたコンサート。自由席ということをうっかりして、ホールに駆けつけたのは開演15分前だったが、まだ空席はたくさんあった。

最初のベートーヴェン、空気を優しく抱き寄せるような柔らかな出だしを聴いた途端、前回のエクを聴いた感銘が蘇ってきた。エクのメンバーは、4人で作り出す響きに対して明確な香りや色彩のイメージを共有していて、そうした響きへ自然に集まってくる。これは、音を少し聴いただけで「エクの音だ」とわかるもので、24年という長い歳月をかけて熟成して生み出された固有の魅力的な響きがこのカルテットには具わっている。

前半のベートーヴェンとシューベルトでは、とりわけ緩徐楽章が柔らかく深みのある響きと歌い回しで心に沁みてきたが、作品全体の演奏としてみると、もうひと突っ込みできる余地があるように感じ、印象は必ずしも強くはなかった。

エクの本領が発揮されたのは後半のブラームス。前半も悪くはなかったが、完成度としては断然こちらが上で、別次元の演奏と言ってもいい。4人のアプローチは、頑張り過ぎることなく、あくまでも自然体で静かに呼吸しつつ、作品の真髄に迫って行く。晩秋のうす曇りの空から、時おり陽光が射し、薄い影を作ってはまた消える、といった光と影の微妙なグラデーションが織り成す風景が見える。滑らかな絃の調べは、柔らかく上質な筆先で描かれて行く草書体のよう。

悲しいほど澄んで清らかな西野のヴァイオリン、アルコでもピッチカートでもアンサンブルに淡い色彩を伴った影をつけて行く大友のチェロ、そして、山田と吉田の内声が、アンサンブルの内部から芳香を漂わせ、全体を優しく包み込む。詩情を湛えながら、この上なくピュアで、奥に魂が宿ったようなブラームスだった。

クァルテット・エクセルシオ、また聴きに来ようと思った。

クァルテット・エクセルシオ 2016.10.25 サントリーホールブルーローズ
CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~

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