Dangerous partners part2
キム・ヘスは最大限 誇張されるよう絶頂に向かって走る。
セクシャルがかえって彼女には安全装置だ。
韓国映画史を飾った数多くの監督が彼女をミューズに作業したが、
(イ・ミョンセ監督が冬のリンゴのような爽やかな彼女を取りあげた『初恋』、
キム・ジウン監督が新都市の霧の中をさ迷うキム・ヘスを発見した(『スリー メモリズ』)、
キム・ヘスが最もキム・ヘスらしかったのは『顔ない女』からだった。
『顔ない女』で彼女はライオンのような頭に大きなサングラスをかけ、
精神科病院のネオン階段を上がっては下りた。
グラマラスなキム・ヘスは不安な境界性人格障害患者の役に完全に一致した。
「キム・ヘスのハンディキャップが何か分かりますか?」
彼女は体を引き、高いトーンで笑った。
「私は中間がないです。最初と終わりはあるのに、中間がないです。
私はその中間を満たしたい欲望が大きいけど、
目に見えるキム・ヘスはいつも極端でしょう。ハハ」
キム・ヘスに日常のにおいがするのか?
キム・ヘスが食事の仕度をする主婦や 生活戦線に飛び込んだ主婦社員を演じるのを想像できるか?
「それが私のコンプレックスです。 日常性に脆弱なんです。
ドラマ「スタイル」の誇張されたパク記者を演じるのは容易ですが、
「漢江ブルース」の普通の記者は合わないんです。 そのとおりです。
私は普遍的なことが分かりません。幼い時から役者をしてるからとは違います。
役者をしなかったら、かえって私とは関係ない人に関心がなかったでしょう。
私は姉の下階に住んで日常的な生活を過ごしてます。
のんびり何日か過ごし、食事をし…毎日展示会や音楽会に行くわけではありません。
ただ世間と日常性を共有するには、お互いが一致しないんです」

スター キム・ヘスが自然人キム・ヘスを圧倒してしまうこの現象は本人にも興味深い。
「私も世間が考えるキム・ヘスを見て“ワォー!”と驚きます。
ニュースメーカーとなるキム・ヘスは とても自信満々で堂々としていてますから。ハハハ」
“輝くグラマー”としてのキム・ヘスを最も魅力的に活用できるのがチェ・ドンフン監督だ。
それもイメージ過剰ではなく、シンプルでクールにアクセントを生かして。
熱いキム・ヘスを冷たく冷まし、ジャンルの中でセッティングする腕前は、
『タチャ』で頂点を成す。
「チェ・ドンフン監督のエネルギーを経験した後、私は彼を愛して尊敬することになりました」
と、キム・ヘスは満足な微笑を浮かべた。
詐欺師の早いモンタージュが圧巻である『ビッグ・スウィンドル!』で、
チェ・ドンフンは天才的なジャンルの監督という評価を得た。
そして彼はキム・ヘスという女優を想像し『タチャ』のシナリオで“チョンマダム”を作った。
「怖じけたが無条件OKでしたよ。 そしてその経験は私の役者生活の転換になる程強烈でした。
役者とキャラクターの一致点を見つけ、確認する監督との仕事は一生に1度の幸運でした」
だが、彼女は『泥棒たち』プロジェクトでは一番遅く合流した。
チェ・ドンフン監督は彼女を説得するのに大変だった。
「分かりますか? ある人と最高の経験をしたら、それが損なわれるかと思うと、
そのまま保存したい気持ち…『タチャ』の経験を守りたいという欲望と、
次の仕事でさらに成長したいという欲望が衝突した。
特別な過去を越えなければならなかったから」



チェ・ドンフン監督はキム・ヘスの熱烈なファンだ。
「美しい人なので素晴らしいキャラクターを作りたかった。
『タチャ』以降も虎視耽々と機会を狙いましたよ。
ヘスさんを見ると自分の運命の中を歩いていく女性が浮びます。
何が待っているのか分からなくても、目標に向かって突進する…
無謀なことよりはペーソスがある人。
キム・ヘスでなければ誰がそんな役を出来ますか?
映画を作りながらも驚きの連続でした。
彼女は東洋のモニカ・ベルッチです」
大胆に輝く2人の俳優は、チェ・ドンフン監督が“設計した”ルールにより、
香港とマカオ、釜山を巡る超特急プロジェクトに合流する。
一つのチームで活動中である韓国の泥棒ポパイ(イ・ジョンジェ)とエニコール(チョン・ジヒョン)、
噛んだガム(キム・ヘスク)、ジャムパノ(キム・スヒョン)。
美術館をつぶすのに格好良く成功した彼らは、
ポパイの過去パートナーだったマカオパク(キム・ユンソク)が提案した香港での新たな計画を
聞かされる。ここにマカオパクが招かなかったゲストで、
刑務所から出所した金庫破りのペプシ(キム・ヘス)が合流する。
彼らは人生最高の反転を夢見、香港へ向かう。
そこに4人の中国泥棒がこの計画に合流する。
目標はマカオのカジノに隠された稀代のダイヤモンド“太陽の涙”。
危険な計画だが、2千万ドルの甘い誘惑を拒否できない彼らは
“太陽の涙”を盗むため、作業に着手する。
秘密のマカオバクと そのマカオパクを背後から狙うポパイ、
マカオパクに裏切られた過去の記憶を忘れることができないペプシと、
目の前の金を狙うエニコール、そして韓国の泥棒を信じない中国泥棒まで…。
泥棒たちは徐々に自分だけのプランを立てる。
キム・ヘスとイ・ジョンジェは6ヶ月前に撮影が終わった『泥棒たち』を思い出すたび、
興奮する。
「最も完璧で、幻想に近い呼吸、幸せなアンサンブルでした」と、
イ・ジョンジェは左右のバランスが完璧な微笑みを浮かべた。
彼らは しめし合わせたように他の俳優を褒めた。
綱渡りをするチョン・ジヒョンがどれほど活力あふれるのか。
(「彼女には明らかにこの映画が転機になると思います。とても特別な役者です」キム・ヘス)
高層ビルでのキム・ユンソクのアクションシーンがどれほど眩しいのか、
イ・ジョンジェがどれほど格好よくダイナミックに動くのか、
キム・ヘスの水中シーンがどれくらい差し迫って幻想的なのか…、
彼ら自身、俳優に惚れた俳優だ。
「香港に初めて着いた時を思い出します。
ペプシがマカオパクを知らずに対面するシーンでした。
20年間放棄された建物でしたが、空気が本当に違いました。
バルコニーに立つと香港ビューが繰り広げられて暖かい風が吹きました。
俳優には現場がどんなコンディションで進むのかが重要です。
そこは本当にペプシの空間でした」
キム・ヘスは自身が感動する習慣があると認めた。
「マカオパクの台詞の中にこんなのがあります。
“奇跡が私たちのめざす道です”
私はその台詞が本当に好きです。
映画の仕事をしてみると、そのような瞬間に会う時がたびたびあります」
キム・ヘスは自身が『泥棒たち』の一員になったことを誇らしく思っていた。
(驚くべきことに、彼女は俳優としての自分を若干過小評価するくせがある)


そしてイ・ジョンジェが演じるポパイを見て、この映画の感覚を得たと言う。
「ポパイは計略はあるが限界が明確なキャラクターです。
ところがイ・ジョンジェは衝動的で感情的な人物を作り出しました。
映画序盤に彼が韓国泥棒のリーダーとして撮影するので釜山に行ったが…
胸が弾んだ。
これが私たちの映画だと。
私もその泥棒の1人です。手ごわいと感じました」
イ・ジョンジェは映画で鼻髭を付け、犯罪の臭いを漂わせて海を歩き回る。
短い髪に鼻髭を付け、ジャンバーを着てヨットとカジノをうろつくイ・ジョンジェだなんて、
想像しただけで素敵ではないか?
「ポパイを演じている時、本当に面白かったです」
声帯に砂塵を混ぜたドライな声でイ・ジョンジェが言った。
「皆はダイヤモンドを持って逃げようという欲望があるが、ポパイだけその欲望を見破られます。
私の台詞の中にこういうのがあります。
マカオパク(キム・ユンソク)が以前なぜ私を裏切ったかと問うシーンで、
私の返事が圧巻でしした。
“泥棒はそんなこともあるだろ、ナ”ハハハ。 本当に大胆じゃないですか?
泥棒に何を望む? それこそ私たちのアイデンティティでしょう」
『泥棒たち』は超豪華キャストで スチーブン・ソダーバーグ監督の『オーシャンズ イレブン』を
連想させる。
私が彼にキム・ユンソクが『オーシャンズ イレブン』のジョージ・クルーニーなら、
あなたはブラッド・ピットだと言うと、イ・ジョンジェはとても照れくさがった。
「彼らはアメリカのスタイルで、私たちは完全に韓国スタイルです。
私がこの映画で好きなシーンは、派手さより寂しい雰囲気です。
マカオで1回目の作戦が失敗し、香港に帰る船内で泥棒を撮ったシーンがあります。
派手だった日は一瞬にして去り、複雑で息苦しい心情で香港に戻る…、
ア!これが人生なんだな、と感情が吹き荒れます」
私は人生でそのような“苦”を幾度も体験してこそ 本当に魅力的な男になると思う。
そしてイ・ジョンジェはドラマ「砂時計」、映画『若い男』を始め、
過去20年間に数回の浮き沈みを経験した。
レストラン事業家に変身もしたし、スーツビジネスに手も出した。
30代後半はしばらく俳優の本分を忘れて生きたが、
『ハウスメイド』以後、再び撮影現場に戻り、活魚のような魅力を発揮している。
幸いにもイ・ジョンジェの代わりを出来る役者はイ・ジョンジェだけなのだ。
「90年代から2000年代に移る映画会社のチャプターに私がいました。
私には本当に有難い思い出であり、経験です」
パク・クァンス監督の『イ・ジェスの乱』で蓬頭乱髪で失敗した革命家になったイ・ジョンジェ。
キム・ソンス監督の『太陽はない』でスーツをめかしこみ、
狎鴎亭洞の宝石店でダイヤモンドを盗んだイ・ジョンジェ。
(『泥棒たち』のダイヤモンドとは比較できなくほど小さい!)
イ・ジェヨン監督の『情事』で人妻と破格的なセックスを交わした青年イ・ジョンジェ。
そしてクァク・キョンテク監督の『タイフーン』で海賊と戦い、
愛国的な長広舌をならべた国家情報院要員イ・ジョンジェ。
そして相変わらずファッション界の愛を受け、清潭洞のパーティ会場に姿を表わす
自然人イ・ジョンジェ。
シンプルな顔にアクセントのような生き生きとした笑いを秘めた晩年の少年。
一つの完璧なキャラクターが誕生するまで、俳優の人生は、
遠くからそのキャラクターに向かってゆっくり走ってくることを知り、感心させられる。
盗みは自身との戦いというモットーを持った金庫破りのペプシと、
ソフトな顔の裏で強烈な欲望を秘めた泥棒ポパイのように、
イ・ジョンジェとキム・ヘス、彼らが韓国の観客の心を盗む本物の泥棒であっても良い。
キム・ヘスは最大限 誇張されるよう絶頂に向かって走る。
セクシャルがかえって彼女には安全装置だ。
韓国映画史を飾った数多くの監督が彼女をミューズに作業したが、
(イ・ミョンセ監督が冬のリンゴのような爽やかな彼女を取りあげた『初恋』、
キム・ジウン監督が新都市の霧の中をさ迷うキム・ヘスを発見した(『スリー メモリズ』)、
キム・ヘスが最もキム・ヘスらしかったのは『顔ない女』からだった。
『顔ない女』で彼女はライオンのような頭に大きなサングラスをかけ、
精神科病院のネオン階段を上がっては下りた。
グラマラスなキム・ヘスは不安な境界性人格障害患者の役に完全に一致した。
「キム・ヘスのハンディキャップが何か分かりますか?」
彼女は体を引き、高いトーンで笑った。
「私は中間がないです。最初と終わりはあるのに、中間がないです。
私はその中間を満たしたい欲望が大きいけど、
目に見えるキム・ヘスはいつも極端でしょう。ハハ」
キム・ヘスに日常のにおいがするのか?
キム・ヘスが食事の仕度をする主婦や 生活戦線に飛び込んだ主婦社員を演じるのを想像できるか?
「それが私のコンプレックスです。 日常性に脆弱なんです。
ドラマ「スタイル」の誇張されたパク記者を演じるのは容易ですが、
「漢江ブルース」の普通の記者は合わないんです。 そのとおりです。
私は普遍的なことが分かりません。幼い時から役者をしてるからとは違います。
役者をしなかったら、かえって私とは関係ない人に関心がなかったでしょう。
私は姉の下階に住んで日常的な生活を過ごしてます。
のんびり何日か過ごし、食事をし…毎日展示会や音楽会に行くわけではありません。
ただ世間と日常性を共有するには、お互いが一致しないんです」

スター キム・ヘスが自然人キム・ヘスを圧倒してしまうこの現象は本人にも興味深い。
「私も世間が考えるキム・ヘスを見て“ワォー!”と驚きます。
ニュースメーカーとなるキム・ヘスは とても自信満々で堂々としていてますから。ハハハ」
“輝くグラマー”としてのキム・ヘスを最も魅力的に活用できるのがチェ・ドンフン監督だ。
それもイメージ過剰ではなく、シンプルでクールにアクセントを生かして。
熱いキム・ヘスを冷たく冷まし、ジャンルの中でセッティングする腕前は、
『タチャ』で頂点を成す。
「チェ・ドンフン監督のエネルギーを経験した後、私は彼を愛して尊敬することになりました」
と、キム・ヘスは満足な微笑を浮かべた。
詐欺師の早いモンタージュが圧巻である『ビッグ・スウィンドル!』で、
チェ・ドンフンは天才的なジャンルの監督という評価を得た。
そして彼はキム・ヘスという女優を想像し『タチャ』のシナリオで“チョンマダム”を作った。
「怖じけたが無条件OKでしたよ。 そしてその経験は私の役者生活の転換になる程強烈でした。
役者とキャラクターの一致点を見つけ、確認する監督との仕事は一生に1度の幸運でした」
だが、彼女は『泥棒たち』プロジェクトでは一番遅く合流した。
チェ・ドンフン監督は彼女を説得するのに大変だった。
「分かりますか? ある人と最高の経験をしたら、それが損なわれるかと思うと、
そのまま保存したい気持ち…『タチャ』の経験を守りたいという欲望と、
次の仕事でさらに成長したいという欲望が衝突した。
特別な過去を越えなければならなかったから」



チェ・ドンフン監督はキム・ヘスの熱烈なファンだ。
「美しい人なので素晴らしいキャラクターを作りたかった。
『タチャ』以降も虎視耽々と機会を狙いましたよ。
ヘスさんを見ると自分の運命の中を歩いていく女性が浮びます。
何が待っているのか分からなくても、目標に向かって突進する…
無謀なことよりはペーソスがある人。
キム・ヘスでなければ誰がそんな役を出来ますか?
映画を作りながらも驚きの連続でした。
彼女は東洋のモニカ・ベルッチです」
大胆に輝く2人の俳優は、チェ・ドンフン監督が“設計した”ルールにより、
香港とマカオ、釜山を巡る超特急プロジェクトに合流する。
一つのチームで活動中である韓国の泥棒ポパイ(イ・ジョンジェ)とエニコール(チョン・ジヒョン)、
噛んだガム(キム・ヘスク)、ジャムパノ(キム・スヒョン)。
美術館をつぶすのに格好良く成功した彼らは、
ポパイの過去パートナーだったマカオパク(キム・ユンソク)が提案した香港での新たな計画を
聞かされる。ここにマカオパクが招かなかったゲストで、
刑務所から出所した金庫破りのペプシ(キム・ヘス)が合流する。
彼らは人生最高の反転を夢見、香港へ向かう。
そこに4人の中国泥棒がこの計画に合流する。
目標はマカオのカジノに隠された稀代のダイヤモンド“太陽の涙”。
危険な計画だが、2千万ドルの甘い誘惑を拒否できない彼らは
“太陽の涙”を盗むため、作業に着手する。
秘密のマカオバクと そのマカオパクを背後から狙うポパイ、
マカオパクに裏切られた過去の記憶を忘れることができないペプシと、
目の前の金を狙うエニコール、そして韓国の泥棒を信じない中国泥棒まで…。
泥棒たちは徐々に自分だけのプランを立てる。
キム・ヘスとイ・ジョンジェは6ヶ月前に撮影が終わった『泥棒たち』を思い出すたび、
興奮する。
「最も完璧で、幻想に近い呼吸、幸せなアンサンブルでした」と、
イ・ジョンジェは左右のバランスが完璧な微笑みを浮かべた。
彼らは しめし合わせたように他の俳優を褒めた。
綱渡りをするチョン・ジヒョンがどれほど活力あふれるのか。
(「彼女には明らかにこの映画が転機になると思います。とても特別な役者です」キム・ヘス)
高層ビルでのキム・ユンソクのアクションシーンがどれほど眩しいのか、
イ・ジョンジェがどれほど格好よくダイナミックに動くのか、
キム・ヘスの水中シーンがどれくらい差し迫って幻想的なのか…、
彼ら自身、俳優に惚れた俳優だ。
「香港に初めて着いた時を思い出します。
ペプシがマカオパクを知らずに対面するシーンでした。
20年間放棄された建物でしたが、空気が本当に違いました。
バルコニーに立つと香港ビューが繰り広げられて暖かい風が吹きました。
俳優には現場がどんなコンディションで進むのかが重要です。
そこは本当にペプシの空間でした」
キム・ヘスは自身が感動する習慣があると認めた。
「マカオパクの台詞の中にこんなのがあります。
“奇跡が私たちのめざす道です”
私はその台詞が本当に好きです。
映画の仕事をしてみると、そのような瞬間に会う時がたびたびあります」
キム・ヘスは自身が『泥棒たち』の一員になったことを誇らしく思っていた。
(驚くべきことに、彼女は俳優としての自分を若干過小評価するくせがある)


そしてイ・ジョンジェが演じるポパイを見て、この映画の感覚を得たと言う。
「ポパイは計略はあるが限界が明確なキャラクターです。
ところがイ・ジョンジェは衝動的で感情的な人物を作り出しました。
映画序盤に彼が韓国泥棒のリーダーとして撮影するので釜山に行ったが…
胸が弾んだ。
これが私たちの映画だと。
私もその泥棒の1人です。手ごわいと感じました」
イ・ジョンジェは映画で鼻髭を付け、犯罪の臭いを漂わせて海を歩き回る。
短い髪に鼻髭を付け、ジャンバーを着てヨットとカジノをうろつくイ・ジョンジェだなんて、
想像しただけで素敵ではないか?
「ポパイを演じている時、本当に面白かったです」
声帯に砂塵を混ぜたドライな声でイ・ジョンジェが言った。
「皆はダイヤモンドを持って逃げようという欲望があるが、ポパイだけその欲望を見破られます。
私の台詞の中にこういうのがあります。
マカオパク(キム・ユンソク)が以前なぜ私を裏切ったかと問うシーンで、
私の返事が圧巻でしした。
“泥棒はそんなこともあるだろ、ナ”ハハハ。 本当に大胆じゃないですか?
泥棒に何を望む? それこそ私たちのアイデンティティでしょう」
『泥棒たち』は超豪華キャストで スチーブン・ソダーバーグ監督の『オーシャンズ イレブン』を
連想させる。
私が彼にキム・ユンソクが『オーシャンズ イレブン』のジョージ・クルーニーなら、
あなたはブラッド・ピットだと言うと、イ・ジョンジェはとても照れくさがった。
「彼らはアメリカのスタイルで、私たちは完全に韓国スタイルです。
私がこの映画で好きなシーンは、派手さより寂しい雰囲気です。
マカオで1回目の作戦が失敗し、香港に帰る船内で泥棒を撮ったシーンがあります。
派手だった日は一瞬にして去り、複雑で息苦しい心情で香港に戻る…、
ア!これが人生なんだな、と感情が吹き荒れます」
私は人生でそのような“苦”を幾度も体験してこそ 本当に魅力的な男になると思う。
そしてイ・ジョンジェはドラマ「砂時計」、映画『若い男』を始め、
過去20年間に数回の浮き沈みを経験した。
レストラン事業家に変身もしたし、スーツビジネスに手も出した。
30代後半はしばらく俳優の本分を忘れて生きたが、
『ハウスメイド』以後、再び撮影現場に戻り、活魚のような魅力を発揮している。
幸いにもイ・ジョンジェの代わりを出来る役者はイ・ジョンジェだけなのだ。
「90年代から2000年代に移る映画会社のチャプターに私がいました。
私には本当に有難い思い出であり、経験です」
パク・クァンス監督の『イ・ジェスの乱』で蓬頭乱髪で失敗した革命家になったイ・ジョンジェ。
キム・ソンス監督の『太陽はない』でスーツをめかしこみ、
狎鴎亭洞の宝石店でダイヤモンドを盗んだイ・ジョンジェ。
(『泥棒たち』のダイヤモンドとは比較できなくほど小さい!)
イ・ジェヨン監督の『情事』で人妻と破格的なセックスを交わした青年イ・ジョンジェ。
そしてクァク・キョンテク監督の『タイフーン』で海賊と戦い、
愛国的な長広舌をならべた国家情報院要員イ・ジョンジェ。
そして相変わらずファッション界の愛を受け、清潭洞のパーティ会場に姿を表わす
自然人イ・ジョンジェ。
シンプルな顔にアクセントのような生き生きとした笑いを秘めた晩年の少年。
一つの完璧なキャラクターが誕生するまで、俳優の人生は、
遠くからそのキャラクターに向かってゆっくり走ってくることを知り、感心させられる。
盗みは自身との戦いというモットーを持った金庫破りのペプシと、
ソフトな顔の裏で強烈な欲望を秘めた泥棒ポパイのように、
イ・ジョンジェとキム・ヘス、彼らが韓国の観客の心を盗む本物の泥棒であっても良い。