こちらの本についての最終回。
少し引用が長くなるけど、最も心を打たれた一節を。
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レイコ先生はかつて、まったく未経験だった八十歳の男性にピアノを教えたことがあるという。元大学教授で「死ぬ前にどうしてもピアノを弾きたい」とたっての希望だったそうである。それから長年、童謡を中心としたレッスンを続けてきた。九十歳になった時の検査入院で、家族から「もう歩くことも難しい」と連絡をもらい、約十年間のレッスンに終止符が打たれた。
翌年、家族は彼が亡くなったことを手紙で知らせてくれた。
父は最後まで、家のピアノを楽しそうに弾いていました。耳が遠くなって補聴器を着けても、得意の童謡を突っかかりながら弾いて、自分の演奏に満足げでした。この和音は先生に教えてもらったんだ、などと、とても嬉しそうで、あの十年はなにより楽しい学びの時間だった、先生には本当に感謝していると申しておりました。先生、長い間、父に辛抱強くピアノを教えて下さって、本当にありがとうございました。
ピアノの先生とはなんと素敵な仕事だろう。
音楽は人生を豊かにする。
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たまたま図書館で目に留まって借りてきた本だけど、この一節を読み返すためにだけでも、購入しようか迷っています。