【2009年11月19日(木)】電車の中は「気づき」の宝庫である。何かと、心に響くものがある。といって、いつも響いているわけではない。同じ光景でも、気に留めないで見過ごしていることの方がものすごく多いのだが、ちょっとしたきっかけで、「関心」のスイッチがONになる。
人は外出する時には、ほとんど、物を携帯するために「かばん」を持っている。鞄にはビジネス用、トラベル用、スクール用、タウン&スポーツと様々ある。これは社団法人日本かばん協会のホームページで知ったことだが、日本で初めて鞄が作られたのは明治初期で、外国人が修理に持ち込んだものを真似たのが始まりのようである。
しかし、用途から考えると、それよりずっと前となる。武士が鎧を入れるために使った「鎧櫃」(よろいびつ)、庶民が旅行の時に使った「柳行李」(やなぎごうり)など様々な名称の様々な形態のものがあった。同協会による「かばん」の定義は「身の回り品の保護または、運搬を目的とした容器のうち主として、素材を問わず、携帯用に供する容器として用いるもの」である。
ちなみに、小学生の必需品化しているランドセルは、その歴史は古く江戸時代にさかのぼるという。幕末の日本に西洋式の軍隊制度が導入され、同時に荷物を入れて背負う方形のかばん、背嚢(はいのう)も輸入され、これがランドセルのルーツのようである。これをオランダ語で「ランセル」と呼ばれており、やがて「ランドセル」になったという。
また、現在の箱型のランドセルを初めて使ったのは大正天皇である。明治10年に開校した学習院が同18年に生徒の馬車や人力車での通学を禁止し、軍用の背嚢に学用品類を詰めて通学させるようにした。初めはリュックサックに近いものだったが、同20年に、大正天皇の学習院入学を祝して、内閣総理大臣の伊藤博文が特注で作らせたものを献上したのが、その始まりだという。
同じく日本かばん協会のホームページは2008年1月~12月のかばん類輸出通関実績と同輸入通関実績を紹介しているが、それによると、総輸出個数は約400万個で前年に比べて42%強伸び、アメリカ、ドイツへの輸出数量が大幅に増えている。総輸出金額は 約32億円で前年より8%弱下回った。一方、総輸入個数は約6億6,000万個。前年比1.8%増である。中国およびアジア諸国が伸びている。総輸入金額は約3,286億円で、前年を4.4%下回った。
また、矢野経済研究所は2008年の国内の鞄・袋物市場の調査を行い、その概要を公表しているが、それによると、2008年は小売金額ベースで1兆300億円(前年比94.6%)と推計し、2009年は同1兆100億円(同98.1%)と予測している。市場は縮小傾向にあるとはいえ、1兆円の巨大市場である。
電車の中は全員が外出している人である。ほとんどの人は「携帯に供する容器」を持って乗っている。学校名の入った学生の鞄を除くと、誰一人として同じ鞄を持っている人がいない。前の席の真ん中にキャリーバッグを持った男性が座った。その時、「関心」のスイッチがONになった。ビジネスマン風の男性は皆、形態の違う鞄を持っているのに気が付く。従来型の手提げ型はほとんどなく、ショルダー型、パソコンバッグ型、手提げ型でありながらリュックサックのように背負えるタイプ、タウン用のようなカジュアルなものまで、実に様々である。
かつても、同じメーカーのまったく同じ型のものを同じ場所で見かけることはほとんどなかったが、形態は似ていたし、色も黒か茶色であった。ビジネスマンの象徴のようにアタッシュケースを持つ人が街中に溢れていた時期もあった。価値観と言うほど大げさなことではないが、選択の多様性が進んでいることを改めて認識する。
車内の鞄を持っている人の服装を見ると、ネクタイを付けている人は少なく、靴もウォーキングタイプのカジュアルっぽいものが目立つ。ビジネス社会でもカジュアル指向が強くなっているようである。服装や持ち物で人の意識を「しゃきっと」させることがある。今も変わらないが、自由度が拡大している。自由度が拡大した時には、人間そのものの真価が問われてくる。自身を律する意識が弱くなると、「自由」に流されてしまう心配がある。学生の制服論争に似たようなものも感じる。
これからは、人は組織に埋没するのではなく、一人一人の真価を発揮しながら組織を動かしていく時代に入っている。カジュアル化は、その試金石かもしれない。
(荒井)
人は外出する時には、ほとんど、物を携帯するために「かばん」を持っている。鞄にはビジネス用、トラベル用、スクール用、タウン&スポーツと様々ある。これは社団法人日本かばん協会のホームページで知ったことだが、日本で初めて鞄が作られたのは明治初期で、外国人が修理に持ち込んだものを真似たのが始まりのようである。
しかし、用途から考えると、それよりずっと前となる。武士が鎧を入れるために使った「鎧櫃」(よろいびつ)、庶民が旅行の時に使った「柳行李」(やなぎごうり)など様々な名称の様々な形態のものがあった。同協会による「かばん」の定義は「身の回り品の保護または、運搬を目的とした容器のうち主として、素材を問わず、携帯用に供する容器として用いるもの」である。
ちなみに、小学生の必需品化しているランドセルは、その歴史は古く江戸時代にさかのぼるという。幕末の日本に西洋式の軍隊制度が導入され、同時に荷物を入れて背負う方形のかばん、背嚢(はいのう)も輸入され、これがランドセルのルーツのようである。これをオランダ語で「ランセル」と呼ばれており、やがて「ランドセル」になったという。
また、現在の箱型のランドセルを初めて使ったのは大正天皇である。明治10年に開校した学習院が同18年に生徒の馬車や人力車での通学を禁止し、軍用の背嚢に学用品類を詰めて通学させるようにした。初めはリュックサックに近いものだったが、同20年に、大正天皇の学習院入学を祝して、内閣総理大臣の伊藤博文が特注で作らせたものを献上したのが、その始まりだという。
同じく日本かばん協会のホームページは2008年1月~12月のかばん類輸出通関実績と同輸入通関実績を紹介しているが、それによると、総輸出個数は約400万個で前年に比べて42%強伸び、アメリカ、ドイツへの輸出数量が大幅に増えている。総輸出金額は 約32億円で前年より8%弱下回った。一方、総輸入個数は約6億6,000万個。前年比1.8%増である。中国およびアジア諸国が伸びている。総輸入金額は約3,286億円で、前年を4.4%下回った。
また、矢野経済研究所は2008年の国内の鞄・袋物市場の調査を行い、その概要を公表しているが、それによると、2008年は小売金額ベースで1兆300億円(前年比94.6%)と推計し、2009年は同1兆100億円(同98.1%)と予測している。市場は縮小傾向にあるとはいえ、1兆円の巨大市場である。
電車の中は全員が外出している人である。ほとんどの人は「携帯に供する容器」を持って乗っている。学校名の入った学生の鞄を除くと、誰一人として同じ鞄を持っている人がいない。前の席の真ん中にキャリーバッグを持った男性が座った。その時、「関心」のスイッチがONになった。ビジネスマン風の男性は皆、形態の違う鞄を持っているのに気が付く。従来型の手提げ型はほとんどなく、ショルダー型、パソコンバッグ型、手提げ型でありながらリュックサックのように背負えるタイプ、タウン用のようなカジュアルなものまで、実に様々である。
かつても、同じメーカーのまったく同じ型のものを同じ場所で見かけることはほとんどなかったが、形態は似ていたし、色も黒か茶色であった。ビジネスマンの象徴のようにアタッシュケースを持つ人が街中に溢れていた時期もあった。価値観と言うほど大げさなことではないが、選択の多様性が進んでいることを改めて認識する。
車内の鞄を持っている人の服装を見ると、ネクタイを付けている人は少なく、靴もウォーキングタイプのカジュアルっぽいものが目立つ。ビジネス社会でもカジュアル指向が強くなっているようである。服装や持ち物で人の意識を「しゃきっと」させることがある。今も変わらないが、自由度が拡大している。自由度が拡大した時には、人間そのものの真価が問われてくる。自身を律する意識が弱くなると、「自由」に流されてしまう心配がある。学生の制服論争に似たようなものも感じる。
これからは、人は組織に埋没するのではなく、一人一人の真価を発揮しながら組織を動かしていく時代に入っている。カジュアル化は、その試金石かもしれない。
(荒井)
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