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【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第35回 「値下げ」は「客単価アップ」挑戦への好機

2009年11月20日 17時28分17秒 | 今日の気づき
【2009年11月20日(金)】

◆読んだ新聞

 日本経済新聞 11月20日(金) 朝刊 1面


◆記事の見出し

 《食品・日用品の6割 値下げ》《7~10月店頭価格 本社60品目調査》《ティッシュ サラダ油 特売で集客》
 《原料高、値上げの動きも》


◆記事の内容

 ★食品・日用品の店頭価格下落が続いている。日本経済新聞社は、全国のスーパーの販売情報を集める「日経POSデータ」を使い、7月~10月の食品・日用品60品目の店頭価格を調査した。その結果、7月から10月にかけて6割弱の34品目が値下がりした。

 ★調査したのは生鮮食品を除く食品38品目、日用品22品目で、主要メーカー品やPB商品の平均価格を調べた。10月の価格が7月に比べて下がったのは、ティッシュ(下落率4.4%)、食品包装フィルム(同5%)、バター(同3.6%)、サラダ油(同3.3%)など集客の目玉商品が多い。

 ★一方、22品目は値上がりした。食パン(上昇率2.5%)、シャンプー(同1.6%)、牛乳(同0.5%)などである。

 ★店頭価格の推移では、昨年夏までは原材料高騰を受けて上昇したが、昨年9月のリーマン・ショックを機に消費が低迷すると、今年に入り小売各社が値下げ競争に突入した。今年の10月の価格を1月と比較すると、9割弱の52品目が下がり、上昇は1割の6品目にとどまる。昨年1月と比較してもサラダ油、ティッシュなど5割強の32品目が下がっている。

 ★集客をねらった小売の値下げは必ずしも売上の増加につながっていない。価格下落はなお続く可能性が高く、景気の落ち込みを招く恐れもある。


●今日の気づき

 ★一度値を下げた商品を値上げするのは難しい。顧客を「値上げ」に付いて来てもらうためには顧客の所得環境が相当改善しなければならない。また、相当納得してもらえる材料がなければならない。原料高で軒並み値上がりをした時には、顧客は仕方なくという気持ちを抱きつつも、「値上げ」に付いて来た。しかし、所得環境が悪化すると、値下げをしないと、顧客は財布を開けなくなった。顧客が、値下げした商品の値上げを受け入れるほどには所得環境の改善は望めないだろう。値下げした価格が顧客にとっての「値ごろ感」になっている。定着した「値ごろ感」を変えるのは至難のことと言える。

 ★特売も同じである。いつも特売の対象になる商品などの店頭価格の下落は特売チラシを見ている限りは底値感がある。特売価格が通常価格化している。小売業が努力をして特売価格を10円や20円安くしても、顧客は買得と感じなくなっている。基本的には特売常連商品は特売で買うものという認識が強くなっている。冷凍食品は5割引特売で買うものと考えている顧客が多い。値上げすると、顧客は値上げしていないスーパーに奪われてしまう。チラシで特売常連商品を見続けていると、小売の値下げ努力は限界に近く、顧客離れを食い止めるためには値上げもできないという状況にあるように感じている。結果として、特売価格は通常価格化し、通常価格化した特売価格は、ワクワクするような特売の魅力を失いつつあるのではないだろうか。

 ★しかし、小売業側にとっての特売の魅力は集客できるということではないだろうか。問題は特売で集客しても売上増に結び付かなく、客単価が上がらないことである。価格訴求の特売は、現状以上に大きく変化させるのは難しそうである。特売はあくまでも集客手段と考え、客単価アップは他の売場の販売で行うべきだと考えている。小売業は当然、そう考えていることと思われるし、小売のプロが施策を練っても、それができないから売上が低迷しているのであろう。

 ★しかし、顧客の立場で店舗に行くと、考えさせられることがある。例えば、食パンは特売常連商品である。特売では大量陳列されている。食パンが特売で売られていても、インストアベーカリーのある店舗では、インストアベーカリー売場にも顧客はレジにたくさん並んでいる。インストアベーカリーの「値ごろ感」への対応が顧客の支持を受けているのだろうが、インストアベーカリーの食パンは大手メーカーの食パンより高いし、菓子パンも同様である。メーカーパンの2倍以上するような商品は多く買われないかもしれないが、決して安価なパンしか買われないということでもないと思われる。

 ★「低価格」という言葉を聞くと、消費の「二極化」を連想することが多いように思われる。確かに、二極化には違いないが、低価格指向の顧客層と、ちょっと上の価格帯を指向する顧客層に分かれるのではなく、一人の顧客が低価格指向とちょっと上指向を使い分けているのである。特売で集客しても客単価が上げられていないとすれば、ちょっと上指向への対応ができていないのではないだろうか。逆に言えば、ちょっと上指向への対応ができていれば特売による客単価アップ効果が出せるということである。

 ★「値ごろ感」の作り方の問題と言える。特売の「値ごろ感」は出来上がっていて変えるのは難しいかもしれないが、もう一方の「値ごろ感」作りは可能性を秘めている。その可能性を、どれだけ引き出せるかが「デフレ時代」の舵取りの妙味ではないだろうか。

(東)

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