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小売業・IT活用・消費市場の今をウォッチング/WINS企画/東 秀夫wins.azuma@sunny.ocn.ne.jp

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第16回 コンビニにFCビジネスのほころびを見る

2009年10月23日 22時24分09秒 | 今日の気づき
【2009年10月23日(金)】このところ、時代の変化、その変化の基軸が変化していることをうかがわせる記事が多い。そういう視点から、「今」起っていることを新聞記事を1つのセンサーとして見ていくと、時代の大きな転換点に来ていることを感じる。10月23日付の日本経済新聞朝刊11面の左肩に連載《先読みビジネス天気》の4回目が掲載されている。〔コンビニ〕業界を取り上げている。見出しは《低価格対応に遅れ試練》。消費不振の影響を受けて、生活者の節約指向、低価格指向のスピードが予想外に速く、対応が追い付いていないこと、たばこ自動販売機用成人識別カード「タスポ」効果が一巡したことなどが要因に挙げられている。タスポ効果については「特需」と考えるべきで、特需の好影響があった売上に対する前年比を評価するのは少し酷なように感じる。むしろ、特需を生かしきれなかったこと、生かし切れないほど厳しい状況にあることが、コンビニエンスストアの置かれた状況の厳しさを物語っていると言える。また、低価格対応の遅れも、同じくコンビニエンスストアの置かれた状況の厳しさを物語っている。すなわち、不振の原因となった事象の底流にあるものは同じ要素を持っているということである。
 その要素とは、一言で言うなら、これまでの成長を支えてきた従来の「フランチャイズチェーン」というビジネスモデルが時代に適合しなくなってきているということではないだろうか。
 フランチャイズチェーンは、チェーン本部(フランチャイザー) が、店舗規模、営業形態、品揃え、価格、サービス、経営指導などをも含めて、標準化された店舗経営パッケージを加盟店(フランチャイザー)に提供し、加盟店は決められたルールに従って、店舗経営をするというビジネスモデルである。市場の状況が厳しいとはいえ、ある特定の店舗だけが別の運営形態をとることは、原則論ではフランチャイズチェーンのビジネスモデルに反することである。フランチャイズビジネスの根幹にかかわる問題である。セブン-イレブンが消費期限直前の弁当値下げを加盟店に認めたことは時代の大きな変化を象徴する出来事であった。
 社団法人日本フランチャイズチェーン協会はホームページの中で、フランチャイズビジネスのメリットとデメリットを説明している。メリットとしては、知名度のあるチェーン名やマーク・イメージを利用できる、事業経験がなくても本部の指導で事業を開始できる、本部の蓄積された実績と経験・ノウハウが生かされるので成功の確率が高い、本部の経営指導や援助が受けられ営業に専念できる、独立した事業者として営業できる、本部の大量仕入により安価で安定した商品の供給が受けられる、開業物件の立地調査を本部に依頼できる、スケールを生かした販売促進活動に参加できる、等々を挙げている。
 一方、デメリットについては同説明の記述を引用する。「(1)フランチャイザーの提供するフランチャイズパッケージのルールにより、チェーンの統一性が優先され、フランチャイジーは個人のアイデアを自由に生かすことが制限される。店舗のイメージ、取り扱い商品やサービス、メニューなどすべて本部の経営方針に従わなくてはならない。たとえば、勝手に指定以外の商品を販売したり、金額が安いという理由だけで、指定外の備品を使用することなどにも制約がある。また、営業時間・休日なども厳守しなくてはならない。(2)営業権の譲渡や、秘密保持義務などがある。また、契約期間途中での事業終了には一定の条件がある。」とある。いわば、事業経験がなくても独立した店舗オーナーとして事業者になれるが、独立した事業者としての自由度は低い。逆に、事業経験が豊富で経営ノウハウを積んでいる人や自分のアイデアや考え方を経営に大いに反映させていきたいという人には向いていない。
 しかし、当初は、このビジネスにかかわるすべての人にメリットがあったと言える。フランチャイザーは急速にチェーン網を拡大でき収益を上げ事業基盤を強くできる、フランチャイザーは事業経験がなくても店舗オーナーになれ高い収入が得られる、生活者は便利な店ができてありがたく思い消費環境が良くなる、商品メーカーは販売チャネルが拡大し業績がアップする、商品の取引や什器・設備関係の企業、店舗の建築業者、不動産業者も潤う、ことになる。
 これは競合もなく、新業態の市場が店舗を出せば出すほど拡大している時の話である。それでも、直営方式のレギュラーチェーンと加盟店方式のフランチャイズチェーンでは事情が異なるとはいえ、自社競合してでも他社より早く好立地を確保して出店した方が事業として有利に働く時期があった。自社競合しながらも売上が伸びたからである。ところが、競合が激しく、市場が縮小基調にあり、前年対比横ばいが「良好」と言われ、前年割れば「当然」のような状況下では、自社競合で負ける店舗を自ら作るわけにはいかない。時代は大きく変化しているのである。
 東海道新幹線が開通した時、その動力方式は「動力分散方式」を採用していることが話題になった。動力分散方式とは、各編成車両に動力装置を付けて、各車両の総合力で高速走行を実現しようとするものである。各編成車両に動力装置を付けるので車両の製造コストが高くなり、重量が重くなりメンテナンスの手間とコストもかかる。貨物列車であれば動力装置の重量を考慮しなければならないので最大積載重量が減るなどのデメリットがあると言われている。
 これに対峙する方式が「動力集中方式」である。動力装置のない軽量の車両を強力な動力装置を備えた機関車が引っ張る方式である。貨物列車によくある形態である。日本はもともと、曲線、勾配が多く、地盤が弱いなどの理由で、重量が非常に大きくなる機関車を走らせるのは軌道に大きな負担がかかり、軌道を強固にする工事が必要になるため、動力集中方式には向いていないと、動力分散方式が研究され、採用されてきた。両者のデメリットは技術革新が進み、改良が進んで縮小されつつあるが、ともあれ、フランチャイズチェーンのビジネスモデルは、列車の動力集中方式に似ている。技術的なノウハウを蓄積し磨き抜かれた能力を持つ機関車である本部が、店舗である編成各車両の負担をできるだけ軽くし仮説検証を繰り返して見通しが良くなった軌道(市場)を力強く走っているようなものである。ところが、軌道が変化の兆しをあらわにし始めた。それでも走り続けている軌道を外すわけにはいかず、一部の車両に突風が吹いて軌道上を走るのが難しくなるような状況が出てきたりする。それが常態化してきているのである。ビジネスモデルを再構築しなければ脱線の危険性がある。
 そういう意味では、本部の強力な指導によるチェーンオペレーションの展開、加盟店の資本の独立など、フランチャイズチェーンとの共通点はあるが、加盟店(または卸と加盟店)が本部組織を結成していること、本部は加盟店によって結成されたものだから本部の持続的な利益の還元が受けられること、加盟店同士の横のつながりがあることなどの特徴を持つ、動力分散方式に似ているボランタリーチェーンが、さらに注目される時代に来ているのかもしれない。しかし、ボランタリーチェーンであっても革新を続けていかなければ時代の変化に取り残されてしまうことになる。ボランタリーチェーンの詳細については、次の機会に譲るとして、コンビニエンスストアとしては、成功したビジネスモデルの優等生だったフランチャイズビジネスの従来の事業手法が成立しないほどの厳しい地殻変動的な変化の時代を迎えていることは間違いない。地殻変動だから、フランチャイズビジネスの手法自体が時代の変化に適合しなくなってきているのであって、業種業態ごとに差はあるが、他の業種業態でも同様の状況が生まれてくるものと予想される。
 小売業の優等生業態としてトップランナー的存在であったコンビニエンスストアの今後を様々と考える時、鉄道の優等生としてトップランナーだった新幹線とどこか参考になるところがあるように思えてならない。(東)

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