goo blog サービス終了のお知らせ 

WINS通信は小売業のマネジメントとIT活用のための情報室

小売業・IT活用・消費市場の今をウォッチング/WINS企画/東 秀夫wins.azuma@sunny.ocn.ne.jp

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第8回

2009年10月13日 22時56分53秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第1章 顧客はセルフレジを求めている

第9条、第10条


【2009年10月13日(火)】

◆第9条 改善点を修正して実行する

 改善点が見つかれば、改善点を修正する方法を考え、実行することになる。マネジメントサイクルの1つにPDCAサイクルがある。Plan(計画)‐Do(実行)‐Check(評価)‐Act(改善)を順次行い、次のPDCAサイクルにつなげて、これを繰り返すことで、継続的に業務改善をしていこうというものだが、原理は同じである。改善点を修正する方法を考え、実行し、また改善点を見つけて、改善の方法を考え、実行するということの繰り返しである。ここで大事なことは、改善点は、一度、修正して実行すれば、改善が終わるというものではないことを知ることである。
 第8条で、改善点は必ずある、改善点は顧客の態度や行動の中にある、と説明した。改善点は必ずあるという前提に立てば、1つの改善ができても、新しい改善点が必ず見つかるはずである。それは、顧客はセルフレジを求めており、改善点は顧客の態度や行動の中にあるからである。顧客の要求は常に変化し、それは態度や行動に表れる。
 改善は大きく2種類ある。1つ目は、仕組みを改めるような改善である。2つ目は、1つの例として、顧客への近づくタイミング、声のかけ方、話し方、サポートの仕方など、繰り返し学習する中で、顧客との接し方のスキルを向上させるような改善である。いずれの改善にも当てはまる大切なことは、セルフレジを利用する顧客に関心を持ち、顧客の動きに注意を払うことである。その関心を持つこと、注意を払うことの前提になる基軸が、顧客はセルフレジを求めている、ということと、改善点は必ずある、ということである。基軸が定まっていないと認識と判断がぶれてしまう。第1条から第6条までに挙げた「考える」ことで基軸を定めることができる。


◆第10条 仮説検証を怠らない

 仮説検証にも大きく2種類あると言える。1つ目は、計画書を作成するように、きちんと文章にまとめられるような仮説を立てて、計画的に実行し、その結果を検証するというものである。本来、よく言われる仮説検証はこの形である。しかし、顧客と接する小売業の現場では、顧客の動きに対して、瞬間的に判断し、考え、行動し、反省し、次の場面でまた判断し、考え、行動し、反省し、次の判断につなげている。接客の現場では、こうした仮説検証とも言える思考を繰り返し行っている。このような仮説検証と意識しないような仮説検証型の思考が2つ目である。仮説検証を怠らない、ということは、顧客にセルフレジをよく使ってもらおう、顧客サービスを向上させよう、という向上心を忘れないことである。そういう向上心を忘れないでいると、必ず、仮説が思い浮かぶはずである。
 ここでも、セルフレジの導入を成功に導く仮説を立てるためには、仮説の前提がぶれないことが最も大事な要件となる。仮説の前提がぶれると検証結果に振り回されるだけである。
 第1章では、「考える」ことから始めて「検証する」ことまでを10ヶ条にまとめた。考えて、目標を定めて、実行し、検証することで、セルフレジの運用を高度化していくことができる。10ヶ条はつながり合い、関連し合っている。1ヶ条が抜けてもバランスを欠く。例えば、「顧客はセルフレジを求めている」ということを仮説とし、その仮説から始まって、この10ヶ条をめぐることで「顧客はセルフレジを求めている」ことが検証できる。「顧客はセルフレジを求めている」ということが仮説ではなく正しい説へと導かれたことで、さらに「考える」ことを深め、改善点の質を高め、セルフレジの支持率と利用率を上げ、顧客サービスのさらなる向上を可能にしていけるのである。

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第8回 百貨店の「業態転換」!? 

2009年10月13日 22時51分27秒 | 今日の気づき
【2009年10月13日(火)】10月13日は朝刊が休みである。12日付の日本経済新聞朝刊9面を見る。「QVCが通販で扱った婦人服 百貨店で安く販売 まず小田急新宿店で」の見出しが目に入る。テレビ通販大手のQVCジャパンが通販番組で扱いを終えた婦人服を4~6割引程度で販売するアウトレット店を小田急百貨店新宿店に25㎡規模で開くという内容である。出店は期間限定だが、今後も連携を拡充することも検討する考えを持っている。QVCは新規顧客の獲得で、小田急百貨店は他店との差異化でメリットがあるという。自店の売れ残り商品をセールにかけるのではなく、他業態の売れ残り商品のセールに売場を貸すというのは、顧客から見た百貨店像を変えるのではないかという懸念がある。かつて、百貨店は「場所貸し業」と揶揄されたこともある。自主企画商品の開発、自主企画の売場づくりに注力してきた。その中でも、顧客から見た百貨店像の維持には努めてきた。すなわち、顧客の目から見た百貨店業態の形は維持してきたと言える。
 総合スーパーが台頭し大型化した時期に郊外立地の大型総合スーパーのオープニング取材をした時のことである。開店時の入口での来店客の挨拶を終えた役員に話を聞く機会があった。これだけの店舗規模で総合的な品揃えをしていると、顧客は百貨店と間違ってしまうのではないか、百貨店との区別が付かないのではないか、そうすると、商品の品質で百貨店と差があるので、顧客を惑わすことにならないか、と質問した。その役員は、今日の顧客は百貨店と総合スーパーの違いをきちっと認識している、との即答。その理由を教えてくれた。百貨店は、顧客はよそ行きの服装をして靴を履いて行くが、総合スーパーの顧客は、普段着で、履物も普段に履いているもので、サンダルのこともある。オープン時に社長や役員、店長が入口で30分くらい来店客に頭を下げているのは、来店のお礼を言っているだけではなく、顧客の足元を見ているのである。今日の顧客の半分はサンダル履きだった。今日の顧客はこの店を総合スーパーときちんと認識している、と。
 他業態のアウトレット店を誘致してまでも、差異化を図り、来店客、売上を確保していかなければならないという、百貨店の閉塞感にも近い厳しさが伝わって来るが、将来的には百貨店内にミニアウトレットモール街ができるかもしれない。今の生活者は百貨店、総合スーパー、ショッピングセンターなど、小売業から見た業態区分をきちんと認識できるのだろうか。
 一方、同じく12日付の日本経済新聞朝刊13面の「クイックサーベイ」欄に「『百貨店に行く回数が減った』は40%」、「品揃えへの不満強く」の見出し。記事はインターネット調査の結果を分析、紹介したものである。百貨店商法は価格以上の上質な価値を提供することにあったが、百貨店に対しても、顧客の低価格指向が強くなっており、価格も含めた品揃えで、顧客のニーズと大きなギャップがありそうだ、と解説している。また、百貨店に望むものを聞く問いには、「ほかの店にないもの」、「ライフスタイルの提案」で50代の回答率が他世代より多かったと、百貨店の生き残る道を示唆している。
 定年後のセカンドライフを行動的に過ごそうとするアクティブシニアがクローズアップされる時代である。アクティブシニアは自らのライフスタイルを、どこか、または誰かに提案を求めるとともに、それをヒントに、自ら店舗をアソートする意欲のある世代とも言える。受動的に提案を求めているのではなく、能動的に提案を求めている人たちが多くなっているのではないだろうか。調査の結果に学びながらも、50代になると、そういう意識も強くなってくるのではないだろうかと感じている。そういう意味では、消費行動でも多様性を持った世代とも言える。
 百貨店にテレビ通販のアウトレット店が出店すること、シニア世代が百貨店や高級品専門店とともに、低価格指向専門店にも足を運び、自らのライフスタイルに合った店舗、商品を様々な情報を集めてアソートすること。その背景には、総体的に、商品の品質が向上したという消費環境の大きな変化があることは見逃せない。業態、価格、世代という、消費を考える基軸が大きく変化している。基軸の変化を見損なうと、変化の予測を見誤ることにもなりかねない。変化の予測が非常に難しい時代を迎えたが、変化の先にあるものは虚像ではなく実像である。実像である限りは、予測が的を射る可能性は必ずある。その可能性を大きくするのが情報活用であり、情報を読み解く分析力だと言える。 (東)

【随時コラム】時々時々(じじときどき)   第1回 高校生パワー

2009年10月13日 19時15分02秒 | 時々時々(「今日の気づき」に統合)
【2009年10月13日(火)】10月12日は体育の日。各地でスポーツイベントが開催されたが、都内の市のスポーツフェスティバルに参加して高校生パワーを目の当たりにし考えること頻りであった。閉会式の掉尾を飾ったのは高校のダンスクラブによるダンスパフォーマンスだった。市内の高校と隣接市の高校の2校で100人規模のダンスが披露された。楽しそうに踊っているが、息をのむほどの技の切れはない 。当然かもしれない。爆発するようなパワーは伝わってくる。何より驚いたのはクラブ員の多さである。今の高校生事情はわからないが、多分、1校でダンスをしたいという高校生が50人以上も集まるクラブというのはクラブの規模もそうだが、学校内のダンス人口が多いように思う。しかし、それは現状認識の甘さで、現実から見ると、50人規模というのは大きい数字ではなく、クラブに入らないけれどもダンスをしたい人数では、もっと多くなるのかもしれない。
 以前に、テレビで高校生の「ダンス甲子園」という番組を見た記憶がある。自らのアイデンティティ高揚への意識が高く、ダンスが好きだという感性の鋭い高校生がいて、その人数は多くはないと思っていた。ところが、「普通の高校生」と表現すると、その「普通」とは何かと問い詰められそうだが、「普通の高校生」が、こんなにも多く楽しそうにダンスを踊り、内にある何かを発散させるようにパフォーマンスを繰り広げる光景を見て驚く自分の認識の甘さに驚く始末である。パフォーマンスでは、ステージの高校生が、会場の大人たちに楽曲のサビの部分を一緒に踊ろうと、マイク片手に懸命に振り付けを教えている。腕を組んで見ている大人が目立つ。それでも、楽曲が流れると、高校生のパフォーマンスに合わせて、手を振り足を動かす大人もところどころにいる。
 ダンスはヒップホップ系である。ヒップホップと言えば、ラップやブレイクダンスを思い浮かべるが、ダンサーが順番に正面に出てきて、速いステップや回転、宙返りなどの得意技を披露するパフォーマンスが印象的である。アメリカ・ニューヨークのブロンクスでアフロ・アメリカンやカリビアン・アメリカン、ヒスパニック系住民のコミュニティで行われていたブロックパーティから生まれた文化と言われている。アメリカや中南米では、時代ごとに、世界のファッションにまで影響を与えるような音楽が生み出される。その根底にあるものは、自分たちのアイデンティティを高揚させようと、現状を見つめつつ現状を打破していこうとする内なるパワーの表現ではないだろうか。そういうヒップポップの語りかけるものが高校生に共感を与え、広がっているのだとすれば、その光景は現代社会に対する1つのシグナルと言えるのではないだろうか。
 高校生と言うと思い出すことがある。かつて、菓子類の新商品やコンビニエンスストアの売れ筋は、特に女子高生 のテイストに合うかどうかが決め手と、商品開発では女子高生のテイストの研究が不可欠とされていることが、よく話題に取り上げられていた。今もそうだと思う。しかし、当時、自らも含めて、そのことを大人の身勝手と思うことがよくあった。当時は、電車内で、床に座り込んだり、大きな声で乱暴な言葉遣いでしゃべり、周りをはばからずに携帯電話で話し込む高校生が目立っていた。ついつい大人は「最近の高校生は…」と、批判の眼差しで見ていた。口に出して言うこともあった。一方、ビジネスの世界では、女子高生のテイストが大切だと、女子高生を持ち上げ、テレビ番組やワイドニュースショーは、テーマにもよるが、コメントを求めて繁華街の女子高生にカメラとマイクを向けた。女子高生を総称的にとらえて言うのはよくないと思う。商品開発でテイストを求められた女子高生と電車の中で大人に嫌われている女子高生が同一の人物ではないにしても、総じて、大人の女子高生の見方は使い分けていたように感じる。総論的にしか見ていなかった自分がそうだったからかもしれない。うがった見方をすれば、電車や繁華街の女子高生の印象が強くて、最近の女子高生は嫌いだが、売上が取れる商品を作るには女子高生のテイストを借りなければならないと、割り切っている大人がいたかもしれない。
 1960年代、世界中でスチューデントパワーと称されて、大学生が既存の体制や価値観の打倒、変革を目指して、様々な運動を起こした。日本でも学生が大学を占拠し、バリケード封鎖をし、火炎ビンが飛び交い、学生と警察の機動隊が衝突する場面が幾度となく新聞やテレビのニュースに登場した。ベトナム戦争の反対運動が求心力にもなった。浪人生や高校生も巻き込んだ。それが全国の大学に広がっていった。
 視点を変えると、高校生や大学生の年代はマグマのような熱いエネルギーが溜まってくる時期で、その噴出の欲求は誰もが持っているものではないだろうか。体制が制度疲労を起こしていたり、ほころびが生じてきた社会の局面で、そのエネルギーが噴出するのではないだろうか。それが、ある時は学生運動であったり、言葉遣いであったり、携帯電話であったり、ダンスパフォーマンスなのかもしれない。この年代の誰もが持っていて、人が成長する過程で避けて通れないエネルギーの噴出行動とするなら、いつの時代にも、形は違っていても、存在していたと考えられる。そういう若い人たちのエネルギーを引き出し、導いていく術を社会が失っているとすれば、大人たちが築いてきた社会が抱える問題と言える。消費の対象、消費を作り上げるための支援者というだけでなく、若い人たちが主体者で、若い人たちの内に溜まったエネルギーを噴出できる環境をどう創り出していくのかという社会の課題を垣間見る思いがしたスポーツフェスティバルの閉会式であった。(東)

【随時コラム】時々時々(じじときどき)

2009年10月13日 12時26分21秒 | 時々時々(「今日の気づき」に統合)
このコラムはWINS企画・東が担当します。コラム名は「じじときどき」と読みます。時代は一瞬たりとも止まることなく変化し、その変化が進む「時の状態」の表現として「時々刻々(じじこっこく)」という言葉が使われます。一方、生活をし仕事をしている時間または夢の中でさえ、変化の一瞬が瞼に残ることがよくあります。それはいつ来るかわかりませんが、その時の印象を書き留めて残したいと思うことがあります。いわば、一瞬の感受性ですから、自分の置かれた立場や状況で感じ方が違うこともありますが、「その時」の「感じた事実」は「自らがその時に接した事実」として受け止めることが大事ではないかと思っています。時間とともに「あれは、ちょっと違うのではないか。思い込みがあり過ぎるのではないか」、「やっぱり、当たっていたかな」等々、様々と評価が変わるかもしれませんが、「時々刻々(じじこっこく)」の場面にめぐり合った事を、随時に「時々(ときどき)」、自由に書いていこうと考えています。また、WINS通信には、コラムは毎日掲載と週間掲載のものがありますが、これらは「新聞」、「店」、「電車」と題材を定めています。それに対して、「時々時々」は書く題材もタイミングも、定まったものがありません。したがいまして、1か月も書かないことがあるかもしれませんが、1日に2本の原稿を書くことがあるかもしれません。まさに、「時々刻々」の事象を「時々」書くという意味でコラムの名称を「時々時々」(じじときどき)としました。原稿の内容につきまして、肯定することで今の思索が一歩充実すること、または否定することで今の思索が一歩確信できることなど、肯定と否定、ともに読者の皆様の思索が一歩深まり進むことの糧になれば、本コラムが意味のあるものになります。そういうコラムになるよう心がけていきます。

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第7回

2009年10月09日 19時05分15秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第1章 顧客はセルフレジを求めている

第7条、第8条


【2009年10月9日(金)】

◆第7条 利用率20%をめざす

 セルフレジの成功で一番大事なことは、セルフレジに対する顧客のニーズが必ずある、ということを知ることである。顧客のニーズを創り出すのでもなく、顧客にニーズを気付かせてニーズを無理に引き出すのでもない。セルフレジを実際に見せたり、その特徴や使い方をきちっと説明することで、納得して利用し、さらにはリピート利用する顧客がいるということを知ることが大事である。そして、実行することである。
 第1章は、第1条から第6条までが準備編で、第7条から第10条までは実践編である。第2条では、準備編として利用率20%を考えることの背景を説明した。第7条では、実践的に利用率20%を目指すための留意点を説明する。
 留意点は、顧客への告知とサポートに尽きる。告知とサポートは誰に重点を置くのか。どの導入店舗も、最初に心配することの1つに、中高年の顧客が使ってくれるのだろうか、ということがある。そして、導入後すぐに気付くことは、利用者に性別・年齢的な偏りがないことである。セルフレジの特徴と使い方をいかに告知し、顧客の操作をいかにサポートしていくかがポイントとなるが、その相手は性別、年齢を問わないのである。
 かつて取材した店舗で、導入後に顧客から、顧客にレジ操作をさせることに対する苦情が来て、利用率が上がらないケースがあった。新しく配属になった店長が熱心に顧客にセルフレジのことを説明し、アテンダントもそれに習って顧客への対応に取り組んだ結果、同社の他の導入店舗より利用率が上がったという。顧客は誘導されてセルフレジを使っているのではない。自らの意志で使っているのである。顧客自らの意思を引き出せる告知とサポートの大切さがわかる。少なくても、20%の利用率があるという認識で告知とサポートに心がけるべきである。
 顧客は自らの意志でセルフレジを利用していることを示す顧客の行動例がある。2つ挙げる。1つは、1人の顧客が有人レジとセルフレジを使い分けているということである。顧客が自ら判断して使い分けているのである。どの導入店舗にも共通していることである。誘導されて使っているのではない。老若男女関係なく、声かけをしていくことである。
 2つには、これも導入店舗で共通していることだが、子供を連れた顧客や孫を連れた顧客が子供や孫に引っ張られてセルフレジを使っている光景が導入後すぐに見られるようになることである。その光景を見て、成功する、と実感した店舗スタッフや本部の情報システム担当者は多い。当初、アメリカやヨーロッパではセルフレジ導入の効果としてエンターテイメント性は強調されていなかった。日本独特の導入効果とも言われた。セルフレジにエンターテイメント性があると「評価」したのは子供たちである。エンターテイメント性を強くアピールしなくても、子供たちが自ら進んでエンターテイメント性を見つけ出したと言える。
 利用率20%のニーズが必ずあるという認識に立てば、そこに達しなければ、告知とサポートで何かが足りないことを知るべきである。そして、20%との差を埋めるために様々な方法を考え、実行することである。20%に近づく、あるいは達成した店舗では、さらに掘り起こせる利用率はあるとの認識で、さらに上をめざしていくべきである。市場を見渡せば、20%を超えている店舗がある以上、自店は20%が限界か、さらに上に行く可能性があるのか、見極める施策は講じるべきである。
 

◆第8条 改善点を見つける

 程度の差はあるが、改善点は必ずあることを知ることが大事である。課題を見つけ改善することで、運用のレベルを上げ、レジ担当者のスキルを上げ、顧客サービスのレベルを上げることができる。それでは、改善点はどのようにして見つければよいのか。それは、顧客に関心を持って顧客の行動をよく見ていることである。改善点は機械やシステムの中にだけあるのではない。支障なく稼働している以上は、基本的に機械やシステムに問題はないと考えられる。改善点から見て機械やシステムに問題点が発見されることはある。顧客を見ていて、仮に、顧客が困ったことがあれば、それが改善点である。改善点は顧客の態度や行動の中に発見できるのである。
 そして、その改善点は、機械やシステムの問題なのか、運用の問題なのか、接客の問題なのか、人のサポートの問題なのか、具体的に抽出することで、改善が実行される。
 顧客の中に改善点が見出せるということは、顧客のニーズや要求は、時とともに、年齢とともに、経験が増すとともに、状況とともに、常に変化する。小売業が変化対応業であるということは、課題も変化への対応とともに生じていることになる。
 顧客に関心を持つ理由には不正防止の問題もある。万引がなくならないように、セルフレジでも不正は必ず起こると言われている。セルフレジ導入小売業の取材では、概して、セルフレジ導入後に不明ロスが特に増えたことはないという小売企業は多い。故意でないミスもあるが、故意の不正をゼロにすることはできない。常習者の不正は巧みであり進化する。
 いずれにしても、顧客に関心を持つことで、様々な課題、改善点が見えてくる。これが顧客第一主義、顧客起点ということでもある。

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第7回 コンビニはタスポ効果の生かし方が課題

2009年10月09日 19時03分34秒 | 今日の気づき
【2009年10月9日(金)】今回も小売業の2010年2月期の8月中間期決算の記事を取り上げる。10月9日付の日本経済新聞朝刊3面に、大手コンビニエンスストア4社の2009年3月~8月期連結決算が8日に出揃ったとして、4社の決算内容を紹介しながら、小売業の中でも比較的好調だったコンビニエンスストアも長引く消費不振で息切れした状況を解説している。
 主見出しは「コンビニ3社 営業減益に」である。サブ見出しは「3~8月 ファミマ9%、セブンイレブン2年ぶり」、「タスポの効果一巡 低価格競争激しく」となっている。記事では、冷夏で夏物が振るわず主力の弁当・惣菜でスーパーなどとの価格競争が激化したこと、自動販売機でたばこを買うのに必要な成人識別カード「taspo(タスポ)」の導入で店頭でたばこを買う人が増えた、いわゆる「タスポ効果」があったとしながらも、下期はタスポ効果が7月で一巡したことから苦戦しそうだと予想している。
 4社の概要については、ファミリーマートが3月~8月期の連結営業利益が9%減となり、海外を含むセブンイレブンも上期としては2年振りに営業減益となったとしている。サークルKサンクスも営業減益で、ローソンは昨年に子会社化した生鮮コンビニの九九プラスの好調などで連結は営業増益だったが、単独では減益だったことを紹介している。
 今回の記事で気に留まるのはサブ見出しにある「タスポの効果一巡」という文字である。コンビニエンスストアの記事では、タスポの導入後は、特需に匹敵するようなタスポのプラス効果が頻繁に取り上げられ、導入後1年を経ると、効果の薄らいできたことをマイナス要因であるかのように書かれてきた。決算数字を見る限りは、タスポ効果が一巡すると、前年対比売上高の伸び率を下げる要因には違いないが、消費が冷え込む中で、強く営業攻勢をかけることもなく、来店客数が増えた。特需が恒常的に続くわけがない。特需で増えた来店客をどうつなぎ止められるかが大きな営業テーマであろう。来店客数を維持するのが難しい時代に、来店客数が毎月、対前年比で増え続けたことの「強運」とも言えるタスポ効果を今後の営業に、いかに生かしていくのか、コンビニエンスストア業界に期待したい。
 そこで、コンビニエンスストアにもたらしたタスポ効果について調べてみた。
 タスポカードとは、未成年者の喫煙防止対策の一環として、未成年者が自動販売機でたばこを買えないようにするために、成人にのみ発行される成人認識のためのICカードのことである。それに伴い、全国のたばこ自動販売機がタスポ対応に置き換えられた。そして、タスポ対応のたばこ自動販売機は2008年3月から7月にかけて順次稼働することになる。3月に鹿児島県と宮崎県でパイロット稼働し、5月に第1次エリアとして21道県、6月に第2次エリアとして15府県、7月に第3次エリアとして9都県で稼働し全国で稼働を始めた。
 一方、タスポカードの利用より店頭での購入を選ぶ愛煙家がコンビニエンスストアに向かった。タスポ対応のたばこ自動販売機の稼働が進むに連れてコンビニエンスストアがその恩恵を受けることになる。したがって、コンビニエンスストアにとっては特需とも言えるタスポ効果は2008年5月から顕著になりタスポ対応のたばこ自動販売機が全国稼働する2008年7月をピークに、全国稼働から一巡する2009年7月まで続く。
 社団法人日本フランチャイズチェーン協会は正会員のコンビニエンスストア本部11社〔㈱エーエム・ピーエム・ジャパン、㈱ココストア、㈱サークルKサンクス、㈱スリーエフ、㈱セイコーマート、㈱セブン-イレブン・ジャパン、㈱デイリーヤマザキ、㈱ファミリーマート、㈱ポプラ、ミニストップ㈱、㈱ローソン〕を対象に毎月、営業状況を調査し「JFAコンビニエンスストア統計調査月報」として発表しているが、本稿ではタスポ効果がピークだった2008年7月と対比させるために最近5年間の7月の営業状況とタスポ効果が出始めた2008年5月以降の同じく営業状況を下にまとめた。
 同月報の解説でタスポ効果が売上好調要因の1つとして初めて出てくるのは2008年5月である。その後、2009年7月の月報まで毎月、タスポ効果に触れられていた。下の数字は全店ベースだが、売上高を既存店ベースで見ると、2008年5月から2009年5月の間だけが対前年比で増加が続いている。その前後は減少基調である。増加した月の中でも2009年5月は1.0%増で最も伸び率が小さく、同年6月はマイナス2.3%、同年7月はマイナス7.5%と続く。タスポが稼働している月との対比では当然のこととして伸び率が下降している。


社団法人日本フランチャイズチェーン協会・コンビニエンスストア統計調査(全店ベース)より

《年・月》  《売上高》     《店舗数》    《客数》     《客単価》
05年07月 653,806百万円  39,392店舗  1,097,263千人  573円
06年07月 639,710百万円  40,337店舗  1,090,287千人  562円
07年07月 654,090百万円  40,893店舗  1,111,824千人  588円
08年05月 648,846百万円  41,399店舗  1,110,142千人  585円…月報解説でタスポ登場最初
08年06月 648,709百万円  41,367店舗  1,109,338千人  585円
08年07月 745,546百万円  41,443店舗  1,266,246千人  589円…タスポの影響が最大
08年08月 734,252百万円  41,645店舗  1,222,967千人  600円
08年09月 674,226百万円  41,566店舗  1,157,446千人  583円
08年10月 686,766百万円  41,559店舗  1,185,853千人  579円
08年11月 657,758百万円  41,666店舗  1,121,449千人  587円
08年12月 702,129百万円  41,714店舗  1,138,010千人  617円
09年01月 630,177百万円  41,800店舗  1,048,625千人  601円
09年02月 582,856百万円  42,047店舗   995,368千人  586円
09年03月 662,596百万円  42,004店舗  1,121,247千人  591円
09年04月 645,007百万円  42,070店舗  1,122,636千人  575円
09年05月 669,575百万円  42,153店舗  1,161,680千人  576円
09年06月 654,746百万円  42,204店舗  1,163,331千人  563円
09年07月 708,485百万円  42,345店舗  1,237,420千人  573円…月報解説でタスポ登場最後
09年08月 712,864百万円  42,557店舗  1,228,961千人  580円


 一方、上の数字で注目したのは客単価である。2005年7月と2009年7月が同じで、この間、600円前後で推移し、ほとんど変わっていない。一概には言えないが、1人当たり客単価の平均値で見る限りは、たばこを買った顧客は他の商品も買っていることになる。たばこ1個だけの購入者が増えると客単価の平均値を下げることになるからである。
 そこで、全店ベースだが、各年の7月とタスポ効果が出始めた2008年5月、最新統計の2009年8月の1店舗当たりの売上高と来店客数を上の数字から算出した。売上高の単位が百万円、来店客数の単位が千人、店舗数の単位が店で、算出した数字の単位が万円、人と、単位取りに整合性がないが、傾向性はつかめると、あえて計算した。
 下の数字を見ると、1店舗当たりの売上高は2008年7月が最も大きいが、その後も、タスポ導入前と比べると増えている。一方、1店舗当たりの来店客数は同じく2008年7月がピークで、その後は下降傾向だが、タスポ前に比べて、決して少なくなってはいない。来店客数は増えている。


1店舗当たりの売上高・客数(全店ベース)  ※コンビニエンスストア統計調査より算出

《年・月》  《1店売上》 《1店客数》
05年07月 1,660万円  27,855人
06年07月 1,586万円  27,029人
07年07月 1,600万円  27,189人
08年05月 1,567万円  26,816人
08年07月 1,799万円  30,554人
09年07月 1,673万円  29,222人
09年08月 1,675万円  28,878人


 努力しても来店客数が増えない時代である。現状維持すら難しい競争の激しい時代である。小売業の中でも、比較的好調を保っていると言われるコンビニエンスストアでも、既存店ベースの売上高は2000年以降、ほとんどの月で前年割れである。タスポ効果で増えた客数をどうつなぎ止めて、固定客化していくのか。今後の課題と言えよう。(東)


【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第6回

2009年10月08日 22時50分08秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第1章 顧客はセルフレジを求めている

第5条、第6条


【2009年10月8日(木)】

◆第5条 顧客への啓蒙を考える

 顧客のセルフレジへのニーズがあるとはいえ、顧客にセルフレジの理解がなければ利用は進まない。顧客へのセルフレジ利用の啓蒙について、次の3点から考えることとする。
 1点目は、導入日前の啓蒙である。導入前は、既存店であれば特売チラシの活用や店内の案内掲示板などを利用することになるが、導入の目的を明確に告知することが大切である。目的の告知では、レジ待ち時間の解消やプライバシーの保護など、どこでも言われている一般的な顧客のメリットだけでなく、導入する背景にある企業の理念や経営方針、顧客の要望を実現するためなど導入の経緯、店舗が考える顧客サービスの考え方など、「顧客のため」を第一に考えた導入であることを強く訴えることが必要である。その事を社長や店長の写真を添えて、企業・店舗の最高責任者のメッセージとして伝えることが望ましい。小売業は主人が顧客に対面して商品を売り金銭授受を行うのが原点である。店舗の新しい施策についてはトップが直接、顧客に訴えられる方法を考えるべきである。新店舗での導入では、やはり新店オープンを告知するチラシなどの活用となり、内容は同じである。
 2点目は、導入日後の啓蒙である。初めの一定期間は人が直接チラシなどを配りながら、自分でバーコードを読ませて精算するシステムであることや買上点数が多い時には時間がかかるなど、丁寧な口頭での説明が顧客の理解と次への利用を促すことになる。利用が定着してくると、特に全従業員が顧客のセルフレジの利用状況に関心を持つことが大事である。その前提は第3条で触れた通りである。少なくても2割の顧客にニーズがあるとすれば利用状況の現状がどの水準にまで来ているのかがわかる。全員が取り組むという意識があれば、そのかかわり方はいくらでもある。手が空いている時にはアテンダントをサポートすることもできる。困っている顧客に接してアテンダントにバトンタッチをすれば良い。要は、工夫、智恵をどう働かせるかが全員参加の啓蒙となる。ある意味、空気が啓蒙を進めることがある。人の動きや声かけ、顧客への接し方が空気を作る。
 3点目は、店舗での情報発信である。1点目と2点目は人のかかわり方がポイントとなるが、店舗における案内掲示など人によらない情報発信の仕方が中心となる。新しいシステムが導入されたり、仕組みが変わったりすると、その説明が店内掲示などで顧客への告知がなされる。その告知は説明だけで終わっていることが多い。なぜ、導入したのか、その考え方、企業や店舗のコンセプトまで説明されていることが少ない。顧客に店舗のことをよく知ってもらい、顧客との関係性を強くしようと思えば、新しい仕組みが入った時がそのチャンスである。店舗における情報発信の仕方の工夫も大事となる。その告知する内容については1点目、2点目と共通するものである。


◆第6条 運用環境を考える

 運用環境は、顧客の立場と店舗の立場の両方から考える必要がある。顧客の立場からは、わかりやすいこと、使いやすいことがポイントとなる。セルフレジの設置を顧客にわかりやすく大きなボードなどで案内するとか、操作方法をわかりやすくイラストや写真で説明することなども必要である。ホームページでセルフレジ導入ンを告知し、店舗と同じ案内板が見られるようにしているケースもある。
 セルフレジ本体の各部分に、例えばクレジットカードに対応していればカードリーダのところにカードの挿入方法を、対応していなければ目に付くところにクレジットカードが使えないことを明示している導入店もある。スキャナの読み取りやすい位置を示したり、ハカリ部分に手を載せないように書いているケースや、未成年者は購入できない酒・たばこをスキャンすると機械が停止するので係員が来るまで待ってほしい旨を大きく書いて知らせるなど、スムーズな操作ができるように様々なお願いごとや注意してもらいたいことが書き示されている。子供連れの顧客の利用も多く、子供用の踏み台も用意されている。
 わかりやすく、使いやすいように、顧客がミスなく操作できる工夫は店舗のためになることでもある。顧客のスムーズな操作はレジ通過時間を短くするし、アテンダントの出番を多くすると稼働率が下がることにもなる。
 店舗の立場では、利用率を上げるための工夫が大事である。顧客の動線で使いやすいところに設置するとか、これは店舗の考え方で分かれるが、エクスプレスレーンとしての役割を担わせて利用に適した買上点数を示している導入店もある。片や、買上点数の制限を設けていないところもある。有人レジかセルフレジか、選ぶのは顧客の自由意志に任せ、リピート利用の顧客は買上点数が多いと操作時間が長くなることを承知している。プライバシーを守ることを目的に利用している顧客にとっては、買上点数や操作時間の長さは問題にならない。後に並ぶ顧客も状況を判断して、すいているセルフレジや有人レジを選択する。いずれにしても、顧客のレジを選ぶ選択肢を増やし、スムーズにレジを通過できる環境を整えることが大事な留意点となる。
 一方、最も顧客サービスのレベルを落とさないで、気を配らなければならないのは、不正防止対策である。システム的に不正防止機能は組み込まれているが、特に、故意の不正は巧みである。不正しにくい環境を作ることがシステムの不正防止機能を補完する。万引も多い店と少ない店がある。店が作る「空気」による。「空気」は店舗空間の作り方と人による雰囲気作りで決まってくる。乱れの少ない陳列やフレンドリーで機敏な従業員の行動が影響してくる。
 セルフレジは店長からパート社員まで全従業員の協力があって、スムーズな運用ができ、顧客満足度が向上し、利用率を高め、競争力の強い店舗を作り上げる最良のシステムとなるのである。

【木曜コラム】万華鏡/電車の中から   第2回 説得力のある屋上の真っ白な貸し広告看板

2009年10月08日 22時47分57秒 | 電車の中から(「今日の気づき」に統合)
【2009年10月8日(木)】電車の中の光景は車内だけではない。窓の外に流れる風景に目が行くこともある。駅に着いて、次の駅に走り出した時、ビルの屋上にある貸し広告募集の真っ白い看板が目に付いた。驚くほど新鮮に感じた。とはいえ、前はどの広告が描かれていたのか思い出せない。特に、駅前は広告看板が林立している。乱立していると言ってもいいくらいである。ビルの窓ガラスも広告で埋め尽くされていることも珍しくない。駅前の賑やかな看板風景には慣れているが、広告のない白地の看板を見る機会は少ない。白い看板は以前あった広告の撤退だからである。
 駅から走り出したところで、まだスピードが上がっていなかったので、気が付いたのだと思う。それ以降、白い看板を見つけようと、外がよく見えるドアの近くに立って電車の外を眺めるようにした。意外と、白い看板が多いことに気が付く。駅と駅の中間で、ハイスピードで走る電車に座っていたのではわからないところにも白い看板がある。よく通るのに、座っていた時には気が付かなかった場所である。立って外を眺めていると、駅をもう少し走り出したところ、駅の中間、沿線から奥に入ったところなどにも白い看板があるのに気が付く。決まって「広告主募集中」と書かれている。改めて、企業の経費削減策の深刻さが伝わってくる。
 一方、まさに万華鏡のように、覗く角度を少し変えてみると、広告看板のある風景に慣らされていたことに驚く。その驚きが、白い看板に新鮮さを感じたのだと思う。 「街並み」という言葉がある。街並みは様々な顔を持つが、繁華街でない住宅地の駅前が繁華街のように看板で埋め尽くされるが良いのかどうか。社会に悪影響を及ぼす内容以外で、企業の宣伝活動に規制をかけるのは難しい。といって、企業自身が自主規制すると、他の企業に良い場所を取られてしまう。厳しい競争社会では、企業の「良心」が通用しないことが多い。通用するのは、その企業が同質化する企業のマーケティング戦略に巻き込まれない独自性と実力を持っているケースに限る。
 白い看板からは企業の宣伝も商品の宣伝も伝わって来ないが、様々な情報、様々な示唆を与えてくれる。手元に1枚のスーパーのチラシがある。以前に取材した時、参考にもらったものである。特売商品が載っていない、ほとんど白紙のチラシである。その1枚は、表は右上に店名、左上に店舗所在地の地図、真ん中には「本日よりどりバイキングセール 各コーナーお買得品山積み おいしいお米の日」と四角く囲ってイラスト入りで書かれているだけである。左下は「チラシ代は直接お客様へ還元!!」、右下は「裏面はメモに!!」と書かれている。タテ27.2㎝・ヨコ39.0㎝の横長のチラシは印刷のスペースが4分の1か5分の1程度である。裏面はメモに使えるように全面白紙である。1色刷りのコストを思いっきり抑えたチラシである。もう少し印刷スペースを増やして、生鮮3品の一部商品の特売価格を示して「当日追加商品もあります」というコメントを添えているチラシもある。裏面は当然、全面白紙である。
 なぜ、このようなチラシにしたのか聞いてみた。隣にディスカウント指向のスーパーが出店して、シラシ商品をことごとく、さらに安くして販売されるので顧客を奪われてしまっていた。隣の競合店にシラシ価格を知らせないで、顧客には特売を知らせる苦肉の策であると。道路に面したガラス面も外から店内が見えないようにポスターなどを貼っている。結果はどうか。顧客は店に行けば買得商品がたくさんあるのを経験的にわかっているので、逆に、特売商品や値段が載っていない方が期待を膨らませて楽しく来店してくれるようになったという。店には期待を裏切らない品揃えと魅力的な値段設定が求められるが、白紙の方が顧客の想像力に訴えて、多くの情報を与えることもある。
 白い看板はこのチラシのように、様々な事を伝えてくれている。(荒井)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第6回 小売業の異業態間競合は「常態」である

2009年10月08日 22時44分39秒 | 今日の気づき
【2009年10月8日(木)】小売業、サービス業の8月期中間決算の発表が続いている。業績予想の下方修正、赤字決算が目立つ。業績不振の理由として必ず登場してくるのが競合店との競争の厳しさである。10月8日付の日本経済新聞朝刊12面に吉野家ホールディングスの3月~8月期の中間決算の発表記事が掲載されている。主見出しには「吉野家HD 最終赤字3億9100万円」、サブ見出しに「3~8月期 牛丼・ステーキ店低迷」とある。業績不振の主な理由として、「主力の牛丼店がコンビニエンスストアなどとの競争激化で苦戦し…」、「消費者の節約志向が強まり、値引き攻勢をかけているスーパーなど「内食・中食」企業との競争が激しくなった」と、主力業態の低迷を挙げている。牛丼店同士の競争は言うまでもなく、同一商品市場における他業態との競争の厳しさを浮き彫らせている。前回で取り上げたイオンとニトリの記事でも、イオンは競争相手を同業態はもちろんのこと、むしろ、ニトリなどの他業態を意識していることをうかがわせている。
 とはいえ、小売業の競争相手はいつも他業態であったと言える。消費市場が拡大している時は、異業態間の競合は同業態間の競合の前に存在感が隠れてしまっていた。市場が拡大基調にあるので、他業態に奪われた売上は同業態同士で競合しつつ市場を拡大させることで、その影響力を打ち消してきた。まさに「売上がすべてを癒す」という状態であった。
 特に、小売業態としては新興勢力であったスーパー業界は、チャレンジャーらしく、いつも既存業態と競い合ってきたし、事業を脅かす勢力とは、新興勢力ともつばぜり合いを演じてきた。総合スーパー化は百貨店と競合する局面を持つ。専門店事業にも取り組んできた。ファミリーレストランなど外食産業の台頭は家庭内への食材販売に影響すると、自ら外食産業に進出した。中食、外食との競合ではミールソリューションのコンセプトで惣菜売場の拡充を図っている。
 かつて、携帯電話が若者の間に普及し出し電車内での携帯電話の使い方のマナーが悪いと、携帯電話を片手に大きな声で話す若者に社会の非難が集中していた時、コンビニエンスストアは「コンビニの競争相手はケータイ」だとして対策を練っていた。コンビニエンスストアに向いていた若者の支出がケータイに奪われており、それをいかに取り戻すかが課題となっていたのである。
 そのコンビニエンスストアについて、同じ8日付の日本経済新聞朝刊10面に主見出し「加盟店支援 ファミマが140億円」の記事。サブ見出しは「今期、過去最高 販促へ上積み」である。「2010年2月期に、フランチャイズチェーン(FC)加盟店への支援に過去最高の約140億円を投じる。各店の値引きなど販売促進、多店舗展開や弁当類の廃棄コストに充ててもらう」と、その理由を説明している。弁当類の廃棄コストに代表されるように、中食アイテムにおけるコンビニエンスストアの競争相手は弁当を扱う全業態、さらには先に挙げた牛丼店のようなファーストフード店、弁当・寿司・ピザなどの宅配業態など多岐にわたる。中食の宅配ではファミリーレストランも参入している。地元のレストランも昼食時に店頭で弁当を販売する。ビジネス街などでは、弁当や昼食メニューをその場で調理して販売する車が昼食時にだけ出現する。営業時間では24時間営業のスーパーなどとも競合する。
 消費市場が縮小し、競合が激しくなるのにしたがって、ずっと続いていた異業態間競合の実態が鮮明に浮かび上がってきた。新業態の登場もあり、内容、厳しさに違いはあるが、異業態間競合は小売業の宿命的とも言える「常態」なのだろう。(東)

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第5回

2009年10月08日 22時39分18秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第1章 顧客はセルフレジを求めている

第3条、第4条


【2009年10月7日(水)】

◆第3条 全従業員の理解を考える

 セルフレジの導入はレジの仕組みが変わるだけとか、チェッカーなどレジ業務にかかわる従業員だけが関心を持てば良いというものではない。レジを通過する顧客の少なくとも2割がセルフレジを使おうとしている。レジの仕組みの問題ではなく店舗運営そのものの問題である。
 店舗の問題なら全従業員が理解していなくてはならない。例えば、顧客から「セルフレジが入ってレジ待ち時間が短くなって良くなりましたね」、「レジ係の人が少なくなって大変ですね」と声をかけられたとすると、レジ係でないパート社員であっても、「レジ待ち時間が短くなるだけでなく、お客様のプライバシーも守れます。お客様のサービスを向上させるために入れました」とか「人数は少なくなりますが、アテンダントは前よりお客様への接客を良くしようと努力しています。ご不満なことがあれば、いつでも言ってきてください」という会話ができれば、顧客の信頼も強くなる。担当する業務のことだけがわかり決められた作業だけをマニュアル通りにしていれば良いという従業員が多いと店舗力は強くならない。強くするためには、作業は細分化されていても、店舗全体のことに関心を持つ従業員を増やすことが大事である。
 新しいことが始まる時は、それを利用して、従業員が自分の働く職場のこと、店舗のことを学ぶチャンスである。セルフレジについても、事前に、導入の目的やその効果、効果を出すために行わなければならないこと、考えなければならないことなどを全従業員が理解することは競合に強い店舗づくりにとって大変重要なことである。そういう理解を通して、セルフレジ導入は従業員減らしのためではないこと、セルフレジのアテンダントはやりがいのある仕事であることなど、会社の方針、店舗運営の考え方を伝えることができる。従業員は戦力である。戦力が増えれば、さらに強い店舗ができる。セルフレジへの理解を全従業員が持つことは、セルフレジ導入を成功に導く土台となるものである。


◆第4条 接客のあり方を考える

 セルフレジは有人レジより接客レベルが良くなる、というのはセルフレジを経験したレジ担当者の一致した意見である。もし、そうでないとするなら、それは店舗運営の問題か、レジ担当者への教育の問題か、従業員自身の問題と言える。接客レベルが上がると実感しているレジ担当者がいるとすれば、その人が他の人が持ち得ない特別なスキルの持ち主でない限り、誰もが実感できる一般的な評価と言わざるを得ない。
 有人レジの接客では顧客に声をかけられる場合は「苦情」が多い。並んでいる顧客のことを考えていると、「苦情」であれ「感謝」であれ、その顧客との会話を早く終わりたいと思うのは当然である。丁寧な会話、丁寧な接客には限界がある。これに対して、セルフレジのアテンダントは顧客の操作をサポートし、質問にも親切に答える。顧客からは「感謝」される。「苦情」と「感謝」では、「感謝」の方がモチベーションが上がり、仕事へのやりがいが強くなる。強くなったやりがいは、さらにモチベーションを高め、接客レベルを上向かせる。セルフサービス業態においては、従業員がレジを打ち、対面で金銭授受を行うという形だけをとらえて、セルフレジの接客が有人レジの接客よりレベルが下がるという考え方は成り立たない。
 また、セルフレジでは不正防止の対策が求められる。セルフレジの機械の中に不正防止の仕組みが組み込まれているが、故意の不正はそのすき間を縫って発生する。アテンダントは接客と同時に不正防止にも努めなければならない。しかし、セルフレジは従業員との会話を嫌って利用する顧客もいる。不正をしていないのに不正を感じて不用意な声かけをすると、かえって顧客に不快感を与えてしまう。苦情ともなる。声のかけ方、かけるタイミングなど、有人レジとは違う顧客への接し方を考えるようになる。
 スポーツのチーム競技で1人がかけると、全員でどう攻めようか、どう守ろうかと考える。健康者ほど健康への関心が薄いという傾向がある。セルフレジは「無人レジ」ではない。接客すべき担当を必ず配している。接客する従業員がいる限りは、4台に1人しか従業員がいないとはいえ、顧客に喜ばれる接客はどうあるべきかということを考えるようになる。逆に、セルフレジで学んだことは有人レジでも生かされるに違いない。
 バリアフリーの考え方がユニバーサルデザインへと考え方を転換させ、ユニバーサルデザインが障害者にも健常者にも共通して優しいデザインとなったように、セルフレジの接客を考えることは、レジ全体、さらには店舗全体の接客のレベルを上げることにつながる。多店舗導入を進めるスーパーでは、当初はレジ操作に一番強い人をアテンダントに配していたが、今では、顧客がセルフレジに慣れているので、接客に強い人をアテンダントに充てるようにしているという。セルフレジは「無人」の接客ではなく、「有人」の接客として、顧客の満足度を高める接客を可能とする。