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WINS通信は小売業のマネジメントとIT活用のための情報室

小売業・IT活用・消費市場の今をウォッチング/WINS企画/東 秀夫wins.azuma@sunny.ocn.ne.jp

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第12回 

2009年10月19日 22時26分25秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第2章 セルフレジは顧客サービスを向上させる

第17条、第18条


【2009年10月19日(月)】

◆第17条 店長、他部門担当者を交えた情報交換の場を持つ

 セルフレジの導入は店舗の問題ととらえるべきである。レジ係の採用難の解消やレジコーナーの活性化でも、レジコーナーにおける顧客サービスの向上、顧客満足度の向上というのでもなく、店舗として来店する顧客に提供する顧客サービスの向上策と考えるべきである。店舗の問題だから、現場のことを熟知している店長とはいえ、レジ係と正面から向き合って情報交換をすべきである。マニュアル通りの接客ができているかどうかの確認や意見を聞くといったことではない。レジは人と人がリアルに接する現場である。リアルの現場情報は現場の最高責任者が現場担当者に直接聴くのが当然である。作業状況をチェックしたり、報告を聞くのではない。店長の視点ということもあるが、そういう立場からの見方も含めて、上下関係を取り外した情報交換が大事である。
 また、現場担当者以外から見える問題点や感想、意見がある。セルフレジについての顧客の声を他部門の担当者が聞くこともある。問題点が発見されれば、全従業員がメモや口頭で迅速に関係部署に伝えることはもちろんだが、店舗の問題ととらえると、顔を付き合わせて情報を交換し、店長や他部門担当者も含めて、情報を共有し、改善点があるなら智恵を出し合って改善策を考えることが必要である。
 レジコーナーの範ちゅうで考えると、レジ係同士の情報交換、情報共有が必要だが、店舗の範ちゅうになると、店長、他部門担当者など店舗全体の責任者間での情報交換、情報共有が不可欠となる。1つの部署より2つの部署、2つの部門担当者より3つの部門担当者の目を集めた方が店舗全体の視点から、個々の問題点や改善点がよく見えてくる。
 これはセルフレジの問題だけではない。仮に、惣菜に力を入れているのなら、それを惣菜担当者だけでなく、惣菜部門以外の担当者も店舗施策、会社の方針であることを理解すると、様々な意見を引き出し、改善点の抽出と改善策の実行で智恵を集めることができる。売場を歩いていて陳列の乱れがあれば、従業員はどこの陳列でも整え直すのが当たり前だが、惣菜に力を入れていること、その背景などの情報を共有していれば、売場や陳列への関心が強くなる。機敏に商品を整え直す態度は、顧客には陳列されている惣菜商品のイメージを良くする。かつて、青果一筋のベテラン担当者に商品陳列の仕方を聞いたことがある。担当者は、商品が売場から顧客に向かって買ってくださいと声をかけているような陳列を心がけている、と話していた。抽象的だが、具体的な行動が目に浮かぶような印象を持ったことを思い出す。
 そういう店舗風土がそれぞれの売場や業務部門で養われれば、店舗力が強くなる。セルフレジの導入は、そういう店舗の風土作りのきっかけを与える。そういう風土がすでに出来上がっていれば、セルフレジの導入は、顧客サービスの向上、顧客満足度の向上を、さらに押し上げる効果を生み出し、店舗力を強めていくことになる。


◆第18条 店舗で経営者、本部マネジャーを交えた情報交換の場を持つ

 セルフレジの導入、店舗力の強化を企業経営の問題、本部の問題ととらえることが重要である。店舗は売上、利益を生み出す企業経営の最も大事な要である。どんなに素晴らしい経営方針を打ち出しても、どんなに利益の出せる仕入をしても、どんなに魅力的な商品を揃えても、どんなに競争力のある価格設定をしても、店舗にそれらを顧客に提供する力がなければ、売上を上げられないばかりか、ロスを生み出し、利益の確保も難しくしてしまう。店舗の実態は、企業経営そのものを映し出すものであり、本部施策そのものが評価される場所である。企業のすべての活動、すべての業務が結実する場所が、顧客に商品を販売することで売上を作り、利益を得る店舗である。経営者や本部マネジャーは本部で報告を受けるのではなく、企業経営の最も大事な要である店舗に自ら足を運び、現場の状況を自らの目で確かめ、現場の声を自らの耳で聴くことが大事である。店舗数の関係などで、経営トップが店舗に行けない場合は、「経営者が、まず店舗に行く」ということを代替する仕組みを作ることが求められる。
 経営者や本部マネジャーが行動で店舗の重要性を考えていることを示すことは店舗従業員に勇気を与える。勇気を持った従業員はモチベーションを上げ、スキルを向上させ、顧客サービスの向上に結び付いていく。こうした本部と店舗の一体感が店舗力を強め、企業力を強くしていくことになる。それにはどうしても、セルフレジが稼働し、顧客が実際にレジ操作をしている店舗の現場で、セルフレジ担当者と他部門担当者を交えた情報交換により現場のことを一番よく熟知している店長を中心に、セルフレジ担当者を交えて、経営者、本部マネジャーが情報交換をし情報を共有することが不可欠となる。
 厳しい消費環境と激しい競争の中で、今、小売業に求められているのは生活者の支持を集める強い企業力である。それは、消費生活の向上に向けて、人の力と店舗の力を強固に束ね、顧客サービスと顧客満足度を向上させることで実現できる。セルフレジの導入は、そのチャンスと言える。

【月曜コラム】自由席/店ウォッチング  第2回 「598円」特売後の「698円」売価の魅力とは?

2009年10月19日 22時23分58秒 | 店ウォッチング(「今日の気づき」に統合)
【2009年10月19日(月)】消費の節約指向、低価格商品指向が続き、スーパーの特売攻勢が連日続く。1社の特売チラシが1週間に2回、3回と、新聞と一緒に入ってくる。特売商品、特売価格も周期的に同じものがチラシに掲載されてくるのでマンネリ感すら覚える。マンネリ感を覚えつつ、生活者はいつも買っている商品なら特売の時にしか買わなくなっている。特売で買われる割合が多い商品は、極端に言うと、定番売場をもっと小さくして、特売はもっと大きなボリューム陳列をし、もっと大量に販売して、スペースの空いたゴンドラの陳列を活性化させる智恵を絞るというのは無理なことだろうかと思うことがある。逆に、周期的に特売の対象になる商品の定番売場での販売状況はどうなっているのかと興味がわく。POSデータに販売の状況がきちんと記録されているわけだから、それを長年の経験を生かして分析していくと、定番販売、特売、それに応じた陳列、商品アピール等々、どうすれば良いのか、スーパーでは十分検討されていることと思われるが、生活者の立場から見て、こういう特売の設定の仕方、売価設定の仕方は、どういう根拠なのかと思うこともある。生活者の側で見た1つの例を挙げてみる。
 インスタントコーヒーとはいえ、内容量が多いので当然だが、普段は高い印象を持ってしまう商品が、「これは安い」と思う特売がある。月に1回程度の周期で同じ売価で特売チラシに載ってくる 。他のスーパーも同じだから、1か月を待たなくても、買う店舗を変えれば、いつでも買えるという気持ちになり、「これは安い」と思いつつ、「今日、買わなければ…」というワクワク感はなく、もともと内容量が多い商品なので、なくなりかけた頃に買えば良い、という落ち着いた気持ちでチラシを眺めてしまう。そして、スーパーに行ってみると、本当に、連日、こんなにも売れているのだろうかと思う商品がある。
 何年か前にチラシで、インスタントコーヒーの「ネスカフェ エクセラ 250g 598円」の掲載を見て、「これは安い」と思った。それ以降、注目していると、どのスーパーでも、ほぼ1か月周期で「598円」を打ち出してくる。たまに、もう少し高い売価で入ってくることもあるが、「598円」まで下げられると、通常価格より安いといっても、「698円」や「798円」は商品写真と一緒に掲載されるチラシ価格としては精彩を欠いた印象は否めない。チラシ特売の企画内容全体を見れば、魅力ある特売かもしれないが、企画自体が担当者の努力ほどには生活者への訴求力が大きくなっていないので、単品で見ると、どうしても魅力に欠けてしまう。それでも、担当者の努力が小さくなると、もっと訴求力が弱くなる。大変な厳しい時代を迎えたことになる。
 そこで、ある食品スーパーのチラシ特売を追ってみた。2009年9月5日(土)に5日(土)~8日(火)のチラシが入った。6日(日)限り、1人1点限りで「ネスカフェ エクセラ 250g 598円」が掲載されている。特売初日の5日(土)に店舗に行ってみた。定番売場と隣りの通路脇に段ボール箱のまま陳列し、青地に白抜き文字で「お買得品」と書かれたショーカードの下の電子棚札には「698円」と表示されていた。目当ての6日(日) 。同じ売場を訪れると前日と違っているのは、ショーカードが赤地に白抜き文字の「日替り商品」に変わり、電子棚札の売価表示が「598円」になっていることだけである。特売期間は通おうと、7日(月)も訪れてみた。ショーカードと電子棚札が「お買得品」と「698円」に戻っているだけである。8日(火)には新しく気が付いたことがある。こんなにも連日通うつもりはなかったので、「ネスカフェ エクセラ 250g」以外は目に留めなかった。反省の弁でもある。連日、買物カゴを手にして何も買わないで出口に向かうので、怪しまれないかという弱気が気持ちより足の方を先に出口に向かわせていたということもあるが、特売最終日の8日(火)は、まず定番売場のショーカードが「日替り商品」に変わっていた。電子棚札は「698円」である。実は9日(水)も訪れたが、9日(水)のショーカードは「お買得品」に戻っていたので、8日(火)のショーカード は間違いであったことがわかった。もっと驚いたのは、定番売場の「ネスカフェ エクセラ 250g」の横に「ネスカフェ エクセラ」詰替用220g(ビン重量を含まないのでビン詰250g用)が「おすすめ品」698円で販売されている。さらに、段ボール箱陳列の右横のゴンドラエンド棚に9フェースで「ネスカフェ エクセラ 250g」698円、段ボール箱陳列の通路の奥(壁面冷蔵ショーケースの前)のワゴン陳列では「ネスカフェ エクセラ 150g」と「ネスカフェ エクセラ」の詰替用120gをセットで「お買得品」として「698円」で販売していた。定番売場の「ネスカフェ エクセラ」詰替用220g、ゴンドラエンド棚9フェースの「ネスカフェ エクセラ 250g」、ワゴン陳列の「ネスカフェ エクセラ 150g」と「ネスカフェ エクセラ」詰替用120gのセット販売は5日(土)~7日(月)まではどういう状態であったのかは確かめようがない。結局12日(土)まで通ったが、「ネスカフェ エクセラ」の品揃え、陳列、ショーカード、売価は12日(土)までは8日(火)と同じであった。13日(日)以降のことはわからない。
 そして、10月に入ると、11日(日)限り、1人1点限りで「ネスカフェ エクセラ 250g 598円」が10月10日(土)~11日(日)特売のチラシに掲載されていた。今度は店舗を訪れていないが、このコラムを書くに当たって、19日(月)に店舗に行くことにした。定番売場と段ボール箱陳列で「お買得品」のショーカードと電子棚札「798円」の表示。特売の後の「お買得品」として普通に陳列されていた。9月の「お買得品」よりは100円高い売価設定である。
 250g入りだと1か月は持つ。持たなければ、家が近くであれば2人で来店するとか、時間を変えて来店すれば2個買うのは容易である。「598円」前に「698円」で売り、さらに「598円」後も「698円」で売り続けて、売れ続けるのであろうかと考えてしまう。しかも、1か月後には同じような特売が始まるのである。「698円」で売り続けた間の1日限りの「598円」が「ネスカフェ エクセラ 250g」を「698円」で売り続けるアクセルになったのかブレーキになったのか。生活者の目で見ても、知りたいところである。(田中)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第12回 量的飽和から質的飽和に移行している 

2009年10月19日 22時23分22秒 | 今日の気づき
【2009年10月19日(月)】日本経済新聞は月曜日の朝刊に「MONDAY NIKKEI」というニュースの解説ページがある。「NIKKEI NET」に掲載したニュースへのアクセス数に応じて作成した閲覧ランキングから1位のニュースなどを取り上げて編集委員が解説している。10月19日付朝刊15面の「MONDAY NIKKEI」は10月10日-16日のランキングを紹介し、「セレクト」欄で、「ヨウジヤマモト、民事再生手続き」の記事を解説している。見出しは《「安価で おしゃれ」に消費者流れる》。国際的なファッションデザイナーの山本耀司氏が創業した高級ブランドの㈱ヨウジヤマモトが14日に東京地裁から民事再生手続きの開始決定を受けたというニュースの解説である。負債総額は60億円。昨秋からの世界的な景気低迷の深刻さとファッション消費の構造変化が反映したもので、高級品市場が失速し、代わってH&M、ユニクロなど安価なファストファッションが急速に伸びていると分析している。総務省家計調査でも被服及び履物の1人当たり月間平均支出額の減少傾向が止まらないこと、仏ルイ・ヴィトンが東京・銀座への世界最大級の店舗出店計画を撤回したこと、伊ヴェルサーチが日本事業から撤退する見通しであること、欧州でも伊ジャンフランコ・フェレの持ち株会社や仏クリスチャン・ラクロワの経営危機なども表面化していること等を挙げ、世界の高級ブランドも厳しい状況にあることを伝えている。
 この記事を読んで、生活者の消費に対する価値観が大きく変わり始めたことを感じる。リーマンショック以降の世界的な不況が引き金になったわけだが、当初は「買えなくなった」ことで「買わなくなった」としても、見出しにあるように、いったんは「安価でおしゃれ」にシフトした消費が、その価値を認めて、「安価でおしゃれ」に留まる消費マインドが出てきたのではないだろうか。そこまで不況を脱しているわけではないが、「買えなくはない」けれども「買わなくなった」という傾向の消費が出てきたのではないだろうか。「安価でおしゃれ」は、かつての「安かろう、悪かろう」ではない。不況とはいえ、これだけ豊かな消費社会を経験してきた生活者は「安価」であっても「おしゃれ」でなければ、継続的な消費はしない。継続的に消費されているからファストファッションが伸びているのである。それを下支えしているのが素材の品質と加工技術の発達である。これらが大きく市場の構造、消費の構造を変えつつある。生活者も毎年溢れるように提案されてくる多くのデザインやカラーを経験してきた。斬新なデザインには驚きはするが購入する対象にはならないし、購入する対象になるもののデザインには驚きを感じなくなってきている。まさに、市場は飽和状態にある。時代は量的飽和から質的飽和の状態に移っている。全体の品質向上は商品のグレードを形成してきた「仕切り」を取り除こうとしている。生活者が求める商品の価値観、消費の価値観が変化している。かつての延長線上での市場活性化策が成り立たなくなってきているのである。
 20年以上も前の取材である。中国地方の観光都市の商店街にある婦人服専門店を訪れた。観光都市といっても地方の商店街だから華やかな雰囲気はない。「高級プレタポルテ」の看板も目立たない。1店舗だけで営業している高級既製服専門店である。市場は新しい消費を発掘し引き出すことが課題だと「ニーズからウォンツ」と、「ウォンツ」という言葉が頻繁に使われ出した頃である。50~60歳くらいだったと記憶しているが、その男性の店主に聞いた。「ウォンツ商品とはどういう商品だと考えていますか」と。店主の答えは次のようであった。「顧客が欲している商品と言うが、顧客が欲している商品は、かつて自分が着たデザインやカラーであったり、友人が着ていたもの、街で見かけた人が着ていたもの、テレビや映画で女優が着ていたもの、ファッション雑誌で見たものなど、何らかの形で自分が見た経験があるものから選んでいる。しかし、その顧客が本当に欲しているウォンツ商品を提案するということは、その顧客の好みに合った、その顧客が今までに着たことも見たこともない品質、デザイン、カラーを提案すること」だと。深く印象に残っている話であった。今は、そういう「ウォンツ商品」を見つけ出すこと自体が難しくなっているのであろうか。変化の時代に合った発想の転換が求められている。
(東)

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第11回

2009年10月16日 18時41分11秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第2章 セルフレジは顧客サービスを向上させる

第15条、第16条


【2009年10月16日(金)】

◆第15条 不正防止への対応を考える

 セルフレジでは不正の防止が大きな課題である。セルフレジは有人レジに比べて、商品をレジに通さないで店外に出すことが容易であるかのような印象がある。万引はレジに来るまでに発生するので、レジで発生する減損とは区別して考える必要があるが、レジ操作を従業員が行うのと顧客が行うのとではミスが生じる度合が異なると考えるのが普通であり、顧客は故意でミスをしてもわかりにくいと考えるかもしれない。そうしたハンディキャップがあるから、それを克服しようとする意識と努力が生まれ、それが有人レジより顧客サービスのレベルを上げることになる。
 また、従業員がレジ操作を行っているにもかかわらず、顧客のレジでのクレームが多い。商品登録ミスや釣銭間違いである。POSが入っていても入力ミスが生じる。バーコードを正しく読んでも、手入力による値下げ処理やセール売価の変更忘れなどでミスが生じたりする。様々なミスが生じやすい場所であることも、特に、常習者にとっては不正をしやすい場所に映るのかもしれない。
 不正を未然に防ぐことは、店舗経営にとっては減損を減らすことになるわけだが、それだけの効果ではないことも考えなければならない。顧客サービスの向上にとっても大変重要な要素である。
 まず、不正は、店舗にとっても顧客にとっても、メリットがないということである。メリットがないということは、不正を防止することは、店舗にとっても顧客にとっても、メリットがあるということである。店舗にとってのメリットは、減損をなくすとともに、従業員のスキルが向上し、顧客サービスが向上するということに尽きる。システムによる防止策と人による防止策の両方が講じられていないと不正は防止できない。しかし、システムによる防止策を強めると機械が頻繁に停止し顧客の流れがスムーズにいかなくなり、結果として顧客サービスが低下する。緩めれば不正が起きやすくなる。一方、人による防止策を強化すると従業員の作業負荷が大きくなり、顧客に目を向ける度合が下がりかねない。そうなると顧客サービスの低下を招いてしまう。緩くすると不正が起きやすくなる。システムによる防止策と人による防止策は相乗効果と補完効果がある。システムによる防止策を緩やかにしても、人による防止策のフォローがあると、緩やかさが不正に結び付く度合を小さくする。人の負荷も軽減できる。
 万引が起こる原因として、人員削減によって従業員が少ない、店内の巡回が少ない、陳列棚の商品が整理されていない、アルバイトやパート社員が増えて店舗に対する責任を強く感じる従業員が少ない、従業員教育が十分にできていない、声かけができていない、従業員の目が届きにくい死角があるなどレイアウトが悪い、24時間営業など長時間営業で従業員が少なくなる時間帯がある等々、人に関する問題点が指摘される。これらの問題点は、不正防止のハードのシステムだけでは解決しない。システムを活用しつつ、人による防止策が重要になる。店に入った時と出る時にきちんと顔を見てあいさつをされ、声かけをされると、不正をしづらくなり、常習者の来店も遠ざける。明るい声かけは、不正をしない顧客にとっては店舗イメージを向上させる。
 従来の延長線上で、従業員が少なくなるなど不正が起こりやすくなった部分をハードのシステムだけで補おうとするのでなく、店舗運営の方法自体の見直しが必要になる。セルフレジの導入はそのきっかけと、顧客サービス向上のきっかけを与える。
 一方、万引はなくならないと言える。同じように顧客の不正もなくならない。不正が起こらない環境を作ることが大事となる。万引の原因は、経済的な理由やモラルの問題だけでなく、ストレスなども関係していると言われている。経済的に困っていない人や高学歴で地位の高い人が万引をしたり、分別のある大人が欲しくない商品なのに衝動的に万引をするというケースがニュースで報じられたりする。万引や不正は犯罪である。捕まれば罪として罰せられる。仮に、万引や不正が発見されなかったとしても、心底から満足感を得るなどということはあり得ない。ストレス発散の場所探しに追い詰められた人の場合は別かもしれないが、そういう人に「不正」というストレス発散の場所を提供するのでなく、そういう場所に入り込む道を塞ぎ、道を塞ぐことで、専門医の治療に導くべきである。顧客にとっては、セルフレジで不正をすることに何のメリットも見出せない。不正を起こしにくい環境を作ることは顧客サービスの向上に結び付くものである。


◆第16条 レジ担当者同士で常に情報を交換する

 現場のことは現場の人が一番よくわかっている。そのよくわかっている人同士が風通しの良い連携で情報交換することは、全員が現場をより良く知ることになる。現場の状況を熟知しているので、同じ現場の人の話も理解しやすい。レジ担当者同士の情報交換、情報の共有化は、実際に経験した以上の「経験量」を増やすことになる。また、足並みの揃ったスキルの向上を可能にする。環境が人を育てるということがある。スキルが向上した環境にいることで、お互いに触発し合って、お互いのスキルが上がる。経験の浅い担当者もベテランのスキルを環境が作り出す「空気」から吸収することができる。
 また、個人プレーよりチームプレーが目を惹きつけることがある。優秀さが目立つレジ係が1人いるより、レジ係全員が気持ちの良い応対をすることの方が顧客へのアピール度は強くなる。顧客が買物の最後に必ず通る場所であり、従業員と必ず接する場所の雰囲気が良くなることは顧客に対する店舗イメージを高めることになる。
 レジ係はローテーションを組むなど有人レジもセルフレジも担当するのが一般的だが、有人レジとセルフレジを含めたレジコーナー全体のスキルアップは、顧客にとっては、有人レジとセルフレジを区別することなくレジコーナー全体のイメージアップとなり、セルフレジはレジシステムの1つの形態で、どちらも安心して選択できるという印象を与えることになる。共有する情報と経験は、有人レジを担当している時のものとセルフレジを担当している時のものを合わせたレジ業務全体にわたるものであることが大事となる。有人レジでは気が付かなかったこと、できなかったことをセルフレジで行うことが顧客サービスにつながっていくが、セルフレジでは気が付かなかったことが有人レジの視点では改善点として見えてくることがある。
 同じ仕事につく人が同じ仕事に関連した事柄で共通の認識を持てることは、店舗にとっても顧客にとっても、良いことである。共通の認識は、2人より3人の経験、3人より4人の経験のとらえ方を集めた方が深まる。レジ係のチームとしてのスキルの向上は不正の防止効果を高め、顧客サービスの向上を可能にする。

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第11回 書籍のニーズが変わり形態が変わる 

2009年10月16日 18時24分06秒 | 今日の気づき
【2009年10月16日(金)】10月16日付の日本経済新聞朝刊の15面。「ローソン ファミマ サークルKサンクス 共通デザインの書籍販売」の主見出し。サブ見出しは「まず出版7社が参加 売り上げ増へ日販と組む」。競合するコンビニエンスストア大手が同一商品を共同で開発して販売するというのはどういうことなのだろうかと、記事を読み進む。複数の出版社の本を同一のデザイン、サイズに統一することで、顧客には視認性を高めて目立つように、従業員には容易に陳列できるようにすることができる。
 書籍は一般的に、初めはハードカバーで出版し、次に文庫本にするなど、1つの作品を2次利用、3次利用することで1作品当たりの収益性を上げている。2次利用、3次利用でコンビニエンスストアの顧客向けの低コスト・低価格の書籍に作り変えることで、潜在的な読者層の開拓が期待できる。新しい販路を開拓するとともに1作品当たりの収益性を高めたい出版社と書籍の売上を増やしたいコンビニエンスストア大手のメリットが一致した。第一弾として10月20日から出版社7社が参画し、8銘柄でスタートする。こうした取り組みは出版業界初の試みだという。
 早速、日本出版販売のホームページを開くと、10月16日付で「日販 CVS3社合同MD開発商品「DECOMAS」発売」のニュースリリースを掲載している。ニュースリリースによると、DECOMAS (Design Coordination as A Management Strategy)とは出版社共通の背デザインのオリジナル廉価版書籍の通称である。また、コンビニエンスストアの書籍展開の現状をニュースリリースから引用すると、「現在、書店においては、新書や文庫の豊富なアイテムが出版社別に陳列されているが、CVSの書籍展開については、コミック棚での背差陳列が主流だが、限られた少ない売場の中で版型やデザイン等、様々な形態のものがあり、煩雑化していた」とし、開発の経緯について、「①顧客にとって、見やすい・選びやすい売場作りを推進したい。②CVS加盟店のアルバイトでも容易にきれいに陳列できる状況をつくりたい。③出版社の様々な版型の書籍の背デザインを統一することで、①②を解消していけないものか? といった、3社のチェーンバイヤーの要望を受け、日販CVS部MD推進チームが企画、実現したもの。これまでも、コミックや書籍の廉価版は多数発行されていたが、CVS用の出版社共同の統一デザイン書籍は、出版業界初の試み」だと説明している。これにより、書店ルートでは囲い込みきれない顧客を取り込み、潜在的な読者層の開拓と出版界の活性化を目指していくという。
 DECOMASの概要については、次の8点を挙げている。
 ①版型 B6軽装版(廉価版書籍)、背デザインのオリジナルデザインで統一が原則
 ②コンテンツ 書籍2次利用、3次利用コンテンツ
 ③ジャンル ビジネス、自己啓発、時事ネタ、雑学、健康、ファッション(アダルト以外全般)
 ④価格帯 500円~700円位
 ⑤出版社 PHP研究所、KKベストセラーズ、日本文芸社、扶桑社、WAVE出版、アルファポリス、G.B. 他
 ⑥取扱いチェーン ローソン・ファミリーマート・サークルKサンクス 全店舗
 ⑦売場展開イメージ コミックゴンドラ背ざし集合陳列
 ⑧販売期間 60日

 かつて、書籍は家庭の文化度の象徴のように言われ、書斎を持つことに憧れを持つ中年男性が多かったり、何十巻にも及ぶ百科事典を買い揃えインテリアのように飾る家庭も珍しくない時期があった。しかし、最近では、リサイクル古書店ができたこともあるが、新刊を買って読み終えたら、高く売れるうちにリサイクル古書店に持ち込むという人が増えている。一方、CNET Japanは海外報道として、グーグルが現地時間10月15日にフランクフルト国際ブックフェアで、ウェブブラウザがあれば、誰でも購読できる電子書籍販売の新サービス「Google Editions」を2010年前半に立ち上げることを発表したと伝えている。書籍の電子化、図書館の電子化が進んでいる。リサイクル古書や2次・3次利用コンテンツ書籍、電子書籍など、書籍の形態にこだわらない人口が増えている。狭い売場とはいえ、コンビニエンスストアの書籍売場で、何か新しい顧客ニーズが発見されるかもしれない。(東)

【木曜コラム】万華鏡/電車の中から   第3回 ケータイは生活空間も移動させる

2009年10月15日 15時47分40秒 | 電車の中から(「今日の気づき」に統合)
【2009年10月15日(木)】立っている人がほとんどいなく、7人がけの椅子もほぼ空がない午後1時半ごろのJRの車内。何気なく向かいの7人がけの椅子を見ていると、3人が携帯電話に向かって指を動かしている。皆の年齢は想像だが、椅子に向かって左から、ケータイを操作している30代の女性。30代の男性、ケータイを操作している60代の男性、親子らしい20代の女性と40代の女性、70歳前後の女性、ケータイを操作している50代の女性の7人が座っている。多分、ケータイを持っていないとすれば70歳前後の女性一人と思われる。30代の男性は仕事でもよくケータイを使っていそうなサラリーマン風である。親子連れの母親は40代くらいと思われるが、親子で連れだって出かけるほどだから、普段からケータイで連絡を取り合っていてもおかしくないと勝手に思ってしまう。
 総務省が2009年1月に調査した「平成20年通信利用動向調査」によると、携帯電話・PHSを保有する世帯の割合(保有率)は95.6%で昨年より0.6ポイント増加した。利用率では、過去1年間に携帯電話を使ったことがある人は、6歳以上人口の75.4%に及ぶ。世代別では、「20~29歳」が最も多く97.3%。そのほかでは、「6~12歳」29.8%、「13~19歳」83.6%、「30~39歳」96.7%、「40~49歳」94.8%、「50~59歳」88.4%、「60~64歳」78.6%、「65~69歳」54.5%、「70~79歳」40.6%、「80歳以上」25.4%である。また、利用率は各年齢階層とも男性、女性で少し差はあるが、「65~69歳」の女性は45.0%、「70~79歳」の女性は42.8%である。親子連れの母親がケータイを持っている可能性は90%以上、唯一、ケータイを持っていないだろうと思われる70歳前後の女性も40%以上の確率でケータイ保有者の可能性がある。携帯電話に対する質問内容と携帯電話の普及状況からして、利用したのが、人の携帯電話を借りただけ、というケースは少ないと考えられる。社団法人電気通信事業者協会がまとめた2009年9月末の携帯電話の累計契約数は1億963万3,800件である。日本の総人口に近づきつつある。
 いつもの見慣れた電車内の光景だが、改めて、ケータイ利用者の多さに思いが及んだ。コラムの題材になると思い、メモ用のノートに、向かいの7人の推定年齢と性別を書いている時、前にばかり気を取られて横には気が回らなかったのだが、左隣りの両耳にイヤホンを当てた20代前半の女性のケータイにマナーモードでメールが入ったようで、その女性は慌てるようにケータイを取り出してメールを打ち出した。そして、イヤホンを付けたまま次の駅で降りていった。これも、見慣れた光景である。多分、隣りの女性は電車に乗っていながら、自分の部屋にいるような空間を電車の中に持ち込んでいるようである。確かに、考えごとをしていると、周りのことが目に入らずに自分の世界に浸っていることはある。しかし、携帯電話と携帯型AV機器の発達は生活環境を大きく変えている。自分だけの音と映像の空間を持ち歩くことを可能にし、ゲームを楽しむこともできる。しかも、自分ひとりでなく友だちとゲームで競うこともできるのである。インターネットにつなげばリアルタイムの空間はもっと広がる。
 別の日の電車の中だが、若い女性が歌を口ずさむような仕草をしながら足でリズムを取っている。音楽を聴いているだけでなく、時々、音を確認するように、ノートに何かを書き込んでいる。歌詞を書き込んでいるようでもあり、音符を付けているようでもある。作詞か作曲をしているのかもしれない。乗り合わせた人たちで共有している電車の中の時間と空間に、一人ひとりが自分の部屋にいる時以上の広い空間を持ち込んで、思い思いの時間を過ごしている。駅に着くたびに、そういう空間が入れ代わり立ち代り入ってくる。
 ITの発達は何事をも、ものすごく便利にしたし、一人ひとりの生活環境も大きく変えた。今後のITの発達を考えると、今は近未来の生活の入口かもしれない。あまりにも急速に便利になったので、便利さに付いていくのが精一杯で、付いていけないことの方が多いのだが、もしかして、「便利さ」を使いこなす術を持っている人はまだ少ないのではないだろうか。ITの発達に、なかなか付いていけていない自分をかえりみた時、降りる駅に着いた。駅を出ると、そういうことを感じさせなく、いつもの通り、人が往き来している。(荒井)

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第10回

2009年10月15日 15時45分31秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第2章 セルフレジは顧客サービスを向上させる

第13条、第14条


【2009年10月15日(木)】

◆第13条 顧客の要求に関心を持つ

 顧客の要求に応えることで顧客サービスが向上する。顧客サービスを向上させるためには、顧客の要求に関心を持ち、顧客の要求を理解しなければならない。セルフレジは、導入しただけでは対面の接客を求めない顧客に対するだけのサービス向上になる。スーパーのレジレーンにおける有人レジの接客サービスには限りがあって、「有人」というだけで、「有人」で行えるサービスの可能性を最大に発揮できるものではない。とは言え、セルフレジは有人レジに比べて、レジ台数に対するレジ係の数が少ないというハンディキャップがある。それを補い克服することで顧客サービスの向上が実現できるのである。
 また、ハンディキャップがある故に、ハンディキャップがない時には見えなかったことが見えるようになって、それに対応することで顧客サービスが向上するのである。顧客の要求に関心を持つとは、有人レジでは見えなかった顧客の要求を発見することでもある。時として、有人レジの丁寧過ぎる接客や声かけに嫌気を感じる顧客もいる。声かけの仕方はセルフレジの方が深く研究されることがある。セルフレジのアテンダントはマニュアル通りの接客や言葉遣いでは顧客に満足を与えられない。プラスアルファの「考える接客」が求められるからである。
 顧客の要求に関心を持ち、顧客の要求を理解するには、次の3つの視点が重要である。
 1つ目は、顧客が要求している内容を理解することである。これは表面に具体的に現れるものだから理解しやすい。しかし、これへの対応に追われているだけでは、レジとして、店舗としての顧客サービスレベルの向上には結び付かない。根本的な問題を解決しなければ、同じことの繰り返しで終わってしまう。問題が生じた時には、その問題の意味するところ、問題が発生する背景を突き止め、それらの解決がなされない限り、問題が解決したことにはならない。
 2つ目は、顧客が要求している内容の意味を理解することである。これは、3つ目の、要求の背景の理解と関連していることだが、同じ顧客の要求する内容が変わることがある。例えば、操作方法を説明したボードを見やすくしてほしいという要求があったとする。顧客の視力が落ちて見えにくくなっているのかもしれない。文字を大きくするだけで普遍的な解決に結び付くとは限らない。その顧客にとっては、それで問題が解決するかもしれないが、1人の顧客に問題が生じていれば、同じ問題を新しく抱え出している顧客がいる可能性がある。そうすると、対処療法的な解決策ではなく、ユニバーサルデザイン的な発想による問題解決策が必要になる。文字数を減らして文字を大きくするとか、イラストを多用するとか、設置場所を変えるとか、照明を工夫するとか、様々なアイデアが出てくるはずである。そうなれば、視力が落ちていない顧客にも見やすい説明ボードとなる。
 具体的な目の前の1人に対する具体的な問題解決策は、顧客全体に通じる普遍的な問題解決策に変え、店舗としての顧客満足度の向上を実現していくことを可能にする。「意味を理解すること」は「要求の背景」と「顧客の変化」等々、根本的な問題を解決することにつながる。
 3つ目は、顧客が要求する背景を理解することである。顧客の要求は改善点である。極めて個人的な要求もあると思われるが、それはよく吟味すればわかることである。一般的には、1人の顧客の要求は他の顧客にも通じることが多い。改善の要求が出てくる背景は様々ある。要求が1つの形として顕在化してくるまでには様々な原因があり、それらの原因が絡み合っていることが多い。ここでは、その一部を挙げてみる。

①システム上の問題。操作性も含めたハード、ソフトの問題である。

②設置環境の問題。設置場所、設置のレイアウト、顧客の動線など、レジ周りの問題である。

③レジ係の問題。アテンダントの対応の仕方とか、人にかかわる問題である。

④運用上の問題。セキュリティ対策の計量機能が過敏に反応するとか、インストアマーキングのバーコードラベルの貼り方が悪くスキャナで読み取らせにくいなどの問題である。

⑤店舗の問題。セルフレジに対する店内教育が不十分で、レジ係以外の従業員にセルフレジについて聞いても適切な答えが返ってこないといった問題である。セルフレジについての質問に誰もが答えられる必要はない。答えられる従業員に引き継ぐことができるかどうかである。そういう教育がなされているかどうかである。

⑥本部の問題。セルフレジをレジの問題で終わらせているのか、顧客サービスの問題、経営の問題と位置付けているのか、本部の方針の問題である。本部の方針によって、店舗の対応も変わってくる。あり得ないことだが、もしも、店舗が本部の方針に従っていないとすれば大問題である。店舗が本部の方針をどう実現しようとしているのか、本部は方針実現に取り組んでいる店舗の状況をどこまで把握しているのか。本部の問題は店舗の問題に反映する。店長が代わってセルフレジの利用率が上がったという例をよく聞く。店長の問題は本部のリーダーシップの問題である。

⑦競合店との比較の問題。セルフレジを導入している競合店と比べているかもしれない。顧客自身が競合店のセルフレジを使った経験がなくても、人づてに聞いた競合店情報と比べているかもしれない。
 
 根拠や背景のない要求はあり得ない。背景はもっとあるはずである。背景の構成要素を細かく見ていくと、解決すべき具体的な問題点が抽出されてくる。背景を探り当てることなくして問題の解決はない。すなわち、背景を知らずして顧客の要求に応えることはできないのである。


◆第14条 顧客の要求に応える努力をする

 顧客の要求の背景を第13条で見てきた。要求の根拠や背景がわかれば、それを改善する努力をするだけである。改善すべき問題点がわかれば、問題点の半分以上は解決したと言える。
 顧客の要求に具体的に応えるためには、どこが、いつまでに、どういう形で、応えていくのか、具体的な行動計画を立てなければならない。レジ段階で対応するのか、店舗段階なのか、本部段階なのか、行動主体の明確化と、その行動スケジュールも立てなければならない。そして、顧客の要求はどの状態で応えられたと言えるのか、対応しながら見極めなくてはならない。見極めるためには、顧客に関心を持たなければならない。顧客に関心を持つことで、別の要求をキャッチすることもできる。
 顧客の要求は具体的に示されて来るとは限らない。顧客の要求に関心を持ちながら、要求を「感じ」、迅速な判断、迅速な対応が求められることの方が多いかもしれない。要求に対する、その達成度は顧客の反応に表れる。顧客の反応は顧客サービスの評価と同一である。セルレジによって、顧客への関心度が高まり、顧客の要求に応える行動につながっていくと、顧客サービスのレベルは必ず上がる。上がらないとすれば、そのプロセスに問題がある。その問題を発見し、解決することで顧客サービスが向上する。いずれの努力も顧客サービスの向上に結び付いていく。その起点となるのが、セルフレジ導入による顧客への関心度の高まりである。

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで 第10回 百貨店の「経営の再建」と「存在価値の蘇生」

2009年10月15日 15時44分20秒 | 今日の気づき
【2009年10月15日(木)】百貨店不振の記事が続くが、百貨店は「経営の再建」と併せて「存在価値の蘇生」が求められているのではないだろうか。経営の再建という観点では、集客のため、売上アップのために、低価格商品指向の専門店や低価格商品の導入など、非日常的買物指向の店舗から日常的買物指向の店舗にシフトさせるなど、様々な経営再建策が考えられるが、それでは仮に、競争に強い店舗が作れたとしても、「百貨店であること」が失われてしまうかもしれない。「百貨店であること」の意味には業態としての百貨店と存在価値としての百貨店がある。業態としての百貨店を維持するのが困難なら、「百貨店の時代は終わった」として、より生活者に支持される業態に生まれ変わるべきである。それと併せて存在価値としての百貨店の蘇生も必要ではないかと思われるのである。そういう危機感が迫る厳しさが伝わってくるのが、10月15日付の日本経済新聞朝刊13面の記事である。
 主見出しは「地方百貨店、再建を急ぐ」。サブ見出しには「大和、4店閉鎖/岩田屋、大手の完全子会社に」、「業績不振打開は不透明」と。大和は全7店舗中の4店舗の閉鎖だが、閉鎖する4店舗の合計売上高は2009年2月期で169億円。全体の2割強だという。経営資源を集中して業績の改善を図る。岩田屋は三越伊勢丹の完全子会社として再建に取り組むことになる。そして、その左下には「セブン&アイ 西武渋谷店にスーパー導入」の記事。渋谷店の地下食品売場の約1,700㎡のうち約1,200㎡が食品スーパーの「ザ・ガーデン・プラス」になる。運営はそごう・西武の子会社シェルガーデンが行うが、仕入・品揃えはヨークベニマルとイトーヨーカ堂が全面的に協力する。高級指向でなく、セブン&アイのPB「セブンプレミアム」も約400品目を扱い、日常の買物に対応した値ごろ感のある店舗にするという。
 百貨店は、当初、上流階級や富裕層をターゲットに高級品、一流品、輸入品など、一般の小売店では手に入りにくい商品を手がけ、美術品や工芸品、骨董品なども販売し、文化の発信拠点の要素も持っていた。戦後は高級品から大衆商品までを幅広く扱うことで発展してきたが、出店地域にとっては、ステータス・シンボル的な存在であった。歳暮・中元などの贈答品では百貨店の「包装紙」に価値があった。同じ商品でも、どの百貨店の「包装紙」なのかによって、贈答品の格付けに差が出るということがあった。地方にも百貨店が誕生しグレードの高い店づくりをしてきたが、地方によっては、都市型の有名百貨店の包装紙に包まれた贈答品より地方百貨店の包装紙に包まれたものの方が、贈った相手にありがたく思われることもあった。
 百貨店で買物をすることが憧れであり、百貨店で買物をしたことで生活のレベルが上がったと思う時代があった。その後、売上ナンバーワンの地位をスーパーに奪われ、百貨店という業態を形成していた壁が少しずつほころび、変化していくことになるが、地域の生活者にとっては「うちの地域には、この百貨店がある」と、百貨店は誇れる存在であった。百貨店は再建で何を目指していくのか。経営数値の改善だけでなく、存在価値を蘇らせることも生き残りの道ではないだろうか。そのためには何をすべきか。形態を維持するのではなく、元の形がなくなるほど大変革を行ったとしても、地元の人たちに「うちの地域には、この店がある」と誇れる存在に蘇ることが求められているのではないか。百貨店に限らず、「うちの町には、……がある」と言うことはよく聞くことである。そういうことも目指す再建を望みたい。(東)

【第1回 セルフレジ成功の100ヶ条】セルフレジの成功が小売業の成功を導く  第9回

2009年10月14日 23時51分10秒 | セルフレジ成功の100ヶ条(内容整理中)
第2章 セルフレジは顧客サービスを向上させる

《章のはじめに》および第11条、第12条


【2009年10月14日(水)】

《第2章のはじめに》第2章のテーマは「セルフレジは顧客サービスを向上させる」である。セルフレジを導入する前の小売業の方々は、ほとんどと言ってよいほど、セルフレジを導入することで顧客サービスが低下するのではないか、顧客から苦情が来るのではないか、と心配される。今まで、従業員が行っていたレジ操作を顧客にやらせて、しかも金銭授受も機械に向かって顧客自身が行うわけだから無理もない。しかし、導入店舗が増えてくるにしたがって経験を積み、顧客がセルフレジを操作する姿を見て、対面で接客しないことも顧客サービスの1つの形態、と話す経営者や現場のマネジャーが多くなってきた。今では、顧客はセルフレジと有人レジを自らの意志で自由に選べるので、レジを選ぶ選択肢が増えたこと、対面の接客を好まない時にセルフレジがあることで、顧客サービスが向上するという認識が一般的になってきた。よくよく考えてみると、レジに並んでいる顧客を待たせることなくスピーディにレジを通過させようとすると、1人の顧客と言葉を交わす時間は限られてくる。接客にというより、笑顔と丁寧な声かけに気を配りながら正確・スピーディなレジ処理に、神経を集中させなければならない。しかし、セルフレジではレジ4台に1人のアテンダントとしても、1人のアテンダントが4人の顧客に同時に対応することはない。セルフだから基本的にはサポートは不要である。顧客に対応する場合では、顧客と言葉を交わす時間は有人レジより長くなる。対面のサポートが必要でない顧客には「対面で接客しない顧客サービス」を提供し、対面のサポートが必要な顧客には「有人レジより長い応対」が可能となる。顧客サービスが向上するのは当然である。それでも、やはり対面の接客を好む顧客は有人レジを選べば良い。レジでの顧客サービスの向上は店舗全体の顧客サービスの向上にも結び付いていく。
 一方、顧客サービスの向上はシステムの導入だけで実現できるものではない。運用の仕方、サポートの仕方によるところが大きい。運用、サポートを含めてレジの仕組みと考えると、セルフレジ導入による顧客サービスの向上は店舗力の向上になる。店舗は企業の収益現場である。「利は元にある」と、小売業では仕入の大切さがよく言われるが、良い仕入をしても、顧客サービスが悪くて顧客が来店してくれなければ、仕入の努力が収益に反映しない。飛躍的な言い方になるかもしれないが、セルフレジの導入は小売企業の経営問題でもある。
 第2章の10ヶ条は以下通りだが、前半の第11条から第15条は、顧客サービス向上の出発点とも言える顧客への関心の持ち方をまとめた。また、後半の第16条から第20条は、セルフレジ導入は店舗経営の問題であり企業経営の問題であるという観点から、情報の共有と成果の共有を中心にまとめた。
  
第11条 顧客に関心を持つ

第12条 顧客の行動に関心を持つ

第13条 顧客の要求に関心を持つ

第14条 顧客の要求に応える努力をする

第15条 不正防止への対応を考える

第16条 レジ担当者同士で常に情報を交換する

第17条 店長、他部門担当者を交えた情報交換の場を持つ

第18条 店舗で経営者、本部マネジャーを交えた情報交換の場を持つ

第19条 本部で経営者、本部マネジャー、店長を交えた情報交換の場を持つ

第20条 現場からの提案は平等に扱い、得られた成果は全員の成果とする



◆第11条 顧客に関心を持つ

 顧客サービスを向上させるには、顧客が求めているサービスは何かということに気づかなければならない。第8条で改善点は顧客の態度、行動の中に発見できるとし、その発見は顧客に関心を持つことで可能になると説明したが、顧客サービスの向上でも基本は同じである。顧客が要求するサービスの内容は顧客の身勝手なほど変わることがある。顧客の要求はある時点で止まっていることなどあり得ない。
顧客の要求が見えてくると、1つ1つの要求に、その場その場で対応していたのでは「顧客の要求に振り回されているだけ」ということにもなりかねない。各論から入るのではなく、各論から総論を導き出し、そこから各論に落とし込んで具体的な対応をしていくことが大事である。顧客の1つ1つの要求が示しているものが何を意味しているのかを考え、そこから具体的な対応策をひねり出していくことである。よく考えるためにはスキルの向上が不可欠である。
 顧客に関心を持つことは従業員のスキルを上げることにもなる。スキルが低いと、より高い効果が期待できる顧客への関心につながらない。顧客を知るためにはシステム面では顧客情報管理システムの有用性が言われるが、データ分析がすべてではない。全員の顧客をデータ的に知らなくても、1人の顧客情報を知ることで10人の顧客の傾向性を知ることもできる。顧客への関心の持ち方は感性の問題とも言える。感性は持って生まれた資質だけで決まるものではない。学習して磨かれることの方が多い。
 仮説検証では、検証に使われるデータは客観的に状況を描き出しているだけで、データそのものには,通常でない状態が発見されるなどという以外には、あまり価値は見出せない。仮説があることで、データは価値を生み出す。データを見る意味の明確化が重要である。データの価値は仮説の質によって決まる。顧客に関心を持つことは仮説力を強くすることである。その強くなった仮説力はデータの価値を高め、高められた検証結果はさらに仮説力を強くしていく。顧客の要求が常に変化しているので、顧客への関心も常に変化させられる。仮に、変化していないことがあっても、それ以降、変化が止まるわけではない。一時の変化のない状態は「変化の1つの表れ方」ととらえることができる。変化はスキルを向上させる。顧客への関心を繰り返し行っていく中で、スキルは自然と上がっていく。小売業では毎日、多くの顧客と接している。顧客に関心を持つ習慣を付けることで、日常的にスキルを磨くチャンスがある。そういう取り組みをする店舗風土、企業風土を作ることが大切になる。そして、顧客に関心を持つ従業員が増えることで、顧客サービスの向上も実現されていく。普段の顧客サービスが悪い店舗がセルフレジを入れると、「手抜きをしたのか」、「人が集まらないのか」とマイナスイメージにとらえられてしまうかもしれないが、普段の顧客サービスが良いと、例え人が集まらないとしても、「顧客のために良いサービスを始めてくれた」とプラスイメージになり得る。セルフレジの導入は、顧客に対するサービスの向上とともに、店舗における顧客サービス風土を作り上げるきっかけにもなる。


◆第12条 顧客の行動に関心を持つ

 セルフレジは顧客自身がレジ操作をするのが基本である。顧客は購入商品数が少なく早くレジを通過したいということだけでなく、プライバシーを守りたい、従業員とのやり取りをしたくないと、様々な理由でセルフレジを選んでいる。プライバシーの保護では後に並んでいる顧客に買った商品を見られたくないだけでなく、レジ係にも見られたくないということがある。しかし、操作がわからずサポートを求めることがある。そうしたサインは態度や行動に先に表れる。アテンダントがサポートをする目的の1つに、サポートをしてセルフレジを利用する顧客の流れをスムーズにするということがある。サポートが必要な時には呼び出しボタンを操作すると呼び出し用のランプが点いてアテンダントがすぐに来てくれるようになっているが、顧客が求める前にサポートに入ると、顧客の流れをよりスムーズにするとともに、顧客には喜ばれ顧客サービスの向上につながる。
 それでも、レジ係と接したくない顧客もいる。プライバシーを守りたいと思っている時はなおさらである。明らかに操作で困っていることが判っても、呼び出しランプが点かないのにサポートで声かけをして近づくと、逆に嫌な思いをさせて、その顧客にとってはサービスの低下になることもある。
 また、アテンダントの重要な役目に不正の防止がある。セルフレジには不正防止の仕組みが組み込まれているが、不正犯を捕まえるには不正の瞬間を押さえる必要がある。怪しい行動があれば、声かけをすることで不正を未然に防ぐことができるが、不正操作の前に声かけをすると、プライバシー保護を理由に、逆にクレームになってしまうこともある。不正の常習者でなければ、不正を発見しても、操作ミスと言われれば、認めざるを得ない。声かけは非常に大切だが非常に難しい一面を持つ。声かけは顧客サービスにとってはプラスにもマイナスにも働く諸刃の剣である。
 声かけでは、声をかけるタイミング、顧客への近づき方、声のかけ方、言葉遣い、クレームになった時の素早い対応の仕方等々、プラスに働かせる要素がたくさんある。顧客に関心を持つとは、顧客の態度や行動、心理にまで関心を持つことである。これは机上の学習だけでなく、現場で経験を積まないとなかなか体得できないものである。1人より2人、2人より3人と、多くなるほど経験のサンプル数が増える。レジ係同士の情報交換、情報共有が大事となる。

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第9回 品質の向上が競争の方程式を変える

2009年10月14日 23時45分58秒 | 今日の気づき
【2009年10月14日(水)】低価格指向の企業、店舗は好調だが、おしなべて、小売業の業績不振が続き、厳しい経営環境、厳しい消費環境を伝えるニュースが多い。10月14日付の日本経済新聞朝刊3面に「『強い流通』3つの法則」の大見出しが目に入る。久々に『強い』という文字を目にしたように感じる。サブ見出しは「消費不振でも3~8月好決算」、サブ見出し的に、3つの法則を「『ついで買い』誘う  自ら開発、自ら売る  大量に売り切る」と強調している。しかし、下の方には、「スーパー・百貨店低迷 Jフロント営業益54%減」のサブ見出し。スーパー、百貨店の不振は否めない。
 「『ついで買い』を誘う」の例では、ユニクロが低価格だけでなく高機能の商品が集客に貢献し、下着や靴下などの『ついで買い』効果が客単価を落とさずに来店客数を増やしたことを紹介している。飲食店では、中華料理店のハイデイ日高は390円ラーメンの顧客がビールなどを一緒に注文したこともあり客単価が前年同期から0.6%上昇したことを伝えている。
 「自ら開発、自ら売る」は、中間段階を省いてコストを下げ、海外生産などで生産コストを下げるとともに、海外生産では円高の恩恵も受けた「製造小売」の強さを挙げる。代表例として、3~8月期に3回の値下げをしたが、粗利益率が53%だった家具店チェーンのニトリを取り上げている。また、靴専門店のエービーシー・マートの最高益を支えたのは3月に発売した自社企画商品のヒールの高いスニーカーだと紹介している。
 「大量に売り切る」では、余分な在庫を持たない仕組みを構築した企業が高採算を維持したとして、衣料品販売のポイントとしまむらを例に挙げている。
 以上の3点の中で、『ついで買い』効果に注目したい。検証するためのPOSデータ、顧客購買履歴データを見ていないので、予想の域を出ないが、今の低価格商品指向は節約指向と同義である。節約指向の観点からは、低価格商品を買って余った金額で『ついで買い』をし、従来と同じ金額を支出することはあまり考えられない。『ついで買い』イコール『衝動買い』のイメージがあるが、『衝動買い』でなく『必要買い』としての『ついで買い』と考えられるのではないだろうか。A店で買っていたものをB店で『ついで買い』しただけで、B店は客単価を維持できたが、A店はその分、売上を下げ、低価格化が進んでいるので金額ベースの市場は小さくなり、小さくなった市場で競争が激化しているというのが現状だと考えられる。
 また、低価格商品の販売で従来とは異なる顧客層の購買が、一方で起こっているのではないかと思われる。390円ラーメンを注文する顧客がいつもはビールを注文していないのに、収入の好転など個人的な事情が変わらない限り、最近になってビールを注文するようになることは、まずないと考えられる。もし、ラーメンとビールを注文して全体の支出を抑えようとしているのであれば、新しい顧客が来店しているということも考えられる。
 同じ14日の午後7時30分。NHKの「クローズアップ現代」は「コンビニ弁当 値下げ競争の舞台裏」をテーマに、新しい競争局面を迎えているコンビニエンスストア経営の厳しい現状を紹介していた。消費期限が近づいた弁当を値引販売しているセブン-イレブンの店舗を取材。値引弁当を目当てに来店する顧客が増えたが、これらの顧客は『ついで買い』をせず、『ついで買い』が最も多いとされてきた弁当客の客単価が下がっていること、商圏内のスーパーが激安弁当を投入し、スーパーとの競争が激しくなっていることなどを伝えている。値引弁当を目当てに来店する顧客は支出金額を抑えることを目的としている新しい顧客が含まれていると考えられ、これらの顧客は『ついで買い』を呼び込まない顧客層でもある。そして、番組では、「便利さ」より「安さ」が重視されていると解説する。
 しかし、現状は、弁当と飲料などを買う弁当客の立場からすれば、距離が少し離れていても、同じ行動範囲にコンビニエンスストアとスーパーがあり、どちらにも同じ「便利さ」がある。「便利さ」と「安さ」のどちらかを選択しているのではなく、同じ「便利さ」の中で「安さ」を選んでいるのである。「便利さ」を特徴として、価格競争の土俵に上がらずに定価販売で成長してきたコンビニエンスストアの「便利さ」度が小さくなってきていることは間違いない。
 低価格指向商品が競争力を持つ底流にあるのは、やはり、品質の向上である。従来から、様々言われてきた消費に影響を与える要因が、品質の向上という環境下で、影響の及ぼし方に変化が起こっている。過去の成功や失敗に学びながら、先を「読む」力が求められている。未来を示す情報など、世の中には存在しない。過去と現在の情報しかない。過去と現在の情報から、いかに未来を「読む」かである。本格的な「情報活用時代」を迎えたと言えるのではないだろうか。(東)