【2009年11月12日(木)】
◆読んだ新聞
日本経済新聞 11月12日(木) 朝刊 1面/13面
◆記事の見出し
1面:《am/pm ファミリーマートが買収へ》《伊藤忠と共同 ローソンに迫る》《消費不振、再編促す》
13面:《ファミマ、am/pm買収へ》《価格競争へ規模追求》《伊藤忠連合、存在感増す》
◆記事の内容
――1面――
★コンビニエンスストア3位のファミリーマートと同社の筆頭株主の伊藤忠商事が共同で、7位のエーエム・ピーエム・ジャパン(am/pm)を買収する方向で最終調整に入った。am/pmの親会社のレックス・ホールディングスから全株式を買い取る。買収額は100億円前後と見られる。
★買収が実現すれば、店舗数は約8,500店舗(ファミリーマート約7,400店舗、am/pm約1,100店舗)となり、2位のローソン(約9,500店舗)に迫り、首位のセブン-イレブン(約12,300店舗)の追撃体制が整う。最大市場の東京ではセブン-イレブンを抜いて最多店舗数なる。
★買収により競争力が強化でき、am/pmの経営も、物流・仕入の共通化や商品の共同開発を通じた運営ノウハウの移転で改善可能と見ている。伊藤忠商事も新たな商品の供給先を確保できる。
★消費不振でコンビニエンスストアの飽和感が強まるなか、再び業界再編が動き出した。今回の買収が実現すれば、コンビニエンスストア業界では2001年のサークルKサンクスの経営統合以来となる。
――13面――
★ファミリーマートと伊藤忠商事がエーエム・ピーエム・ジャパン(am/pm)の共同買収で最終調整に入った。ファミリーマートが上位2社を追うためにはM&A(合併・買収)が重要度を増している。am/pmの店舗数はファミリーマートの年間店舗純増数の約5年分に当たる。東京に限れば、am/pmの約560店舗を加えると約1,700店舗となり、セブン-イレブンの約1,650店舗を抜きトップに立つ。
★今回の買収は、コンビニエンスストアの定価販売が崩れるなか、規模拡大を急ぎ、価格競争を高めるためである。
★伊藤忠は、サークルKサンクスを傘下に持つユニーと資本提携したこともあり、伊藤忠商事を軸としたコンビニ連合の存在感が増しそうである。伊藤忠商事が関係するコンビニエンスストアのファミリーマート、am/pm、サークルKサンクスの合計店舗数は約14,700店舗となりセブン-イレブンを抜く。少子高齢化や消費不振が進むなか、小売各社は割安なPB商品投入に力を入れ価格競争が激しく、商品開発や共同仕入などで足並みが揃えば同業だけでなくメーカーに対しても大きな圧力となりそうである。
★★なお、ファミリーマートでは11月12日付で次のようなニュースリリースを発表している。発表文は以下の通りである。「本日、一部報道により当社とエーエム・ピーエム・ジャパンに関する報道がなされていますが、これは当社が発表したものではなく、決定した事実はございません。以上」。
●今日の気づき
★わが国のコンビニエンスストアの店舗数は5万店舗で限界に達すると言われてきた。現在の店舗数は約4万5,000店舗と見られている。店舗数は飽和状態に近づき、陣取り競争がさらに激化してきそうである。陣取り競争は一方では同質化競争の表れでもある。同質化競争では価格競争は避けられない。
★規模拡大のメリットは理屈では理解できても、規模拡大が競争力強化のすべてではないように感じてならない。am/pmの全店売上高は2008年12月期で1,955億円である。一方、ファミリーマートは2009年2月期で同1兆3,340億円である。1兆3,340億円の販売力は非常に大きな商品開発力とバイイングパワーである。1兆3,340億円のパワーと1兆5,295億円(買収後の両社合計売上高)のパワーの差がわかりづらい。バイイングパワーと商品開発力の強化より、5万店舗飽和説を「是」とするなら、5万店舗のうち、いかに大きな店舗数シェアを獲得するかがコンビニエンスストア業界の最大のテーマになっているのではないだろうか。
★価格競争はコンビ二エンスストア間もさることながら、スーパーやドラッグストア、ホームセンタなどとの異業態間競争が激しい。コンビニエンスストア業態を起点とした価格戦略より小売業界の価格競争を基点としたコンビニエンスストアの価格戦略が求められているのではないだろうか。弁当は各地の産品を用いた特色のある付加価値の高い商品の開発なども行われているが、価格面ではスーパーの290円弁当や390円弁当との競争に苦戦している。NB商品の値下げなども行われているが、スーパーの売価には及ばない。アメリカのガソリンスタンドを併設していないコンビニエンスストアは24時間営業のスーパーとの競争で低迷したと言われている。価格競争は異業態間を横串で刺す競争である。紙面ではそこまで内容を広げられず触れていないのだろうが、コンビニエンスストア各社も小売業界の先端を行くトップランナーとして、そういう戦略を練っていることと思われる。コンビニエンスストアが商品開発力とバイイングパワーを背景に低価格競争に参入してくるとすれば、高価格・高付加価値商品の動向と合わせて、日常品消費市場は新たな競争局面を迎えることになる。
(東)