こんばんは。
最近カーオーディオ用スピーカーについてのご質問を結構いただくことがあり、今日はちょっとそれについて書いてみたいと思います。ところで、私もソニー在職中の最後の2年ほどカーオーディオをやっておりましたが、皆さんソニーのサブウーファーが北米市場でトップシェアだっていうこと知ってました?多分ご存知じゃないでしょうね。私も知りませんでした。(^^;
何と30cmや38cmクラスのユニットが年間に万単位で売れていたのです!すごい!
当時ホームオーディオでは小口径ユニットが中心で、私がいたプロ用でも38cmクラスはあまり売れてなかったので、私もそれを知った時はほんとぶったまげました。確かに、コスト、パワースペック、独自性(ソニーは5角形のユニットと赤色の振動板を採用していました)と3拍子揃っていましたから、売れて当然ということかも知れません。
でも私もそうですが、ほとんどの人がやはり国内市場での商品を見てビジネス状況をイメージされるので、ソニーのカーオーディオの場合回りの人の印象はちょっと厳しいですよね。まぁソニーのカーオーディオがどうして国内であんなにダメなのかは話すと長くなるのでここではちょっと置いときますが、事業部としては当時のカーオーディオ(特にスピーカーとアンプ)はほんと勢いがありました。現在もその勢いは続いているようです。
さてちょっと前置きが長くなりましたが、カーオーディオ用スピーカーで特筆されることはだいたい下記の3つではないかと思います。
1.厳しい動作環境
ご存知のように車内の環境(特に温度)は想像を絶するものがあり、炎天下では100℃近くになることもあります。そのためカー用としてのスピーカーには100℃での動作保証が要求されます。ホーム用のスピーカーでは耐熱温度は80度が一般的なのでその差は20℃ですが、このたかが20℃が結構厳しいのです。
例えば、トゥイーターの振動板としてホーム用でよく使われるマイラーフィルムなどは100℃では持たないので、音が悪いのを承知で耐熱のイミド系フィルムを使ったりします。
じゃあPARC Audioのユニットはどうなの? 皆さんが知りたいのはこれですよね。 残念ながら、答えは「自己責任でお使いください」、ということになります。ウッドコーンは別として、アルミやケブラー等は非常に耐熱温度の高いものなので実際は問題ないはずなのですが、商品化においてカー用としての信頼性の確認テストをしていないので、メーカーとしてのちゃんとした保証は出来ないということなのです。ごめんなさい。
パルプコーンや、PPコーンも同様で、実際に多くのカー用で採用されている実績のあるものなので、一般論で言えば実用上は問題ないはずですが・・・・。
2.厳しい寸法規制
カースピーカーで一番需要が多いのがドアマウント用ですが、このドアマウント用には奥行き寸法に非常に厳しい規制があります。また取り付けに汎用性を持たせるために、ドアマウント用にはいろいろな車種に付けられるように各種取り付け穴が付いています。結果としてフレームは写真のように穴だらけになったりします。
ここで取り付け穴はいいとして、奥行き寸法規制(早い話が薄いスピーカー)というのは音質的にものすごく厳しいです。ではどうして奥行き寸法が減ると音が悪くなるかと言うと、それは振動板(コーン)の高さが結果として低くなり形状的に弱い浅いコーンを使うことになるからです。コーンが浅くなると、それは振動板の剛性劣化に直結し、それを補うために必要以上に重いコーンを使うか、またはクセがでることを我慢してコーンボディの剛性補強を行ったりします。
実際私がカー用Gpに異動して初めてラインアップを聴いた時には、びっくりするぐらい音の悪いモデルもありました。(^^;
「おいおい、よくこんな音で商品出してるな。」なんて失礼なことは言いませんでしたが、ホーム用とは明らかに文化が違うって感じでした。で、他社で売れてるモデルを聴いてみると、これがまたバラツキが多いこと。同じメーカーでもモデルによって全くレベルが違う感じで、当たり外れがはっきりしている感じでした。多分設計に要求される条件が厳しいだけに、設計者のレベル差がモロ出てるって感じですね。でも中にはちゃんとした音を出しているモデルもあり、やはり最後は設計者の意識の違いかなぁというのが私なりの結論でした。
それと驚いたのは、海外製の評価の高いモデルはカー用なのに寸法規制なんか無視して結構深いフレームを使っていたこと。営業から言われて海外モデルとの比較試聴をしましたが、聴く以前に勝負あったという感じです。なんでお前らこんなハンディーキャップを許して、こんな浅いクソフレーム使って設計してんの?って思いました。もちろん、その後私が担当したモデルは競合する他社モデルの中で一番深いフレームに合わせたことは言うまでもありません。
3.外観(デザイン)優先
ホームでもこの傾向はありますが、カー用は特にこの傾向が強いと感じます。ご存知のように、スピーカーは外観(形状)と性能(特性)が直結するものなので、このデザイン重視というのは結構設計としてはつらいものがあります。
例えば、センターキャップの大きさなんかはかなり大きくしないと見た目に迫力が出ないから大きくしろなんていう不純な圧力がかかったりします。私はよくデザインと喧嘩するほうでしたが、カー用ではトップとも結構議論になりましたね。スピーカーって、やっぱり音を出してなんぼだろ~と。でもいくら音が良くても売れなきゃ商品じゃないぞ~。これも正論です。ほんとこの件は永遠のテーマだと思います。(まぁ今のPARC Audioは性能最優先で設計してますが)
さて、今日はちょっとまとまりのない話になったような気もしますが、なんとなくカー用スピーカーの置かれているちょっと特殊な環境を少しはお分かりいただけたでしょうか?
次回は、続編としてカー用スピーカーの音造りや、ヨーロッパでの導入体験なんかを書いてみたいと思います。では今日はこの辺で。
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>やるとしたら、ParcAudioのツイーターとつなげてウーハーとして使うのも面白そうだと思いました。
余裕ができれば、パルプコーンで本格的なウーファーをやりたいのですが、ウーファーの市場は本当に小さいので悩ましいところです。
>F171Pを聴くとコアキシャルの期待がすごいですね。
あまりプレッシャーかけないでください。(^^;
>ダブルバスレフとかの推奨箱も気が向いたらよろしくお願いします
う~ん、これはちょっと・・・・。一応考えときますね。
F171Pの高域は今まで作成した(フルレンジは5台ぐらいですが)中で最高ですね。
やるとしたら、ParcAudioのツイーターとつなげてウーハーとして使うのも面白そうだと思いました。
>推奨箱は、今回はちゃんと商品発売と同時にupしたいと思います。大変遅れていたF171P等の推奨箱も同時にup予定です。
推奨箱の設計お疲れ様です。
個人的にはドラムの50Hzあたりの音がドン!って気持ちよく聞こえてくれたら最高です。
しかし、F171Pを聴くとコアキシャルの期待がすごいですね。
ところで、話は変わりますが、トールボーイタイプも好きだったりしますので、そのうちダブルバスレフとかの推奨箱も気が向いたらよろしくお願いします^^なんちゃって
F131Pはユーザーコーナー情報が非常に少ないので、是非レポートよろしくお願いいたします。楽しみにしていますね。
パルプコーンの高域に関しては、フルレンジでの全体のバランスを考えると現状がベストではと思っていますが、コアキシャルの音をきいてしまうと高域についてはやはり大口径フルレンジの限界を少し感じてしまうのが正直なところです。もちろん、フルレンジでもう少し高域を出すことも可能ですが、そうするとちょっとやかましい方向になってしまうのです。
推奨箱は、今回はちゃんと商品発売と同時にupしたいと思います。大変遅れていたF171P等の推奨箱も同時にup予定です。
クルマの方は昨日・今日とカーナビ・CDヘッドユニットの取り付けで四苦八苦しておりました。一応取り付け終わり元通りになったはずなのですがネジが何本も残ってるのが不可解です。(爆)
あー、どんな音になるか楽しみですねー
パルプの中高域はよかったんですが、若干紙の甘さを感じました。後、やはり専門のツイーターに比べると広域は若干負けちゃいますね。
PPの音も好きだったんですが、ユニット単体で比べるとパルプの広域の伸びでパルプの印象がよかったんですよね。
もちろん、値段を考えると十分すぎるほどいい音ですが、
ついつい愛用していた30万のスピーカーと比較するとそういったところがきになっちゃいます。
こっちは4万でできちゃうから勝負することがおかしいのですが^^;というか箱さえきっちり作ればパルプは勝負できそうでした
。
PPコアキシャルではいいとこ取りできそうで、楽しみなんですよねー
とりあえず、ダクトからこれだ!という低域を出したいです。
F社は推奨箱はすばらしかったです。バスレフしかり、BHしかり、ダブルバスレフしかり。
PPコアキシャルはぜひとも推奨箱を提示してもらいたいです。
御社の13cmPPの推奨箱はすばらしかったです。記載どおりのあまり低域をよくばらず若干上あがりの低域は警戒で実に心地よかったです。
あー、箱作りが一番難しいなー><ネットワークは半田でやり直せるー
カー用の低価格マルチユニットは、どちらかと言えば質より量的なものが多いですね。3wayなんかだと、トゥイーターはほとんどが圧電タイプで、一応音は出ますって感じですね。まぁこれでも一応効果はあるのですが・・・。
コアキシャルのPPはF131PPと同系統のPPを使っているので、音色はやはり似ています。ただ口径が大分違うので、中低域の厚みなんかは大分違うように感じます。
最近、大口径ウーハーはあきらめて、onkyoのサブウーハーSL-A250をかって、小口径のウーハーやフルレンジにつなげようかなーなんて考えていますー
お褒めの言葉をいただき、ありがとうございます。まぁウッドコーンはフェイズプラグにかなりお金をかけているので少しはいいかなぁと思ってますが、コアキシャルは販売店様からもうちょっと高級感が出せないかなぁなんて言われちゃいました。(^^;
でもコアキシャルは最終的にコストパフォーマンスを優先させて、最初のモデルは外観用の飾りパーツに予算をかけるのはやめました。音で勝負!というところでしょうか。(ちょっと言いすぎかなぁ)
コアキシャルお待たせして申し訳ありません。現在最終調整を行っており、何とかフェスタでは出品できるかと思います。ただ最近の大不況のあおりで、今年の中国の旧正月休みは例年より大幅に長くなったこともあり、正式発売はやはり春になりそうです。
ヤマタミ音響技研さんの件は、技術自体は以前から聞いていましたが、正式発表されたことは知りませんでした。写真にはソニー時代一緒に仕事をしたこともあるMさんも写っていますね。ここの幅社長とはソニー時代にソニーオリジナルのカーボンコーンで一緒に仕事をさせていただきました。
現時点でこのコーン紙を使う予定はありませんが、将来的には可能性はあるかも知れませんね。
コーティングはもちろん効果はあると思います。またコーン紙にはサイズ処理という防湿処理がされているのが一般的で、ホームでの使用では全く問題ないようになっています。
ただドアマウントの場合、最悪雨水がユニットにかかってしまうようなこともあるので、なかなか完全に動作保証するのは厳しいのが実状です。
ソニーカーオーディオの国内市場撤退に関しては一言ではなかなか言えない内容なのでちょっとブログでお話しするのは厳しいかと思います。
大口径ユニットは、私としては是非やりたいのですが、国内のクラフト市場は口径が大きくなるにしたがって急激に小さくなっているのが実状で、商品企画としてはかなり厳しいものがあります。
実際38cmクラスではT社のものでもあまり売れてないようですし・・・。
1月末の朝日新聞にヤマタミ音響技研さんの紙すき技術の話が出ていました。
同じソニー繋がりで御社でも使用ユニットを売り出す予定は如何でしょうか?
よろしくお願いいたします。
流石に時代が変わったなと寂しくなった記憶があります。初めてCDを車載したり、10年ほど前のXESシリーズには1.8Ωのドア用フルレンジがあったりして面白い事するなと思ってはいましたが、何故国内ではうまく行かなくなったのでしょうか?機会があれば何時かお聞かせ頂ければと存じます。あとPARCでも大口径ユニットは何時か投入したりする予定などありますでしょうか?