デミング博士のニューエコノミクスって

デミング博士の”ニューエコノミクス”に書かれた内容と,それに関連する内容を,「マターリ」と理解するページ

損失関数と工程フィードバック3

2005-12-25 13:29:03 | システムについて
4.システムの安定性とか
  • システムの状態(出力)は,無限大に発散するか,ある値に落ち着くかします.
  • システムの状態が,ある値に落ち着くことを「システムは安定している」といいます.通常は,安定している時にシステムの目標が達成されています.ちなみに,安定の判別は,ラウス・フルビッツの判定法やら,ナイキストの判定法やらがあります.
  • フィードバックゲインを大きくしすぎると,システム構成によりますが,システムが発散する事が多いのです.
  • すべての固有値(=特性方程式:伝達関数の分母の根)のs平面上の実数軸上で0未満であれば,システムは漸近安定です.
  • すべての状態(状態変数)をフィードバックでき,制御対象への入力が制御対象のすべてのモード(応答)に影響する事が出来れば,システムを漸近安定にもっていけます.
  • 伝達関数に極と零点の消去が起きた場合は,希望通りに制御できないか,出力に現れないモード(応答)が制御対象に存在してしまう.(可制御とか可観測とかです)
  • システムの種類により,色々な定常偏差(目標値とのズレ)を持っています.


 可観測で無い時とと可制御で無い時は,下記のブロック線図のような形の時に起きます.


Fig. 可制御でないシステムのブロック線図


Fig. 可観測で無いシステムのブロック線図

5.システム理論からいえること

 システム理論は,何も機械だけの話ではありません.組織の動きもシステムですので,上記の事から,ある程度の事は言えると思います.

  • 組織も発散したり,ある大きさに落ち着いたりすると思います.
  • 組織が安定している時は,通常目標を達成していると思います.もし,組織が安定していて目標が達成できていなければ,たぶん,目標が無茶か十分に検討されていないのでしょう.もちろん,無茶な目標(ゲイン高すぎとか)を強引に達成させようとすると,組織を発散させます.(上下に大きく波打つかもしれません)
  • 固有値とは基本的に入力と出力に関係する値なので,組織で考えるとコミュニケーションや,リソースに関係する事でしょう.たぶん,組織の浪費率(効率の逆)のことになりと思います.組織が保持するリソースやコミュニケーションは,実際に使用する物より多めにしておかないと,浪費率の改善に振り向けるリソースやコミュニケーションが不足すると思います.
  • 材料や機械・プロセス・資金繰りだけではなく,顧客・従業員・株主・組織の周りの人たち等のステークホルダの状態も重要な要素です.これらをすべて考慮し,いい影響を与えないと,組織の安定や目標達成は,長期的に不可能です.つまり,顧客・従業員・株主・組織の周りの人たち等のステークホルダに恐怖を与えたり,金で釣ったりして,これらの人々の内発的な動きを止めてしまえば,組織の目的達成を阻害したり(可制御で無くなる),それぞれの人々の相互のコミュニケーションを破壊したり(可観測で無くなる)すると思います.


6.参考文献
  • 吉田勝俊, 短期集中:振動論と制御理論, 2003, ISBN:4-535-78369-1
  • 木村英紀, 制御工学の考え方, 2002, ISBN:4-06-257396-2
  • 山口静馬 他, 制御工学の基礎, 1996, ISBN:4-627-91490-3
  • 高木章二, ディジタル制御入門, 1986, ISBN:4-274-08572-4
  • 大住晃, 確率システム入門, 2002, ISBN:4-254-20944-4
  • 宮川雅巳, 品質を獲得する技術 タグチメソッドがもたらしたもの, 2000, ISBN:4-8171-0399-6



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