デミング博士のニューエコノミクスって

デミング博士の”ニューエコノミクス”に書かれた内容と,それに関連する内容を,「マターリ」と理解するページ

マネージメントのための14ポイントの要約 その1

2005-10-15 17:00:00 | 品質管理
 さあ,いよいよデミング博士の14ポイントをさらします.

 その前に,この章 Out of the crisis Ch.2 -Principles for Transformation of Western Management- にこのデミングの14ポイントが書かれているわけですが,14ポイントが書かれている前節-Aim and Preamble-に書かれている内容から,14ポイントを理解するための要素を引用してみます.

 ちなみにですが,この文書の人物の敬称は,すべて「さん」付けで統一しています.
 もちろん,デミングさん以下,博士号をお持ちの人がほとんどです.

【】内訳注

目的:


 やはり目的が分からないと,なぜ書かれたのか分かりづらいと思いますので,目的を訳してみました.

<引用>

 この章の目的:西洋のマネジメントスタイルは,西洋の産業の低下をとめ,向上させるために,変えなければならない.
  【訳注:原文は,Western Style management must change to --- と must を使っていますから,ISO-9000的に解釈すると,最上級の義務になっています.】
 この章と次の章の目的は,起こさねばならない変革【Transformation】の要素を説明することである.
 危機から目覚め,実行によりフォローし,マネージメントの仕事をしなければならない.
  【訳注:上記3行,must 三連発です.かなり凄いです.】
 この章および次の章はまた,社内マネージメントのパフォーマンスを誰が測定するのかの基準を与える.
 社内の人間の誰でも,この質問の答えを規準にしなければならない."How is our management doing?"
 【どうやって管理をするの?】
 組合のリーダも同じ質問に答え,同じ規準で判断しなければならない.
 この変革は,人間だけが達成できるものである.ハードウェア(コンピュータ,道具,オートメーション,新しい工作機械)ではない.会社は,品質への道を買うことはできない.

</引用>

 デミングさんがこの本 -Out of the crisis- を書いたのは80年代前半(出版は,1986年)だと推測できますから,このころのアメリカの産業の状況が,あまり芳しくない状況で会った事が反映されているのではないでしょうか.
 そういえば,昔(80年代),日本製のラジカセや車!を,アメリカの労働組合の人がハンマーで叩き壊していたパフォーマンスを,テレビのニュースで見た事があります.

項目ごとの引用:


<引用>

Best efforts not sufficient.
By everyone doing his best. (Wrong)

 最大の努力では十分でない.
 個々が最大の努力をすること.(間違い)
  -以下省略-

 Need for consistency of effort.
 努力の整合性の必要性

 下記を仮定してみよう.
 (1)個々が何をしなければならないか理解している.
 (2)個々がベストを尽くしている.

 結果:知識や努力の消滅・最適より程遠い結果.
 これらは,継続的な知識と努力を引き出す,良いリーダやチームワークの代わりにならない.

 Theory of management now exist.
今は,マネージメントの論理が存在する.

 今は,品質,生産性,競争優位の改善のための理論がある.
 誰も,今,マネジメントを教えるものが無いと強く訴えることは二度と出来ない.
 ビジネススクールに通う学生は,開講されているカリキュラムの判断のための蓄積情報を持っている.
 学校は,現在の問題に合うカリキュラムを与える試みをしていますか?それとも旧式化していますか?
 旧式化するのに計画は必要ない:勝手にそうなる.
 経験だけ,論理無しであると,マネージメントは品質向上や,競争優位のために,何をしたらいいのか,どうやればいいのか,何も分からない.

  -中略-

 達成するための方法が無い希望は,依然として希望でしかない.(Lloyd S.Nelson, next section)
 この章の14ポイント,および次章で説明する死にいたる病や障害の除去は,(それらの)方法を与えるであろう.

  -以下略-

Guidance from questions and pronouncements of Lloyd S. Nelson.(Dr. Nelsonis Director of Statical Methods for the Nashua Corporation.)
ネルソン博士の質問と意見からのガイダンス.

  1. すべての側面(企画,調達,製造,調査,セールス,人事,会計,法律)におけるマネージメントの中心問題は,バラツキの意味をよく理解し,そのバラツキに含まれている情報を取り出す事である.
  2. もし,あなたが改善のための合理的な計画を持たないで,(例えば)来年5%等の生産性や品質やその他の事柄を改善できるのならば,なぜ昨年にやらないのか?
  3. 各組織でマネージメントに必要な最重要な数値は,解らないし,解るものでもない.
  4. 統計的管理状態にある時,不良が現れた時に,処置を始める事は,効果的でないばかりでなく,更なるトラブルの原因になる.
    プロセスの改善は,ばらつきの低減または,レベルの変更または,その両方が必要になる.

    -中略-

 Short-term profits are no index of ability.
 短期的な利益は能力の指標にはならない.

 短期的な利益は,マネージメントの能力の指標としては信頼できない.

 -中略-

 紙の上の利益はパンを作らない:品質と生産性の改善が作る.それらは,何処にでもいるすべての人々に対し,よりよい生活する上の素材【を与えることに】貢献する.

 -後略-

 Support of top management is not sufficient.
 トップマネージメントのサポートでは不十分.

 品質及び生産性に,トップマネージメントが人生をかけてコミットしただけでは,不十分である.
 彼らは何にコミットしたか----何をしなければならないのか知る必要がある.この義務は,代理に任せることは出来ない.
 サポートでは不十分.行動が求められる.

 -後略-

 Wrong way
 間違った方向

 品質と生産性を向上させるため,(床に)ボルトを打ち込み,新しい道具や工作機械を備え付けるという一般的な仮定がある.
 新しい本は,「仕事をトップスピードでやらせる! ための部下への動機付け」方法を説明している.鞭を入れろ,そうすれば皆はもっと早く走る.---それがすべてだ.
 アメリカの議員団は,品質と生産性に特に重要な項目に関するコンテストを開き,数社に手紙を送った.
 それらの回答者の判断は,下記の通り.
  • 工作機械
  • オートメーションとロボット
  • もっと良い情報
  • プロフィット・シェアリングまたは,他のインセンティブ
  • トレーニング
  • 労働強化
  • QCサークル
  • ワープロ
  • サゼスチョン・プログラム
  • ゼロ・デファクト(ZD)
  • 目標管理制度(MBO)


 真実は,小説より奇なり.この議員団から,何かましなものが出るとの期待が持てない.
 ワープロが,アイディアを創造する.もしくは,関係代名詞と性別,先行詞と数の結びつきを自動生成する.という事を,今まで聞いたことが無い.【訳注:日本語でも,まだ誤植を自動的に修正してくれるような機能はありませんし.】
 この新しい膜の目的は,工員たちをおびえさせ,正気を追い出し,もし品質不足【Poor Quality】な品物【やサービス】が購入者の手に渡った時に,工員たちに何が起きるかをボヤかすことである.
 この点は,すでに1章にて明確にしている.工員たちは,何時でも何かが起きるかを知っているが,しかし,多くの場所では希望が無い.システムから来る力が,彼らの仕事を品質不足【Poor Quality】へと転じさせる.
【訳注:Poor Qualityの良い日本語訳はないと思います.この文書では,「品質不足」と訳しますが,これは不良や不適合だけではなく,もしその製品やサービスがスペックに適合していても,顧客が満足しない場合も品質不足になると思います.】


</引用>

 上記のまとめ:

 上記の引用のまとめをここでしてみたいと思います.

  1. 個々の努力よりは,全体のつながり(部分最適よりは全体最適).<システム・心理>
    • 個々の努力を評価する事による,働く人々のおびえの増幅及び,個々の努力の増幅(部分最適の増幅)での,協力や関係性の破壊.
    • 必要なのはトップマネージメントのサポートではなく,トップマネージメントの実際の参加・行動


  2. バラツキの理解.<統計>
    • マネージメントの中心問題は,バラツキの意味をよく理解し,それに含まれている情報を取り出す事である.
    • 短期的な利益は能力の指標にはならない.(短期では,バラツキの影響が強すぎる)


  3. 理論の必要性と,その理論の継続的改善の必要性.(継続的学習)<論理>
    • 達成するための方法が無い希望は,依然として希望でしかない.


  4. 役に立ちそうにも無い事柄を強調する事による,本当に重要な項目への注視の減少.(重点への集中)<システム・心理>
    • 道具や,機械等の導入だけでは,問題解決ははかれない.


 これらの項目が,14ポイントに含まれていると思います.

 その2へ続く


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