テロリストのパラソル

2007年06月19日 18時55分19秒 | 読んだ本
読みたいと思いながら、読んでなかった。
作者の藤原伊織が、食道ガンで死んだと知った。本屋には「追悼」の文字と共に、作品が平積みだった。

藤原伊織。
1948年生まれ。東大卒業後、電通に就職。。。
そして、この作品で直木賞と芥川賞をダブル受賞し、当時話題となった。

ほかの作品は知らない。でも、この作品は読みたかった。

東大闘争を共に戦った男ふたりと女ひとり。
時が経ち、それぞれの上に時は流れ、それぞれが異なった道を歩き
そして事件が起き、一人の男は巻き込まれ、一人の女は死んでしまう。
要するに、そういう話。で、巻き込まれた男が事件の真相を追う話。

ミステリーとして、サスペンスとして、とても面白い。
ひきこまれて読む。

だけど、最後に違和が残る。
真犯人の時代のとらえ方と、その後の道に、違和が残る。
でも実は、妙に納得してたりもする。

結局、あの時代とは「そういうもの」だったのかもしれない。
「そういうもの」にできなかった奴らがいかに抗おうと、単に青春の一時期として、だけど、それで済ますにはあまりに痛い何かとして

これがあの闘争を闘った僕らの世代の宿命なんだ

という男に対して、もう一人の男は、

世代で生きて来たんじゃに。個人で生きて来たんだ

と言う。
そう。
闘争を闘った世代の宿命なんぞと己の行動を弁護することは醜く、無理がある。
しかし、個人で生きてきたと言いきるには、その「時代」は重くのしかかってはいないか?
未だに、どこかで「世代」を引きずってはしないか?

結局、あの「世代」は、あの「世代」で完結する。そして、あたしは、そのあとに来た「世代」


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