幻夜。。。白夜行から遠く離れて 

2007年04月24日 19時20分42秒 | 読んだ本
かの名作「白夜行」の続編ともいわれ、もう一つの「白夜行」とも言われているらしい、この文庫本。
相変わらず、分厚い。。。。。。
分厚さじゃ、白夜行に引けを取らない。

新海美冬が、はたして「誰」であるのか。それは。。。かもしれないし、。。。ではないのかもしれない。
ただ、いずれにせよ、この

アーモンド型の目をした上昇志向の塊の超美人

が、とんでもない魅力と魔力を持つことだけは確かだ。
決してお知り合いにはなりたくない女でもあるが。。。

大阪の薄暗い下町から始まり、闇の中から文字通り這い上がってきた
まるで双生児のように完璧なつながりで生きた「白夜行」の雪穂と亮司とは異なり
「幻夜」の美冬と雅也は、文字通り太陽と月のような関係として描かれる。
月は太陽が輝くときには隠れざるを得ない。。。
しかし、それが輝くときも、その輝きは己の放つものではない
太陽によって「生かされている」、それが月

外面的な美しさが、何にも増して重要度を増してきている気がする
そんな時代の中で、「美のブラックボックス」の完成形を目指し
いわゆる「勝ち組」の頂点へと昇り詰めようとする美冬の姿勢は
どうしようもなく「今」を感じさせる。
そして、それは「白夜行」の胸かきむしられるほどの愛の切なさではなく
生きることへの焦げつくほどの執念と憧憬ではなく
もっと、なにかこう、直截的な、動物的な、そして、だからこそ防衛的な。。。卑小さを感じさせる。

それでも、この分厚い本にグイグイとひきつけられるのは東野圭吾のストーリーテリングのうまさと共に
美冬と雅也という一対の男女の対照的な生きざまの最後を見届けたいという想い
阪神淡路大震災という未曾有の悲劇を己の人生の再構築のために利用する、美冬という女の空恐ろしさを見届けたいという欲望

ラストのあっけなさと終わり方には、かなり唖然として

いいのか??これで???

と思ったのは事実なんだが
ひょっとすると日本の推理小説界ナンバーワン悪女として、
文字通り永遠の若さと美貌を誇り続け、悪徳の栄えを謳歌し続けそうなこの「新海美冬」
この女の末路を更に見届けたい気がする。

すべての男や女を足蹴にし、踏みつけ、魂を殺して頂点で笑うのか
数々の悪行の果てに自らもその命を誰かの手に委ね、惨めに死ぬのか

日本のためには後者を望むが、美冬としては前者を望む。
東野さん、次って書くのかなぁ???
その時、雪穂ニアイコール美冬は「誰」になってるんだろうか