琵 琶 湖 大 橋
この大きな鳰の海に架け橋があったなら、
近江路を行き来する昔の旅人は誰しもそう思ったに違いない。
しかし、それは叶うことのない夢でしかなかった。
その夢を現実のものとしたのが琵琶湖大橋の完成であった。
開通したのは日本が本格的な高度成長期に差しかかりつつあった昭和39年9
月のことである。
大津市の堅田と対岸の守山市とを結ぶ1350メートルの鋼鉄製のアーチである。
琵琶湖の東岸と西岸の行き来の所用時間がこれで一挙に短縮された。
かつて旅人は都から若狭路で八瀬、大原を抜け、竜華越えで堅田に至り、
ここから船で対岸の守山宿へと渡った。
今では日々数万台の車がこの橋をあっという間に駆け抜ける。
南湖と北湖を行き来する船の通行を妨げないためアーチの高さは湖面から約
26メートルとかなり高く造られている。
完成当時、橋の下を行き来する最大の船は観光船の玻璃丸であった。
今ではその下をミシガンやビアンカといった大型観光船が行き来する。
欄干に立つと広々と北湖が見わたされ、その左手には比良の山並みが右手に
は遠くに沖島と伊吹山が望める。
古代人の夢の架け橋をうつつ世の姿として見せるかのようにその曲線は
なだらかで美しい。
日が歩むかの弓形(ゆみなり)の蒼空の
青ひとすぢのみち高きかな
(若山牧水)
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